2010年3月25日木曜日

借地の研究(003)

国有地借地

東京地裁昭和55年1月30日判決

国有財産・・普通財産の貸付けに関しては、国有財産法が適用される。国有財産法に規定が無い場合には、借地借家法・借地法の規定が適用される。
 国有財産については、国有財産法の規定が優先的に適用されます。そして、各儀書換承諾料の額等についても、一定の基準が定められています。

国有財産普通財産の貸付期間は30年となっています。

名義書換承諾料
相続税評価額×借地権割合×10/100

増改築承諾料
相続税評価額×5/100
      ×3/100(非堅固)
 賃料についても算定基準があります。物納条件においても、この算定基準に適合する必要があります。一般の契約と違うとすれば、権利金等の授受がない事です。

地代
地代の決定要因

地代と利回り
住宅地の地価は0,8%
2,2~2,6%
1,5~2%程度
1/2~1/3

借地は優良資産

普通借地権の地代水準
地代の公租公課倍率 
住宅用地  4.2倍~3.1倍
非住宅用地 3.5倍~2.4倍

東京簡裁等の調停成立状況
住宅用地  3.1倍
非住宅用地 2.4倍

調停委員会の適正賃料額

昭和49年10月11日 東京地裁民事第22部
「調停部だより(8号)」
 地代は公租公課の2~3倍の額をもって適正地代とするのが比較的妥当。
 

平成5年1月 浦和地裁管内簡裁民事事務汎査会
「賃料改定調停事件処理要綱」

①[建築価額(取得費)×(1-経過年数/耐用年数)+減価償却費+固定資産税等諸経費]×1/12

②[固定資産評価額×2.5×期待利回り率+減価償却費
 +固定資産税等諸経費]×1/12

地代の値上げ

地代の値上げ問題

最高裁平成3年11月29日判決
地代・借賃が決められた時から相当の期間が経過しているかどうかは、地代が「不相当である」かどうかを判断する一つの事情である。現行の賃料の改訂いから一定期間経過しているか否かは、賃料が不相当となったか否かを判断する事情にすぎない。借主は賃料が不当となっているのであれば、相当期間が経過していない事を理由として増額請求を否定することはできない。

社会的経済的に事情の変動がある事。
一定期間増額しないとの特約・・有効
一定期間が経過しないととの特約があっても減額請求は許される。
契約書に増額の規定だけの場合も、減額請求は可能。
地代の評価方法
(1)借地借家法第11条①(地代と増額請求権)
イ、土地に対する公租公課の増減
ロ、地価の上下
ハ、その他経済事情の変動により比隣の地代に比して不相当となりたるとき将来に向かって地代の増減の請求が出来る、こととされています。
評価方法
イ、積算賃料
地価に一定率を乗じた額に、公租公課を換算して月額にした賃料、この場合賃料の基礎価格として、更地の30%程度が地主の元本としての価格として求められます。
ロ、スライド方式の賃料
前回値上げした時点から値上げ要求のあった時点までのGDP・GNOの変動率を採用して求めます。
ハ.利回り方式
平均的な利回りを基準に求めます。
留意点
最高裁判所はいろいろな手法で求めたものを、総合的に考慮して判定する必要があるとしています。

サブリース契約の賃料減額請求。
判例は
賃料の自動増額特約減額は認められないとするものと、特約で値上げ率の変更が可能な場合に増額0%は大丈夫とするものがある。

東京高裁平成14年3月5日判決
転賃目的のビルの一括賃貸借には借地借家法32条の適用がなく、当事者は賃料の増減額の請求権を持たない。

転賃目的の賃貸借は、家賃保証の期間後は賃借人、賃貸人の双方から解約の自由を持つものである。一定の事業目的のために一定期間、固定賃料を定めたものであるとし、解約の自由は認めるものの、減額請求は認めていなかった。

