2010年11月6日土曜日

借地の研究(009)

公法上の境界と私法上の境界


公法上の境界

筆を異にして隣接する土地の境目のことで、土地の所有者とは関係なく、客観的に定まっているものであり国のみが定めることができるものです。

私法上の境界

土地の所有権の範囲であり、隣接する土地の所有権の境目を意味します。

隣接の所有者により地番の境目を協定したとしても、公法上の境界を定めたことにはならないのです。公法上の境界と私法上の境が一致しないことはあり得るのです。



境界確定の当事者は土地の所有者です。借地人同士がもめていても、借地件の範囲の問題です。この違いを明確に刈る必要があります。


公図と14条地図

昭和35年の登記制度と台帳制度の一元化により、旧土地台帳が廃止された。不動産登記法14条により、登記所に現地復元性を有する地図を備え付けることとなった。しかし、この地図の整備作業が進まず、平成5年以降公図が14条(17条)地図に準ずる図面としてしりあつかわれる様になっています。

公図は作成目的が徴税のためのものであり、正確性を欠き登記法17条地図のような現地復元性を持たないが、境界確定の証拠として利用されている。しかし、公図には形成力・公定力・公示力と言った効力は認められていません。ただ、事実条の証明力が認められているにすぎないのです。判例においてもその判断はまちまちです。

国土調査と境界

昭和61年7月14日最高裁判例
地積調査は、土地の原状を調査するものであり、その結果によって境界を確定したり、形成する効力を有するものではない。調査の結果地積図が作成されたとしても、その記載どうりに境界が確定しているわけではない。

境界確定訴訟の性質

平成7年3月7日最高裁判例
公簿上特定の地番により表示される土地が隣接する場合。その境界線が事実上不明なため争いがある場合、裁判によって新たにその境界を定めることを求める訴えを提起することができる。形式的形成訴訟としている。

境界確定訴訟と所有権確認訴訟はの併合、訴えの変更は可能です。境界の問題と所有件の範囲の問題は違う問題だとの認識が必要です。

2010年10月5日火曜日

借地の研究(008)

立退料


立退料は、正当事由を補完するための条件にすぎない。すなわち、立退料を提示すれば立退が認められるものではなく、正当事由の存在が前提となっている事を注意する必要がある。

即決和解の限界

 立退において執行力の有るものとして、即決和解があるが限界があるといわれている。賃借人が真意に立退を承諾したのかである。専門等の立合いのもとに行う必要がある。



最高裁判例昭和44年5月20日

土地賃貸借につき一定の期限を設定し、賃貸借契約を解除するという、期限付合意解約は、賃借人が真実土地賃貸借を解約する意志を有すると認めるに足る合理的客観的理由があり、合意を不当とする事情の認められない限り許される。


真実の解約の意志表示とは
圧迫等を受けず、自由な意思表示であること
解約が不当な結果とならないことがあげられる。

立退料の意味

 立退料の意味については、以下の様な要素があると考えられている。立退交渉をスムーズに進めるためには、移転実費をベースに交渉を進めるべきである。なぜなら、移転実費は客観的に把握し易く、移転者にとっても納得しやすい金額がベースとなるからである。最低必要費として、他の要素をどう加味するかの問題として交渉がし易くなる。主観的な要素が切り離されて、妥協線が見えてくるのである。又、立退交渉における予算を試算する上でも有効であり、新規事業での損益分析が明確にできるのである。この資産をもとに、賃借人の意向を探る事により、立退交渉の実行のタイミングが図れる事となる。

①対価補償
 借家人に自然発生的な経済的利益を補償
②経費補償
 新たに、他の建物を借り入れるために要する費用の補償
③移転実費
 引越費用、人件費、仲介手数料、移転旅費、移転通知費



移転費用+移転後の賃料差額(←1~2年分程度の範囲の金額が妥当とした)

東京高裁 平成12年3月23日判決

移転後の賃料差額を補填する場合があるが、この基準については明確でない。

第1に、同程度の条件の賃貸事例が存在するかである。それぞれの賃貸住宅は条件が千差万別であり、比較する事が困難である。又、転出者は、より良い条件を探す事は当然のことであり、単純に賃料の差額を補填するわけにはいかない。しかし、転出者にとっては好んで立退くわけではなく、その差額の補填がないと移転できない場合も存在する。一般的には、新・旧賃料の1~2年分程度が妥当であると考えられる。例えば、現家賃6万円、移転先家賃が7万円であれば、12万~24万円を補填する事になるのである。

2010年9月7日火曜日

借地の研究(007)

1.正当事由


立退料の提供は補完要因


自己使用
親族等の使用の必要性
生計の事情
建物増改築
建物修繕
建物新築必要性
有効利用の必要性
移転先の提供
賃貸借の事情
地主の破産
地主変更
自己の必要性
生計の事情
建物を賃貸する必要性
従来の事情
      
を比較考量して決定する。


借地人の破産(最高裁判例 昭和48年10月30日判決)

