2011年1月4日火曜日

借地の研究(010)

調査


1.調査の手順

 相当広い範囲にわたり、時間的な制約の中で行う必要がある。

 従って基本的には、調査の目的、方法を一定の方向と範囲に絞り込み効果的に。

 仮説の設定→物件調査→市場調査→事業構想の策定→企画提案書

2.仮説の概要

 用途の系統

 ①住居系

 ②事務所系

 ③店舗系

 ④余暇・宿泊系

 ⑤その他

 具体的な用途・業種

 ①住居系・・・・・賃貸マンション・アパート、社員寮、学生会館

 ②事務所系・・・・・一般事務所、貸しホール、スタジオ、専門学校

 ③店舗系・・・・・・小型スーパー、コンビニエンスストア、レストラン、飲食店、小売専門店

 ④余暇・宿泊系・・・アスレチッククラブ、カルチャーセンター、ホテル

3.物件調査

 ①物件特性(地積、敷地形状、道路幅員、接道状況、地盤高、日照、間口と奥行、上り車線か下り車線か、隣接地の状況等)

  企画提案書への対象地の概要、建物計画、事業構想、適正洋との判定に関連。

 ②地域特性(交通、周辺利便施設、街並、自然環境、都市計画事業等)

  対象エリアが発展しつつある地域か成熟した地域か、住民の富裕度・購買力等、地域の特徴を大きく把握する上で重要。

 ③法的規制(都市計画、建築規制、条例、指導要綱等)所轄官庁の担当部署での調査。

 ④権利関係(単独所有、共有、底地、借地、借家等)利害関係人からの調査。

 ⑤税金関係(印紙税、消費税、不動産所得税、登録免許税、所得税、法人税、住民税、事業所税、相続税、固定資産税、都市計画税、特別土地保有税等)

 ⑥対象地の価格

3-2.調査の留意点

 設定した仮説の用途に関係する事項。

 敷地条件

  敷地面積は仮説の施設用地として妥当か

  用途地域の制限上、仮説の用途は可能か

  妥当な床面積が確保できるか

 立地条件

  最寄り駅までの距離・所要時間

  都心・ターミナル駅との関係

  前面道路の歩行者通行量・歩行者動線との関係

  車両通行量

  仮説の施設は隣接地イメージと合致しているか

  集客力のある施設はあるか、客層

 環境条件

  競合状況

 その他

  計画地において確認すべき内容→境界石・越境物・歩道・ガードレール・出入りに障害となりうる電柱・ゴミ集積所・バス停留所等。 ライフラインの接続方向など。

  住居系の計画地においては、周辺環境。商店・金融機関・教育施設・医療関係・公園・寺社等の緑地。事務所系の計画地においては、飲食店・金融機関等。

4.市場調査

 ①住居系の調査

  情報誌と業者ヒアリングを中心に情報収集

  住宅関連情報誌の活用

  築年数・設備内容によりバラツキがあるため、数値の修正が必要。

  季節により受給に偏りがある。

  成約賃料の見極め。

  地元業者へのヒアリング

  業者によって物件の種類・地域に偏りがある。


 ②事務所系の調査(賃貸)

  情報誌の活用(HP等)

  新聞情報の整理

  賃貸仲介業者へのヒアリング(情報交換出来る関係の構築)

  地域特性の把握

  都心部・地方都市部では需要の規模が異なる。

 ③需給動向・賃貸条件の調査・分析

  賃貸供給状況

  計画地周辺の賃貸物件の供給状況を分析し企画に反映させる。

  最寄り駅または計画地を中心とした新規供給物件・既存の供給物件の分布状況および概要を調査し、傾向を分析。

  (物件の位置・駅からの距離・規模・竣工時期・グレード・テナント入居状況・付帯設備等住居系の場合は戸数・間取り等も調査する)

  賃貸需要の予測

  需要状況については供給状況と成約率・成約期間・空室率等から読みとれる。

  需要の少ない物件の原因(間取り・グレード・賃料・環境等)を調査。

  テナント系の場合はテナントの移転の事例についての理由を調査。

  適正な賃貸条件

  対象とした市場における同種、同等、同類型あるいは当該不動産と代替え可能な賃貸不動産の「空室率、成約・解約状況、新規賃貸条件、継続賃料」等の動向について市場調査と分析を行い、賃貸借の事例を中心に、当該不動産の適正な賃貸条件を設定する。

 ④分譲市場の調査・分析

  金融機関からの借入に伴う担保としての評価、等価交換の手法を採用する場合の分譲マンションの市場性の検討。

  分譲供給状況

  最寄駅あるいは計画地周辺の中古・新築マンションの供給(成約)事例を参考にし、賃貸供給状況の場合と同様の項目に成約価格(分譲価格)契約率、完売までの経過月数なども調査し、その結果計画地のマンション分譲価格を検討する。

  分譲マンション需要予測

  分譲マンション市場全体の動向と併せて、計画地周辺への需要量、購入者属性(家族構成・所得水準など)、需要の多い物件・少ない物件、それぞれの概要および特色などを調査分析する。


5.検討方向の見きわめ

 相談、調査により事業の方向性を検討する。(前述の目的に適合する事業手段を見きわめる。)

 ①有効利用

 建物を建築(収益物)したり、土地を賃貸して収益増または負担軽減(節税)対策を行う。

 ②売却

 面積的な要件から利用方法が見いだせない場合や、権利者が多く換金して分配するのが適当な場合。

 ③購入・投資

 他の事業収益との関係で、新たに償却資産(建物)を購入。

 ④権利調査

 処分用土地を捻出するために借地権者と底地権者間の調査。

 *借地権の更新の規定を理解する。

 *借地権の売却の場合の規定を理解する。

 *更新料、各種承諾料および立退料の違いを理解する。

 *借家の更新の規定を理解する。

 *確定期限付建物賃貸借の規定を理解する。

(関係資格士と相談し法的に解決)

6.その他

  周辺の状況が将来変化し、より有利な条件となることが明らかな場合や、大きなリスクが生じると判断される場合、また関係者の意思統一が出来ない場合はウェイティングとなる。

  *ウェイティング期間中も準備とスケジュール管理が必要。