しかし、最高裁平成15年6月12日判決では、借地借家法の規定に基づく家賃減額請求権の行使を認めるとの判決がされている。


サブリース判決

賃料の減額請求

賃料の減額請求に賃貸人が応じない場合には、賃借人は、調停(及び訴訟)によって賃料の改定を求めます。
この場合賃貸人は、従来どおりの賃料を請求する事ができます。
この場合には、賃借人が賃料減額請求権(借地借家法32条1項)を行使した時から裁判所により客観的相当額が決定された時までの期間について年1割の利息の支払をしなければなりません。(借地借家法32条3項)
 
賃借人が賃料の減額請求を行い、従前の賃料額を支払わない場合には、債務不履行を理由に賃貸借契約の解除をすることが可能となります。
賃借人は従来どおりの家賃を供託する手続をとるのが一般的となっています。賃貸人としては、賃料の減額請求に対して、急いで対応する必要はないと言えます。ゆっくりと交渉していく事となるのです。しかし、賃料の減額に関しては、その影響は一人の借地人だけで止まらない場合が多く、注意が必要です。基本的には、現在の近隣の賃料相場に照らして、適正な賃料であるかを検証し、その対応を図るべきでしょう。

2010年3月18日木曜日

借地の研究(002)

契約書の整備の問題点

賃貸人の権限の調査
 一般的には賃借人の問題がクローズアップされるが、賃貸人が権限を有するのかは重要な問題となる。表現代理等の構成により救済される場合が多いが、代表権のない者との契約等問題は多い。売買の場合と同様の注意義務が必要である。


賃貸範囲の明確化
 一団の土地を複数の人に貸す場合、土地の一部を貸す場合等、賃貸の範囲が不明確な場合が多い。測量・分筆までを行う事はまれであろう。この場合に、賃貸部分がどこなのかは明確にしておかなければ、将来に大きな問題として表れてくる。複数の賃借人に貸す場合においても、賃借人同士の認識が一致しているとは限らない。特に、底地を売却する様な場合には、その賃貸範囲が売買の範囲となるため大きな問題となる。最低でも、賃借の範囲を明確にする図面作成は必要となる。又、物納条件の中にもそれぞれを分筆して、借地範囲の確認をしなければならない。相続発生後においては、当事者不在による借地人同士の紛争に巻き込まれる事も少なくない。

塀・壁・垣根で囲まれた敷地
道路までの通路
敷地の範囲が明確でない場合は、建物の周囲の建物利用に最低必要な敷地

利用目的の明確化

借地用途に対して地代の値上げを請求

借地借家法11条の地代増額には、借地の用途変更は含まれない。地代の増額ができるか。
用途変更による地代増額、承諾料を支払うとの合意がない場合は、直ちに地代の増額や承諾料の請求する根拠はない。

借地の周辺の環境変化により利用目的の変更が必要な場合が存在。利用目的の変更がすぐに信頼関係の破壊とならない場合が存在。例は、商業立地としての移行が進み、住居としての利用が陳腐化した場合などは、店舗に変更する事がすぐに信頼関係破壊したとまでは言えない場合があります。

地代の明確化
 新法借地借家法においては、堅固・非堅固の区別がないため、その変更は用法の違反とは決定されにくい。

期間
増改築制限
用法変更


東京高裁昭和29年10月25日判決
建築基準法の規定によって耐火構造にした。用法違反に当たらない。

堅固な塀の建築は用法違反とはならない、また、買い取り請求の可能性あり。


非堅固    堅固・・・用法違反
平成4月8月1日以降の契約は堅固・非堅固の区別なし。
                
不利益特約

解除権を留保する
最高裁昭和28年9月25日判決
格別の意味を持たない。民法612条

賃借人が借地権を無断譲渡したり、借地を無断転貸した場合には、賃貸人はただちに契約を解除する事ができる。

債務不履行による契約解除の特約
最高裁 昭和43年11月21日判決
賃貸人は催告をせず、解除の通告をして、借地関係を消滅させることができる旨の定めと解される。催告の手間が省くための規定です。
すぐに解除できるものではない。
 すなわち、解除の通告は必要であり、催告について省くことができるとするものである。解除の通告もせずに、一方的に契約が解除されたとする主張をする事は認められないのです。この様な規定があったとしても、一定の手順を踏み、進めていく事が寛容です。