借地人が破産して地主が解約の申し入れをする場合も、正当事由が必要としている。また、民法612条の賃借人の破産による解約申しいれの規定も削除された。

 破産宣告を受けた日までの滞納分は、滞納賃料債権として「一般の破産債権」として扱われます。敷金を差押えられた場合にも、賃貸人は差押え前にすでに発生している賃料債権と敷金返還債務を相殺することができる。
 賃貸人が破産した場合については、第3者に対する対抗要件を備えている場合は賃借人は保護されます。

建物の朽廃と借地明渡し問題

朽廃とは、建物としての社会経済的効用を失う程度に腐食・損壊している状態をいいます。建物の一部分が朽廃していても、建物全体からみれば、まだ建物としての効用を残しているような場合は、朽廃とはいえません。木造建築物においては、柱、桁、小屋組、梁が折損し、屋根瓦がずれ落ち雨漏りがひどく、土台等が腐食していて、取り壊した材料がほとんど役に立たず、修理をすると新築に近い程度の費用が必要な場合には朽廃したといえる可能性があります。風水害や火災による滅失毀損は、朽廃にはあたりません。存続期間が法定された場合も、建物が朽廃すれば借地期間満了前でも、借地権は消滅することになります。しかし、新借地借家法では、朽廃による借地権の消滅の制度はなくなっています。ただし、旧法適用の借地権については従前通となります。

しかし、裁判所としては借地人が居住している以上、建物としての社会的効用を失っているとは認定しにくいようです。

土蔵作りの築80年の建物、トイレも外にあり、居住と言う意味では老朽した建物であるが、現実に居住している者があれば、朽廃とは言えないのである。災害の危険があり、立退交渉を行うとしても、建物と同時進行しているのが賃借人の老齢化である。特に、借地の場合は建物の所有が賃借人であり、一方的に危険であるからと取壊すわけにもいかない。一部には、古家を維持し地代を支払い、立退交渉を待つ人々も存在する事は事実である。


借地法2条1項
朽廃
借地法7条
滅失

2010年7月24日土曜日

借地の研究(006)

更新料

 更新料は法律上の根拠がなく、更新料の金額についても客観的な基準はありません。借地権価格の5~10%程度とされています。(月額賃料の1~3ヶ月)

 契約に更新料の支払が重要な要素となっている場合、信頼関係の維持の基盤となっている場合、更新料の支払を拒絶すると解除原因となります。


契約期間満了における更新問題


<更新料の法的性質>

更新料の法律的性質について、学説や裁判例などによって様々な見解がでており、未だ統一的な見解はありません。

一般には

1) 更新料自体を否定

2) 異議権放棄の対価

更新するに際して貸主が更新に対する意義を述べない(更新を承諾する)ことの対価

2) 賃料などの補充

賃料の増額が簡単に出来ないことから、過去の賃料の不足分の後払い精算、または将来の賃料について事前に前払いする、あるいはよりよい条件で他の賃借人に賃貸できるかもしれないところを従前と大差ない賃料で契約を継続させる分の穴埋めのために支払い

3) 権利金充填(更新によって敷金・権利金が目減りするのを填補)

4) 更新手数料

更新料が、日本全国で普遍的に支払われておらず、更新料を肯定する見解は合理的に説明できるというものでもない。ただ、裁判例では異議権の放棄または不足賃料の補充として扱っているものが主流である。

更新料は支払わなければならないものであるのか?

民法や借地法、借家法、借地借家法いずれにおいても更新料を支払うというような規定はありません。そこで、賃貸借契約において更新料を支払うという特別の合意をしていない限りは更新料を支払う義務はないというのが一般的な考えです。

更新料の支払いが慣習となっているのか否か?

借地借家法(借地法、借家法も同じ)は民法の特別法とされています。借地借家法には「慣習」についての特別規定はないので、一般法である民法に規定されている「慣習」(民法92条)が適用される可能性もあります。

「賃貸借契約の更新にあたっては、賃借人が賃貸人に対して一定の更新料を支払うという慣習がある」ということになれば、契約で更新料の支払いを定めていなくても更新料を支払う義務が発生する可能性があります。

しかし、更新料が普遍的に通用しているものではなく、その意味合いもきわめて曖昧であり、期間満了の場合には賃貸人が更新を拒絶しても、法律上は賃貸人が更新を拒絶する正当な事由が無い限り契約は更新されることとなること(借地借家法6条、28条)から、判例上も学説上も更新料の支払いは慣習ではないとしています。更新料を支払うのは、最低限の条件として当事者間に更新料支払いの合意がある場合に限られます。


今後、最高裁が何処まで言及するか?注目です。

2010年6月17日木曜日

借地の研究(005)

借地権の評価

 借地権の評価については、地主の認識の甘さが目立つ。「こんなに安く貸してやってたのだから権利なんてない」と主張する賃貸人が大半かもしれない。

 しかし、近隣相場より安く借りれる権利が借地権(賃借権)の源である事を理解しなければならない。安く借りられる権利を借地人に与えたのは賃貸人自身なのです。その意味では、借地人に「良い地主」といわれるほど後で苦労するのです。日常の管理が重要である所以もここにあります。



 ①担保価値としてはどうか?

