2010年3月18日木曜日

借地の研究(002)

契約書の整備の問題点

賃貸人の権限の調査
 一般的には賃借人の問題がクローズアップされるが、賃貸人が権限を有するのかは重要な問題となる。表現代理等の構成により救済される場合が多いが、代表権のない者との契約等問題は多い。売買の場合と同様の注意義務が必要である。


賃貸範囲の明確化
 一団の土地を複数の人に貸す場合、土地の一部を貸す場合等、賃貸の範囲が不明確な場合が多い。測量・分筆までを行う事はまれであろう。この場合に、賃貸部分がどこなのかは明確にしておかなければ、将来に大きな問題として表れてくる。複数の賃借人に貸す場合においても、賃借人同士の認識が一致しているとは限らない。特に、底地を売却する様な場合には、その賃貸範囲が売買の範囲となるため大きな問題となる。最低でも、賃借の範囲を明確にする図面作成は必要となる。又、物納条件の中にもそれぞれを分筆して、借地範囲の確認をしなければならない。相続発生後においては、当事者不在による借地人同士の紛争に巻き込まれる事も少なくない。

塀・壁・垣根で囲まれた敷地
道路までの通路
敷地の範囲が明確でない場合は、建物の周囲の建物利用に最低必要な敷地

利用目的の明確化

借地用途に対して地代の値上げを請求

借地借家法11条の地代増額には、借地の用途変更は含まれない。地代の増額ができるか。
用途変更による地代増額、承諾料を支払うとの合意がない場合は、直ちに地代の増額や承諾料の請求する根拠はない。

借地の周辺の環境変化により利用目的の変更が必要な場合が存在。利用目的の変更がすぐに信頼関係の破壊とならない場合が存在。例は、商業立地としての移行が進み、住居としての利用が陳腐化した場合などは、店舗に変更する事がすぐに信頼関係破壊したとまでは言えない場合があります。

地代の明確化
 新法借地借家法においては、堅固・非堅固の区別がないため、その変更は用法の違反とは決定されにくい。

期間
増改築制限
用法変更


東京高裁昭和29年10月25日判決
建築基準法の規定によって耐火構造にした。用法違反に当たらない。

堅固な塀の建築は用法違反とはならない、また、買い取り請求の可能性あり。


非堅固    堅固・・・用法違反
平成4月8月1日以降の契約は堅固・非堅固の区別なし。
                
不利益特約

解除権を留保する
最高裁昭和28年9月25日判決
格別の意味を持たない。民法612条

賃借人が借地権を無断譲渡したり、借地を無断転貸した場合には、賃貸人はただちに契約を解除する事ができる。

債務不履行による契約解除の特約
最高裁 昭和43年11月21日判決
賃貸人は催告をせず、解除の通告をして、借地関係を消滅させることができる旨の定めと解される。催告の手間が省くための規定です。
すぐに解除できるものではない。
 すなわち、解除の通告は必要であり、催告について省くことができるとするものである。解除の通告もせずに、一方的に契約が解除されたとする主張をする事は認められないのです。この様な規定があったとしても、一定の手順を踏み、進めていく事が寛容です。

賃借人が賃料を滞納した場合、直ちに借地権は消滅し、賃貸人に土地を明け渡さなければならないと規定されていても、すぐに明け渡しが可能となるのではありません。解除の通知をする等の手続は行わなければならないのです。

平成4年7月31日以前の契約であれば無効。

相続人に相続が発生して遺産分割がされた場合に、借地借家関係は賃借権を継承した者に対して有効となります。相続した者が、契約上の権利義務を承継する事となります。
 滞納賃料については当然に各相続人に分割承継されます。遺産分割で相続人間で法定相続分と違う合意をしたとしても賃貸人は合意に関係なく、各相続人に対して、法定相続分に応じた額の請求ができる。又、合意を承認することもできます。しかし、相続人が誰であるのかは賃貸人にとって解からない場合が多く、相続人からの連絡がない場合には、対応の方法がありません。普段の管理の中で明確にしておく必要があります。

相続人の確定

代表者の確定

借地を原状に復して返すとの規定がありますが、借地人に地上建物を収去して返すことを義務づけたものであれば無効となります。それは、借地人の建物買い取り請求権を放棄させることになるからです。すなわち、現状回復義務との関係では、返還後の建物の処理について問題になる場合が多いのです。


保証人
保証人の責任
保証債務は主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他すべてのその債務に従たるものを包含する。

賃料の滞納、損害賠償責任、遅延損害金

借主の明渡義務を実現する責任はない。借主の明渡義務は、一身専属敵義務であり、保証人が代わって実現することはできない。保証人は明渡義務の不履行による損害賠償義務を負うこととなる。
 保証人が、借主本人にかわって、明渡を行う事はできないのです。たとえば、賃借人が賃料の滞納等で債務不履行になり、契約解除をした場合に、その所在が不明であっても保証人による明渡を実現させることはできません。裁判上の手続によらなければならないのが原則です。


保証人の身元確認の重要性

保証人の重要性については、賃貸借契約から生じる債務を保証してもらえる人的担保です。本当に実在するか、資力が有るか等も重要であるが、保証人とされる人が本当に保証の意思があるかが重要となります。又、保証人の資力か収入についても、継続的な確認がされていないのが現実です。更新の時期には、居住者保証人等に関する事項についての確認が必要です。

確認資料
住民票
身分証明書等
戸籍謄本
身上書
印鑑証明
給与明細・厳選徴収票・確定申告書

商業登記簿
代表者の印鑑証明
確定申告

 保証人の印鑑証明まで必要なのかですが、認印だけであった場合には保証人から賃借人が勝手にやったと言われかねないのです。保証人が、印鑑登録された実印を契約書に捺印した場合は、原則として保証人本人が契約書に捺印したものと認められるので、保証人になる事を承諾していないとの主張はできなくなります。



建物賃貸借
建物賃貸借契約の保証人の責任
最高裁判例平成9年11月13日
期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のためのに保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の意思表示を伺わせるような特段の事情がない限り、保証人が更新後の賃貸借契約から生じる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意されたものと解するのが相当である。

最高裁判例昭和39年12月18日
保証人は保証責任の無限定な拡大を防ぐために、一定の状況の下に保証契約を解約できるとしている。賃借人の著しい賃料不払いや資産状況の悪化があるにもかかわらず、賃貸人が賃貸借の解除等の処置を講じなかった場合には、保証人に解約権が認められる。
 保証人に対しても、賃料支払の請求をしておく必要があります。そうでないと、一方的に保証契約の解除をされてしまい、保証人のいない契約となってしまいます。

東京地裁平成6年6月21日判決
 賃貸借は当然に更新されることが予定されており、更新される事を承知して、連帯保証人となったと認められる。更新後は連帯保証人としての責を免れるとの明示がない場合は、更新後に生じた賃貸借に基づく債務も責任がある。