2007年9月1日土曜日

物納改正ポイント

●物納改正のポイント
○物納不適格財産の明確化
 非上場株や市街化調整区域内の農地、山林も条件により可能になりました。
○物納手続きの迅速化
・物納申請から原則3カ月以内に許可または却下が決定されます。反対に税務当局は3カ月以内に結論を出さなければなりません。必要書類、条件性の可能性等に不備があった場合には却下される可能性が高まったと言えます。
・物納手続きに必要な書類を原則申請時に提出しなければなりません。間に合わない場合は3カ月ごとの延長届けにより、最長1年まで延長が可能です。例えば、隣接地主の相続等で境界確認等の目処がたたない場合等は却下されてしまいます。
○延納中納付困難となった場合は物納申請が可能になりました。
・物納が認められるのは、物納は申請時の評価額となります。延納困難な場合とは経済環境の悪化等が考えられるか、相続税額はそのままで、下落した評価での物納となるのです。
○物納申請期間中、利子税の負担が発生します。

適用期日
 これらの改正は、平成18年4月1日以後に相続または遺贈により取得した財産に係る相続税から適用されます。
・平成18年4月1日以前の相続には適用が無く、現在進行中の相続破産を助ける手段は排除されたと言えます。

物納不適格財産、劣後財産が明確となりました。明確にした理由は短期間に物納の許可、却下を決定するために、事務的処理を可能にしたものです。境界が特定できていない財産は物納不適格財産です。しかるに、一年以内に境界の特定ができなければ却下できると言うことです。また、物納劣後財産の明示についても、物納適格財産があれば却下できる事を明言したものだと言えます。スケープボードは税務当局に握られたといえます。

*物納不適格財産の例
○国が完全な所有権を取得できない財産、抵当権付の不動産、所有権の帰属が係争中の財産。
○境界が特定できない財産、借地契約の効力のおよぶ範囲が特定できない財産及び境界線が明確でない土地(ただし、山林は原則として測量不要)、借地権の及ぶ範囲が不明確な貸地。
○通常、他の財産と一体で管理処分される財産で単独で処分することが不適当なもの、共有財産、稼働工場の一部など。
○物納財産に債務が付随することにより負担が国に移転することとなる財産、敷金等の債務を国が負担しなければならなくなる貸地、貸家等(敷金の精算を行えば可能となります)。
○訴訟事件となる蓋然性が高い財産、越境している建物、契約内容が貸主に著しく不利な貸地など。
○法令等により譲渡にあたり特定の手続が求められる財産でその手続が行われないもの、証券取引法上の所要の手続きが取られていない株式、定款に譲渡制限がある株式など。

*物納劣後財産の例
○法令の規定に違反して建築した建物およびその敷地
○接道条件を充足していない土地(無道路地)
○地上権、永小作権その他の用益権の設定されている土地
○市街化調整区域内の土地等
○都市計画法に基づく開発許可が得られない道路条件の土地
○法令・条例の規定により、物納申請地の大部分に建築制限が課される土地
○土地区画整理事業の施行地内にある土地で、仮換地が指定されていないもの
○生産緑地の指定を受けている農地および農業振興地域内の農地
○維持または管理に特殊技能を要する劇場、工場、浴場その他大建築物およびその敷地
○市街化区域外の山林および入会慣習のある土地
○忌み地
○相続人が居住または事業の用に供している家屋および土地
○休眠会社の株式

①物納申請
 物納の許可を申請する場合には、相続税の納期限または納付すべき日までに物納申請書、金銭納付を困難とする理由書、物納財産目録等を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。また、物納申請財産の種類により別途必要畜類を提出する必要があります。例えば、土地の場合、公図、所在図、土地登記簿謄本、地積測量図、境界線に関する確認書等を提出する事となります。これらの提出書類は物納財産を国が収納するために必要な書類として物納財産の種類に応じ登記事項証明書(登記簿謄本)、測量図、境界確認書等一定の書類が定められ、物納申請者はこれらの書類を物納申請時に提出しなければならないのです。提出がなければ却下できると言うことなのです。その意味で、補正期日が指定され、補正がなされなかった場合には物納申請を取り下げたとみなすとしています。