東京地裁民事21部の「運用基準」

 東京地裁民事21部の「運用基準」によれば、底地の評価は、更地(建付地)価格-借地権価格=底地価格の考え方で評価すると規定されている。全国的にも、この「基準」を基にして、案件を処理している例が多いといわれている。しかし、この「運用基準」方式によって底地の評価を行うことは、価格面では、不動産取引における実態から大きく離れることになる。

更地価格-借地権価格=底地価格、つまり借地権価格に底地価格を加えたものは、100%であるとする考え方は、地主と借地人の当事者間の取引に限っていえば、ほぼ妥当なものであ。借地権割合が80%~90%も認められる地域においては、問題は相対的な意味で小さいといえる。ところが、借地権割合が30%~40%程度の地域において、この運用基準方式で底地の評価を行うと、底地価格(割合)が更地価格の60%~70%となり、一般人(第三者)が底地を買う価格としては、妥当性を著しく欠いた評価額となってしまう。

 不動産鑑定評価基準は、『底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益を還元して得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする』と規定している。しかし、底地が第三者に単独で取引されることは極めて少なく、借地契約の多様性等からいって、底地の比準価格を求めることは実際上は困難である。底地の評価は、収益価格を基として、将来、借地権が消滅し、完全所有権(更地または建付地)になる期待可能性を加味して評価額を決定するのが、妥当性のある手法である。 土地の所有者(競落人)の手にはいるのは地代でしかないわけですから、地代を基にする収益価格でもって決定地上権についた土地(底地)を評価するのが妥当である。

金融機関の取扱い

 一方、抵当権を設定する側=金融機関が、底地の担保価値をどう把握しているか、借地権者は、更地価格-借地権価格で買取る事ができる、しかし、借地人に買い取りの意思および資力がなければ、その手法は採用できないから、担保査定の場合には、特段の事情のない限り適用すべきでない、そこで、底地の価格は原則として賃料徴収権の対価と考えるべきで、現行賃料の額および還元利回りがポイントとなる。底地については、厳しい査定を行っているのが実情である。  

表面利回り

   年間収入÷購入費

   純利回り

   (年間収入-固定資産税・管理費・修繕費・金利)÷(購入費・リフォーム費)

   実質利回り

   純利回り+経済リスク・収益変動リスク・老朽リスク・売却リスクを考慮する必要がある。

2010年5月27日木曜日

借地の研究(005)

 無断譲渡


借地借家法14条

無断譲渡を理由に契約が解除された場合、建物を譲り受けたものは、地主に時価で買い取る様請求できる。?

最高裁判例昭和30年11月22日

賃借人の無断譲渡が賃貸人に対する背信行為と認められる場合は、無断譲渡による契約解除が肯定される。

大審院判例昭和2年4月25日

借地権付建物の競売事案について、建物が競落された場合に、建物所有者であったものと建物買受人に移転すると解すべきである。

特約事項で地主の承諾が得られることを建物の所有権移転および土地賃借権の譲渡の停止条件として明確にする必要ある。

また、契約後の対応や手付金、中間金の額等も問題となる。実質的な権利移転と考える場合は無断譲渡と認定される。

借地権付建物の底地の瑕疵

最高裁判例平成3年4月2日

敷地の瑕疵は、借地権の性能上の瑕疵というものではなく、借地権者と敷地所有者たる貸主の問題であり、その瑕疵の責任は、貸主に対して問われるべきである。しかし、敷地面積の不足、敷地に関する法規制、または賃貸借契約における使用方法の制限等の客観的事由によって賃借権が制約を受けて売買の目的を達することができないときは、建物とともに売買された賃借権に瑕疵があると解する余地があるとしており、瑕疵担保責任を追及できる。


個人の土地建物を法人に貸す場合

賃借人の法人成りの場合

 最高裁判例 昭和39年11月19日

 個人営業からの法人成りについては、無断転賃であるとしています。しかし、会社(経営)の実権は従前の賃借人が掌握し、賃借建物の使用状況等も、個人営業の時と実質的に変化のない場合は、背信性はなく契約解除権は発生しないとしています。

 最高裁判例 昭和46年11月4日

 この実質的な変化及び背信性の有無については賃借建物の使用状況の変化を基礎に具体的に判断するとしています。

 しかるに、会社(経営)の実権が第3者に移ったときは、事情が変更され、その時点で信頼関係が破壊されたとして、契約解除権が認められます。
 この場合において、実質的な支配権が第3者に移った事が外形上判断しにくく、この実権の移動を追証したと言われかねない事に注意が必要です。

