調査
1.調査の手順
相当広い範囲にわたり、時間的な制約の中で行う必要がある。
従って基本的には、調査の目的、方法を一定の方向と範囲に絞り込み効果的に。
仮説の設定→物件調査→市場調査→事業構想の策定→企画提案書
2.仮説の概要
用途の系統
①住居系
②事務所系
③店舗系
④余暇・宿泊系
⑤その他
具体的な用途・業種
①住居系・・・・・賃貸マンション・アパート、社員寮、学生会館
②事務所系・・・・・一般事務所、貸しホール、スタジオ、専門学校
③店舗系・・・・・・小型スーパー、コンビニエンスストア、レストラン、飲食店、小売専門店
④余暇・宿泊系・・・アスレチッククラブ、カルチャーセンター、ホテル
3.物件調査
①物件特性(地積、敷地形状、道路幅員、接道状況、地盤高、日照、間口と奥行、上り車線か下り車線か、隣接地の状況等)
企画提案書への対象地の概要、建物計画、事業構想、適正洋との判定に関連。
②地域特性(交通、周辺利便施設、街並、自然環境、都市計画事業等)
対象エリアが発展しつつある地域か成熟した地域か、住民の富裕度・購買力等、地域の特徴を大きく把握する上で重要。
③法的規制(都市計画、建築規制、条例、指導要綱等)所轄官庁の担当部署での調査。
④権利関係(単独所有、共有、底地、借地、借家等)利害関係人からの調査。
⑤税金関係(印紙税、消費税、不動産所得税、登録免許税、所得税、法人税、住民税、事業所税、相続税、固定資産税、都市計画税、特別土地保有税等)
⑥対象地の価格
3-2.調査の留意点
設定した仮説の用途に関係する事項。
敷地条件
敷地面積は仮説の施設用地として妥当か
用途地域の制限上、仮説の用途は可能か
妥当な床面積が確保できるか
立地条件
最寄り駅までの距離・所要時間
都心・ターミナル駅との関係
前面道路の歩行者通行量・歩行者動線との関係
車両通行量
仮説の施設は隣接地イメージと合致しているか
集客力のある施設はあるか、客層
環境条件
競合状況
その他
計画地において確認すべき内容→境界石・越境物・歩道・ガードレール・出入りに障害となりうる電柱・ゴミ集積所・バス停留所等。 ライフラインの接続方向など。
住居系の計画地においては、周辺環境。商店・金融機関・教育施設・医療関係・公園・寺社等の緑地。事務所系の計画地においては、飲食店・金融機関等。
4.市場調査
①住居系の調査
情報誌と業者ヒアリングを中心に情報収集
住宅関連情報誌の活用
築年数・設備内容によりバラツキがあるため、数値の修正が必要。
季節により受給に偏りがある。
成約賃料の見極め。
地元業者へのヒアリング
業者によって物件の種類・地域に偏りがある。
②事務所系の調査(賃貸)
情報誌の活用(HP等)
新聞情報の整理
賃貸仲介業者へのヒアリング(情報交換出来る関係の構築)
地域特性の把握
都心部・地方都市部では需要の規模が異なる。
③需給動向・賃貸条件の調査・分析
賃貸供給状況
計画地周辺の賃貸物件の供給状況を分析し企画に反映させる。
最寄り駅または計画地を中心とした新規供給物件・既存の供給物件の分布状況および概要を調査し、傾向を分析。
(物件の位置・駅からの距離・規模・竣工時期・グレード・テナント入居状況・付帯設備等住居系の場合は戸数・間取り等も調査する)
賃貸需要の予測
需要状況については供給状況と成約率・成約期間・空室率等から読みとれる。
需要の少ない物件の原因(間取り・グレード・賃料・環境等)を調査。
テナント系の場合はテナントの移転の事例についての理由を調査。
適正な賃貸条件
対象とした市場における同種、同等、同類型あるいは当該不動産と代替え可能な賃貸不動産の「空室率、成約・解約状況、新規賃貸条件、継続賃料」等の動向について市場調査と分析を行い、賃貸借の事例を中心に、当該不動産の適正な賃貸条件を設定する。
④分譲市場の調査・分析
金融機関からの借入に伴う担保としての評価、等価交換の手法を採用する場合の分譲マンションの市場性の検討。
分譲供給状況
最寄駅あるいは計画地周辺の中古・新築マンションの供給(成約)事例を参考にし、賃貸供給状況の場合と同様の項目に成約価格(分譲価格)契約率、完売までの経過月数なども調査し、その結果計画地のマンション分譲価格を検討する。
分譲マンション需要予測
分譲マンション市場全体の動向と併せて、計画地周辺への需要量、購入者属性(家族構成・所得水準など)、需要の多い物件・少ない物件、それぞれの概要および特色などを調査分析する。
5.検討方向の見きわめ
相談、調査により事業の方向性を検討する。(前述の目的に適合する事業手段を見きわめる。)
①有効利用
建物を建築(収益物)したり、土地を賃貸して収益増または負担軽減(節税)対策を行う。
②売却
面積的な要件から利用方法が見いだせない場合や、権利者が多く換金して分配するのが適当な場合。
③購入・投資
他の事業収益との関係で、新たに償却資産(建物)を購入。
④権利調査
処分用土地を捻出するために借地権者と底地権者間の調査。
*借地権の更新の規定を理解する。
*借地権の売却の場合の規定を理解する。
*更新料、各種承諾料および立退料の違いを理解する。
*借家の更新の規定を理解する。
*確定期限付建物賃貸借の規定を理解する。
(関係資格士と相談し法的に解決)
6.その他
周辺の状況が将来変化し、より有利な条件となることが明らかな場合や、大きなリスクが生じると判断される場合、また関係者の意思統一が出来ない場合はウェイティングとなる。
*ウェイティング期間中も準備とスケジュール管理が必要。