賃借人が賃料を滞納した場合、直ちに借地権は消滅し、賃貸人に土地を明け渡さなければならないと規定されていても、すぐに明け渡しが可能となるのではありません。解除の通知をする等の手続は行わなければならないのです。

平成4年7月31日以前の契約であれば無効。

相続人に相続が発生して遺産分割がされた場合に、借地借家関係は賃借権を継承した者に対して有効となります。相続した者が、契約上の権利義務を承継する事となります。
 滞納賃料については当然に各相続人に分割承継されます。遺産分割で相続人間で法定相続分と違う合意をしたとしても賃貸人は合意に関係なく、各相続人に対して、法定相続分に応じた額の請求ができる。又、合意を承認することもできます。しかし、相続人が誰であるのかは賃貸人にとって解からない場合が多く、相続人からの連絡がない場合には、対応の方法がありません。普段の管理の中で明確にしておく必要があります。

相続人の確定

代表者の確定

借地を原状に復して返すとの規定がありますが、借地人に地上建物を収去して返すことを義務づけたものであれば無効となります。それは、借地人の建物買い取り請求権を放棄させることになるからです。すなわち、現状回復義務との関係では、返還後の建物の処理について問題になる場合が多いのです。


保証人
保証人の責任
保証債務は主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他すべてのその債務に従たるものを包含する。

賃料の滞納、損害賠償責任、遅延損害金

借主の明渡義務を実現する責任はない。借主の明渡義務は、一身専属敵義務であり、保証人が代わって実現することはできない。保証人は明渡義務の不履行による損害賠償義務を負うこととなる。
 保証人が、借主本人にかわって、明渡を行う事はできないのです。たとえば、賃借人が賃料の滞納等で債務不履行になり、契約解除をした場合に、その所在が不明であっても保証人による明渡を実現させることはできません。裁判上の手続によらなければならないのが原則です。


保証人の身元確認の重要性

保証人の重要性については、賃貸借契約から生じる債務を保証してもらえる人的担保です。本当に実在するか、資力が有るか等も重要であるが、保証人とされる人が本当に保証の意思があるかが重要となります。又、保証人の資力か収入についても、継続的な確認がされていないのが現実です。更新の時期には、居住者保証人等に関する事項についての確認が必要です。

確認資料
住民票
身分証明書等
戸籍謄本
身上書
印鑑証明
給与明細・厳選徴収票・確定申告書

商業登記簿
代表者の印鑑証明
確定申告

 保証人の印鑑証明まで必要なのかですが、認印だけであった場合には保証人から賃借人が勝手にやったと言われかねないのです。保証人が、印鑑登録された実印を契約書に捺印した場合は、原則として保証人本人が契約書に捺印したものと認められるので、保証人になる事を承諾していないとの主張はできなくなります。



建物賃貸借
建物賃貸借契約の保証人の責任
最高裁判例平成9年11月13日
期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のためのに保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の意思表示を伺わせるような特段の事情がない限り、保証人が更新後の賃貸借契約から生じる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意されたものと解するのが相当である。

最高裁判例昭和39年12月18日
保証人は保証責任の無限定な拡大を防ぐために、一定の状況の下に保証契約を解約できるとしている。賃借人の著しい賃料不払いや資産状況の悪化があるにもかかわらず、賃貸人が賃貸借の解除等の処置を講じなかった場合には、保証人に解約権が認められる。
 保証人に対しても、賃料支払の請求をしておく必要があります。そうでないと、一方的に保証契約の解除をされてしまい、保証人のいない契約となってしまいます。

東京地裁平成6年6月21日判決
 賃貸借は当然に更新されることが予定されており、更新される事を承知して、連帯保証人となったと認められる。更新後は連帯保証人としての責を免れるとの明示がない場合は、更新後に生じた賃貸借に基づく債務も責任がある。