法人成の禁止条項

 賃借人は本件××における営業権をいかなる形態を問わず、法人名義とする事はできない。

 賃借人は本店舗を、法人の本店もしくは支店、営業所、出張所などの所在場所としてすることはできない。

 前項のいずれかに該当する場合は事由のいかんを問わす、無断転賃とみなされ、賃貸人は賃借人に対して本契約を解除し、本件××の明渡しを求めることができる。



株式譲渡(全株式)と賃貸権の譲渡

 ①全株式の譲渡が民法第612条の規定を潜脱するものではない。
 ②譲渡後の賃借人の営業目的や本件建物の使用状況に変更がない。
 ③譲渡後の賃借人の支払い能力に不安を感じさせる恐れがない。

 上記の場合には、株式が譲渡されたとしても、賃貸権の譲渡とはならないとしています。しかし、株式譲渡により経営者が変更される等、信頼関係の基礎となる部分に変化がある事は重要な問題だと考えられます。

 地主の承諾

借地権の譲渡問題

借地人が借地権を譲渡するには、地主の承諾が必要です。借地権の譲渡を認めても特段地主の不利益にならないような場合には、仮に地主が借地権の譲渡に承諾を与えなくても、譲渡を認めてあげる必要が出てきます。その制度として、借地権者が借地非訟手続という手続によって、裁判所に対し地主の承諾に代わる借地権譲渡許可の裁判を求める申立をすることができるとされています(借地借家法第19条)。裁判所は、借地権者から申立があると、借地権の残存期間、地代の支払い能力、借地に関する従前の経過、借地権の譲渡又は転貸を必要とする事情、その他一切の事情を考慮して許可の申立を認めるかどうか判断します。許可されれば、地主の承諾がなくても家と借地権を自由に譲渡することができます。そして、認める場合にも、当事者間の公平を図るため必要があるときは、地代の変更などの借地条件の変更を命じたり、借地人に地主への一定の財産上の給付(承諾料)を命じます。地主の承諾を得るために支払われる金員が借地権譲渡承諾料と言われ、借地権価格の10%程度が普通言われています。(売却価格の10%でない。)  

最高裁判例昭和34年9月17日

借地権譲渡にあたっては、特別の事情がない限り、譲渡人は、譲受人に対し、譲渡につき遅滞なく賃貸人の承諾を得る義務を負うものと解されている。


 譲渡承諾料(国有財産)

 名義書換承諾料
相続税評価額×借地権割合×10/100

増改築承諾料
相続税評価額×5/100

       ×3/100(非堅固)

 賃料についても算定基準があります。物納条件においても、この算定基準に適合する必要があります。一般の契約と違うとすれば、権利金等の授受がない事です。

 競売と地主の承諾

2ヶ月以内に地主の承諾か裁判所の承諾が必要。承諾が得られない場合は建物買取請求は可能。

 競売により、借地権付建物を取得した場合には、2ヶ月以内に地主の承諾か裁判所の承諾が必要となる。又、賃貸借条について調整がつかず、地主の承諾が得られない場合も、裁判所による判断を仰ぐこととなる。

 地主側から、承諾を得られない場合には、建物買取請求を行うこととなります。この場合、建物価格については時価となりますが、問題となる事が多いです。

借地権譲渡承諾のお願い

 私は貴殿所有の後記記載の土地上の借地権付建物を競落し、代金も既に支払いました。(××地方裁判所     平成××年(×)第×××号、強制競売事件)

 つきましては、同土地の当方による賃借権の譲受けをご承諾頂きたく、ここにお願い申し上げます。

建物買取請求書

 私が、貴殿より賃借していた土地上に所有していた建物を競落した事は、ご案内のとおりです。

 これにつきまして、私は貴殿に対して、賃借権譲渡を承諾していただくようお願いしましたが、このたび貴殿より承諾しない旨の通知をいただきました。

 つきましては、同建物を時価により買取られるよう請求いたします。なお、同時価は金×××万円と鑑定されておりますので、ご参考までに申し添えます。

 無断転貸借

最高裁判例昭和62年3月24日

土地の無断転貸借がされたにもかかわらず、賃貸人に対する背信的行為と認められるに足りない特段の事情が存在するため賃貸人が賃貸借契約を解除することができない場合には、当該賃貸借が合意解除されたとしても、その解除が本来は、賃料不払い等による法定解除の行使が許されるとされたものである等の事情がない限り、賃貸人は、合意解除の効果をその転借人に対抗することができない。

最高裁判例昭和32年12月21日

賃貸借契約の債務不履行に基づく契約解除による消滅原因については、賃貸借契約の終了と同時に適法に行われた転貸借は、債務不能となり終了する。

最高裁判例昭和41年5月9日

実質的に、賃借人の債務不履行が存在し、法定解除し得る場合に、解決策として合意解除の形式をとり、円滑な明渡しを期待した場合にも転借人に対する契約終了の効果を対抗しえる。

最高裁判例昭和42年1月17日、最高裁判例昭和45年12月11日

背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合の無断転貸は、継続的な契約関係である賃貸借の特質上、契約当事者間のの法律関係の安定および衡平を考慮して、承諾があった場合と同様に適法な賃貸借となる。

2010年5月4日火曜日

借地の研究(004)