②必要書類の補正等
 提出した物納手続きの必要書類の記載に不備があった場合、または物納手続きに必要な書類の提出がなかった場合には、税務署長はこれらの必要書類の補正または提出を申請者に請求する。この場合に請求後20日以内に物納手続きに必要な書類につき補正または提出がされないと、物納申請は取り下げたものとみなされる。また、期限内に当該措置がされなかった場合には、物納申請を取り下げたとみなされます。

③申請者による書類提出期限の延長届け、物納申請財潅が多数あるなど物納手続きに必要な書類の準備や廃材の撤去等の措置に時間を要する場合には、上記①の場合は物納申請期限から、また上記②の場合は必要書類の補正等の請求があった日から、それぞれ最長で1年間延長することができる。
 ただし、一度に延長申請できる期間は3カ月までとし、期間満了時には1年に達するまで再届出をしなければなりません。1年以内にできなければ取り下げたとみなされるのです。

④条件付許可
 税務署長は、物納を許可する際に必要に応じ後日、汚染地であったことが判明した場合に必要な措置を講ずること、有価証券を売却するために必要な書類を提出すること等条件を付けることができるとしています。
 この条件に違反した場合には、5年以内にかぎり物納の許可を取り消すことができます。

 指定区域に該当してなくても更地を物納する際は、別途「土壌汚染の除去等の措置に要した費用の確認書」の提出が求められる場合があり、土壌汚染が判明し、その土壌汚染の除去等の費用を後日汚染原因者または納税者が負担する可能性があります。埋蔵物について同様の処理がされていることから、物納が終わっても気が気でないといえます。

初審査期間の法定化等
①税務署長は、物納の許可または却下を物納申請期限から3カ月以内に行う事となりました。
 ただし、物納財産が多数となるなど調査等に相当の期間を要すると見込まれる場合には、6カ月以内(横雪など特別な事情は9カ月以内)とすることができます。
②物納手続きに必要な書類の提出期限が申請者の届出により延長された場合の①の審査期間は、その届出の延長期間満了日より起算される。
③物納手続きに必要な書類の補正、提出の請求または廃材の撤去等の措置の請求に要する期間は審査期間に含まれないとされています。
④審査期間内に許可または却下しない場合には、物納を許可したものとみなされるため、審査期間内に一定の結論をだすこととなり、補正期間経過後は却下、取り下げたものとみなす事となるのです。

□却下された者の延納申請
 物納申請した者について、延納による納付が可能であることから、物納申請の全部または一部が却下された場合には20日以内に延納申請を行うことができます。

延納中の物納選択の創設
 相続税を延納中の者が資力状況の変更等により延納が困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り延納税額から納期限の到来した分納税額を控除した残額を限度として、物納を選択することができる制度が創設されました。この場合の物納財産の収納価額は、物納申請時の価額であり、相続申告時の価額ではありません。

③収納措置
 税務署長は1年以内に期限を定めて廃材の撤去その他の物納財産を収納するために必要な措置をなすことを納税者に請求することができます。

物納申請された財産が物納不適格財産に該当する場合、または物納劣後財産に該当する場合で他に物納適格財産があるときは、税務署長は物納申請を却下する。ただし、却下の日から20日以内に一度にかぎり物納の再申請をすることができます。新しい制度では、税務当局により物納財産の指定を受ける事となりかねないのです。

物納申請財産の必要書類は一年以内に提出が必要書類、物納手続きの明確化により物納処理が迅速化されることになるが、その分納税者も物納書頬の準備は早急に手当をしなければ却下となる可能性が高まっています。

物納手続きが明確にされたが、税務当局が期日までに指示を出さない場合は物納を許可したとみなされることから、期限までに必要書類の提出が無い場合には却下される可能性が高まったといえる。不動産の物納条件整備は生前より行わなければ間に合わない、資産家の財産管理において納税リスクが増大したと考えるべきである。生前からの財産管理の手法としての物納条件整備の提案が必要不可欠となるであろう。物納制度改正は新しいビジネスチャンスを生み出したと言える。