契約解除通知書


 貴殿と私との間で締結した下記記載の土地に関する賃貸借契約(以下「本契約」という。)について、以下の通り通知致します。

 貴殿は本契約に基づく賃料の支払いを平成××年××月分以降、××月間怠っています。そのため私は貴殿に対して、平成××年××月××日付の催告書において、同年××月××日を限りとして、同滞納賃料相当額をお支払いただくように催告しました。しかしながら、同期日経過後、本日に至るも、滞納賃料のお支払はおろか、誠意ある回答もいただいておりません。よって私は貴殿に対して本通知によって、本契約解除の意思表示をいたします。

 したがって、同土地を平成××年××月××日までの明渡し、並びに同滞納賃料相当額及び遅延損害金の支払いを請求致します。

 なお、損害金等の正確な金額については、別途計算のうえ後日請求させていただきますので予めご承知おきください。

 
契約解除通知書

 貴殿と私との間で締結した下記記載の土地に関する賃貸借契約(以下「本契約」という。)について、以下の通り通知致します。

 貴殿は本契約に基づく賃料の支払いを平成××年××月分以降、××


供託金の還付と取戻し


供託がされた場合に、被供託者は、法務局で、その供託金を受領する事ができます。


〈供託金の還付〉

最高裁判例 昭和33年12月18日

 賃貸人(被供託者)が、何ら留保を付けないで供託金を受け取ったときは、それ以上の金額を残額として請求できない。

 賃貸人(被供託者)は供託金額が増額賃料の一部弁済である旨の留保の意思表示をして、受領する必要があります。従前の地代額が供託されていた場合に、保留せずに供託金を受け取った場合には、従前の地代を認めたとされるのです。これを回避する方法として裁判上では以下の方法が認められています。

 
最高裁判例 昭和36年7月20日

 賃貸人(被供託者)が、賃借人(供託者)に対して、供託金額を増額賃料の一部弁済として受領する目的で供託書を送付するよう求める通知書を送った場合


最高裁判例 昭和38年9月19日

 賃貸人(被供託者)が、供託金額を増額賃料の一部弁済として受領するとの通知書を添付して供託所に対して供託金の還付手続きを行った場合


最高裁判例 昭和42年8月24日

 賃貸人(被供託者)が賃借人(供託者)に対して、供託金を受領するまで、一貫して供託金を超える金額を請求する訴訟を維持継続している場合には、留保付きの還付請求をしたと認められます。


〈供託金の取り戻し〉

 賃借人(供託者)は、賃貸人(被供託者)が供託金の還付を受けるまでは、原則としていつでも〈民法 469条 〉

供託金を取り戻すことができます。しかし、この取戻権は10年で時効消滅すると解されています。(最高裁判例 昭和45年7月15日)

 又、供託金を取り戻した場合は、賃借人が供託をしなかったのと同じ状態になり、賃料が遅延している状態となるのです。


相当と認める金額とは何か。

 客観的に適正な賃料額ではなく、賃借人が主観的相当な賃料額であると判断した金額で足るとされているが、増額請求がされているのに、従来賃料より安い金額を供託した場合や、減額請求をした賃借人が従前の賃料より安い金額を供託した場合、又、公租公課を下回る金額を供託した場合には、債務不履行となる。

 長期間の供託により、供託額が公租公課を下回るなど著しく低額になった場合には、賃借人として信頼関係を破壊する事となる場合があります。

 賃貸人としては長期の供託がされており、公租公課を下回る場合などには、公租公課額を下回る旨の通知をし、その後に信頼関係が破壊されたとして、契約解除する方法が考えられます。

※従前の賃料の1/3、適正賃料の1/10は相当と認められる額ではない。債務不履行となる。解除原因となる。

権利金と敷金、保証金との意味を混合している人がいます。

敷金の返還請求については、新しい判例がでています。一般に言う敷引の判例ですが、消費者保護法により条項が無効とまでいわれています。


賃貸人から借地人への供託金の受取りの通知


通知書

 私が、貴殿に対し、平成××年××月××日より賃料1ヶ月××万円で賃貸している後記記載土地について、平成××年××月××日付内容証明郵便をもって、賃料を平成××年××月××日より、1ヶ月××万円に値上げする旨を通知いたしました。しかし、貴殿は、不服ということで、旧賃料相当額を同年×月分として、×××法務局へ平成××年××月××日付で供託されました。

 つきまして、同供託金を還付して同月分、新賃料の一部に充当しますので、この旨を通知いたします。

 なお、同還付は旧賃料相当額を継続する趣旨ではなく、また貴殿が引き続き供託される場合は同様の措置をとることを念のため申し添えます。


継続的な地代の値上げが可能か、適正な地代への値上げであれば可能(適正な増額であれば可能)と考えられます。適正な地代への値付けであっても、一度に30%増額は認められないと考えられます。長期的な視野にたって、行う必要があります。物納条件の地代水準が、その基準となると考えられます。

2010年3月25日木曜日

借地の研究(003)

国有地借地

東京地裁昭和55年1月30日判決

国有財産・・普通財産の貸付けに関しては、国有財産法が適用される。国有財産法に規定が無い場合には、借地借家法・借地法の規定が適用される。
 国有財産については、国有財産法の規定が優先的に適用されます。そして、各儀書換承諾料の額等についても、一定の基準が定められています。

国有財産普通財産の貸付期間は30年となっています。

名義書換承諾料
相続税評価額×借地権割合×10/100

増改築承諾料
相続税評価額×5/100
      ×3/100(非堅固)
 賃料についても算定基準があります。物納条件においても、この算定基準に適合する必要があります。一般の契約と違うとすれば、権利金等の授受がない事です。

地代
地代の決定要因

地代と利回り
住宅地の地価は0,8%
2,2~2,6%
1,5~2%程度
1/2~1/3

借地は優良資産

普通借地権の地代水準
地代の公租公課倍率 
住宅用地  4.2倍~3.1倍
非住宅用地 3.5倍~2.4倍

東京簡裁等の調停成立状況
住宅用地  3.1倍
非住宅用地 2.4倍

調停委員会の適正賃料額

昭和49年10月11日 東京地裁民事第22部
「調停部だより(8号)」
 地代は公租公課の2~3倍の額をもって適正地代とするのが比較的妥当。
 

平成5年1月 浦和地裁管内簡裁民事事務汎査会
「賃料改定調停事件処理要綱」

①[建築価額(取得費)×(1-経過年数/耐用年数)+減価償却費+固定資産税等諸経費]×1/12

②[固定資産評価額×2.5×期待利回り率+減価償却費
 +固定資産税等諸経費]×1/12

地代の値上げ

地代の値上げ問題

最高裁平成3年11月29日判決
地代・借賃が決められた時から相当の期間が経過しているかどうかは、地代が「不相当である」かどうかを判断する一つの事情である。現行の賃料の改訂いから一定期間経過しているか否かは、賃料が不相当となったか否かを判断する事情にすぎない。借主は賃料が不当となっているのであれば、相当期間が経過していない事を理由として増額請求を否定することはできない。

社会的経済的に事情の変動がある事。
一定期間増額しないとの特約・・有効
一定期間が経過しないととの特約があっても減額請求は許される。
契約書に増額の規定だけの場合も、減額請求は可能。
地代の評価方法
(1)借地借家法第11条①(地代と増額請求権)
イ、土地に対する公租公課の増減
ロ、地価の上下
ハ、その他経済事情の変動により比隣の地代に比して不相当となりたるとき将来に向かって地代の増減の請求が出来る、こととされています。
評価方法
イ、積算賃料
地価に一定率を乗じた額に、公租公課を換算して月額にした賃料、この場合賃料の基礎価格として、更地の30%程度が地主の元本としての価格として求められます。
ロ、スライド方式の賃料
前回値上げした時点から値上げ要求のあった時点までのGDP・GNOの変動率を採用して求めます。
ハ.利回り方式
平均的な利回りを基準に求めます。
留意点
最高裁判所はいろいろな手法で求めたものを、総合的に考慮して判定する必要があるとしています。

サブリース契約の賃料減額請求。
判例は
賃料の自動増額特約減額は認められないとするものと、特約で値上げ率の変更が可能な場合に増額0%は大丈夫とするものがある。

東京高裁平成14年3月5日判決
転賃目的のビルの一括賃貸借には借地借家法32条の適用がなく、当事者は賃料の増減額の請求権を持たない。

転賃目的の賃貸借は、家賃保証の期間後は賃借人、賃貸人の双方から解約の自由を持つものである。一定の事業目的のために一定期間、固定賃料を定めたものであるとし、解約の自由は認めるものの、減額請求は認めていなかった。

しかし、最高裁平成15年6月12日判決では、借地借家法の規定に基づく家賃減額請求権の行使を認めるとの判決がされている。


サブリース判決

賃料の減額請求

賃料の減額請求に賃貸人が応じない場合には、賃借人は、調停(及び訴訟)によって賃料の改定を求めます。
この場合賃貸人は、従来どおりの賃料を請求する事ができます。
この場合には、賃借人が賃料減額請求権(借地借家法32条1項)を行使した時から裁判所により客観的相当額が決定された時までの期間について年1割の利息の支払をしなければなりません。(借地借家法32条3項)
 
賃借人が賃料の減額請求を行い、従前の賃料額を支払わない場合には、債務不履行を理由に賃貸借契約の解除をすることが可能となります。
賃借人は従来どおりの家賃を供託する手続をとるのが一般的となっています。賃貸人としては、賃料の減額請求に対して、急いで対応する必要はないと言えます。ゆっくりと交渉していく事となるのです。しかし、賃料の減額に関しては、その影響は一人の借地人だけで止まらない場合が多く、注意が必要です。基本的には、現在の近隣の賃料相場に照らして、適正な賃料であるかを検証し、その対応を図るべきでしょう。

2010年3月18日木曜日

借地の研究(002)

契約書の整備の問題点

賃貸人の権限の調査
 一般的には賃借人の問題がクローズアップされるが、賃貸人が権限を有するのかは重要な問題となる。表現代理等の構成により救済される場合が多いが、代表権のない者との契約等問題は多い。売買の場合と同様の注意義務が必要である。


賃貸範囲の明確化
 一団の土地を複数の人に貸す場合、土地の一部を貸す場合等、賃貸の範囲が不明確な場合が多い。測量・分筆までを行う事はまれであろう。この場合に、賃貸部分がどこなのかは明確にしておかなければ、将来に大きな問題として表れてくる。複数の賃借人に貸す場合においても、賃借人同士の認識が一致しているとは限らない。特に、底地を売却する様な場合には、その賃貸範囲が売買の範囲となるため大きな問題となる。最低でも、賃借の範囲を明確にする図面作成は必要となる。又、物納条件の中にもそれぞれを分筆して、借地範囲の確認をしなければならない。相続発生後においては、当事者不在による借地人同士の紛争に巻き込まれる事も少なくない。

塀・壁・垣根で囲まれた敷地
道路までの通路
敷地の範囲が明確でない場合は、建物の周囲の建物利用に最低必要な敷地

利用目的の明確化

借地用途に対して地代の値上げを請求

借地借家法11条の地代増額には、借地の用途変更は含まれない。地代の増額ができるか。
用途変更による地代増額、承諾料を支払うとの合意がない場合は、直ちに地代の増額や承諾料の請求する根拠はない。

借地の周辺の環境変化により利用目的の変更が必要な場合が存在。利用目的の変更がすぐに信頼関係の破壊とならない場合が存在。例は、商業立地としての移行が進み、住居としての利用が陳腐化した場合などは、店舗に変更する事がすぐに信頼関係破壊したとまでは言えない場合があります。

地代の明確化
 新法借地借家法においては、堅固・非堅固の区別がないため、その変更は用法の違反とは決定されにくい。

期間
増改築制限
用法変更


東京高裁昭和29年10月25日判決
建築基準法の規定によって耐火構造にした。用法違反に当たらない。

堅固な塀の建築は用法違反とはならない、また、買い取り請求の可能性あり。


非堅固    堅固・・・用法違反
平成4月8月1日以降の契約は堅固・非堅固の区別なし。
                
不利益特約

解除権を留保する
最高裁昭和28年9月25日判決
格別の意味を持たない。民法612条

賃借人が借地権を無断譲渡したり、借地を無断転貸した場合には、賃貸人はただちに契約を解除する事ができる。

債務不履行による契約解除の特約
最高裁 昭和43年11月21日判決
賃貸人は催告をせず、解除の通告をして、借地関係を消滅させることができる旨の定めと解される。催告の手間が省くための規定です。
すぐに解除できるものではない。
 すなわち、解除の通告は必要であり、催告について省くことができるとするものである。解除の通告もせずに、一方的に契約が解除されたとする主張をする事は認められないのです。この様な規定があったとしても、一定の手順を踏み、進めていく事が寛容です。

賃借人が賃料を滞納した場合、直ちに借地権は消滅し、賃貸人に土地を明け渡さなければならないと規定されていても、すぐに明け渡しが可能となるのではありません。解除の通知をする等の手続は行わなければならないのです。

平成4年7月31日以前の契約であれば無効。

相続人に相続が発生して遺産分割がされた場合に、借地借家関係は賃借権を継承した者に対して有効となります。相続した者が、契約上の権利義務を承継する事となります。
 滞納賃料については当然に各相続人に分割承継されます。遺産分割で相続人間で法定相続分と違う合意をしたとしても賃貸人は合意に関係なく、各相続人に対して、法定相続分に応じた額の請求ができる。又、合意を承認することもできます。しかし、相続人が誰であるのかは賃貸人にとって解からない場合が多く、相続人からの連絡がない場合には、対応の方法がありません。普段の管理の中で明確にしておく必要があります。

相続人の確定

代表者の確定

借地を原状に復して返すとの規定がありますが、借地人に地上建物を収去して返すことを義務づけたものであれば無効となります。それは、借地人の建物買い取り請求権を放棄させることになるからです。すなわち、現状回復義務との関係では、返還後の建物の処理について問題になる場合が多いのです。


保証人
保証人の責任
保証債務は主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他すべてのその債務に従たるものを包含する。

賃料の滞納、損害賠償責任、遅延損害金

借主の明渡義務を実現する責任はない。借主の明渡義務は、一身専属敵義務であり、保証人が代わって実現することはできない。保証人は明渡義務の不履行による損害賠償義務を負うこととなる。
 保証人が、借主本人にかわって、明渡を行う事はできないのです。たとえば、賃借人が賃料の滞納等で債務不履行になり、契約解除をした場合に、その所在が不明であっても保証人による明渡を実現させることはできません。裁判上の手続によらなければならないのが原則です。


保証人の身元確認の重要性

保証人の重要性については、賃貸借契約から生じる債務を保証してもらえる人的担保です。本当に実在するか、資力が有るか等も重要であるが、保証人とされる人が本当に保証の意思があるかが重要となります。又、保証人の資力か収入についても、継続的な確認がされていないのが現実です。更新の時期には、居住者保証人等に関する事項についての確認が必要です。

確認資料
住民票
身分証明書等
戸籍謄本
身上書
印鑑証明
給与明細・厳選徴収票・確定申告書

商業登記簿
代表者の印鑑証明
確定申告

 保証人の印鑑証明まで必要なのかですが、認印だけであった場合には保証人から賃借人が勝手にやったと言われかねないのです。保証人が、印鑑登録された実印を契約書に捺印した場合は、原則として保証人本人が契約書に捺印したものと認められるので、保証人になる事を承諾していないとの主張はできなくなります。



建物賃貸借
建物賃貸借契約の保証人の責任
最高裁判例平成9年11月13日
期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のためのに保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の意思表示を伺わせるような特段の事情がない限り、保証人が更新後の賃貸借契約から生じる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意されたものと解するのが相当である。

最高裁判例昭和39年12月18日
保証人は保証責任の無限定な拡大を防ぐために、一定の状況の下に保証契約を解約できるとしている。賃借人の著しい賃料不払いや資産状況の悪化があるにもかかわらず、賃貸人が賃貸借の解除等の処置を講じなかった場合には、保証人に解約権が認められる。
 保証人に対しても、賃料支払の請求をしておく必要があります。そうでないと、一方的に保証契約の解除をされてしまい、保証人のいない契約となってしまいます。

東京地裁平成6年6月21日判決
 賃貸借は当然に更新されることが予定されており、更新される事を承知して、連帯保証人となったと認められる。更新後は連帯保証人としての責を免れるとの明示がない場合は、更新後に生じた賃貸借に基づく債務も責任がある。

2010年2月24日水曜日

借地の研究(001)

土地賃貸借契約

普通借地契約

建物の所有を目的とするものが借地借家法・借地法の適用がある。

建物の所有を目的としない土地賃貸借契約を締結していても、建物の建築された時に立ちに異議を述べないと、黙示の承認があったとみなされて、借地借家法、借地法の適用となる。

建物であるか、
土地に定着する建造物
長時間使用できるものであること
住居・営業・物の貯蔵などの目的に使用されるものであること
屋根・壁があり独立していること
 この考え方からすると基礎があり、柱・カベ・屋根があれば登記されてしまい、借地権を主張されてしまう事があるのです。こんなホッタテ小屋なんて思わないで下さい。こんな状況を早期に知る事ができるのは、継続的で適格な確認がされているからです。この意味でも管理が資産継承の第1命題なのです。

その他の問題点
・工場敷地契約
土壌汚染について

・定期借地契約

・耕作契約
 本来の作物耕作収穫後の処理

・使用貸借契約

民法593条の使用貸借は借地法・借地借家法の適用がありません。

固定資産税程度をもらっている場合に、使用貸借の発生を妨げないとはいえないとの判例あり。しかし、定期的に謝礼程度以上のものをいただいた場合は使用貸借が否定される。
 使用賃借において、一般には無償だから、権利がないなんて言われています。そして、本人との個別契約だから本人が死亡したら使用賃借契約が解除できると言う者までいます。しかし、工場敷地等の場合は、その目的を達成するまでは返ってこないのです。


土地の使用賃借契約

問題点 
・有償無償
無償である事は必ずしも必要ない。
 
判例
固定資産税相当額を負担したとしても、使用賃借の成立をさまたげるものではない。
この意味では使用賃借は無償であるとの考えは改めるべきです。

●期間の定めのないもの
目的が達成できるまで貸し続けなければなりません。例えば事業が成立する
●目的が明示されたもの
抽象的な事例であれば、この実現は誰が判断するのでしょう。本人か?まだ目的が達成していないと言われれば、これを否定する事はに困難なのです。


期間の定めある場合
・目的がある場合
駐車場契約

目的
露天自家用自動車駐車場

契約期間は期日を指定
自動更新しない事を明示しておく(再契約が前提であっても)

借地借家法の適用がない
しかし、地代の一方的な値上げについて問題あり。
定期的に見直す趣旨明記し賃料の更新を可能にしておく事

駐車場の範囲の明確化

・資材置き場契約
建物建築は黙示の承認の危険


・一時使用契約

最高裁判例昭和43年3月28日
その目的とされた土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸借期間等の諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に短期的に限り賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的な理由が存在する場合に限り、一時使用の賃貸借に該当する。


東京高裁平成8年11月13日判決
土地一時使用契約となっていても、事務所や倉庫が建築され、更新が数度行われた場合は、一時使用目的の賃貸借の賃貸借契約ではないとされた。


地上建物を取壊し可能なバラックに限定し仮設建物のみを所有し得る一時使用のため道路敷地となるまで
賃貸人で土地を自ら使用する計画を賃借人が了承していた

一時使用の合理性が認められた判例がある。

最高際判例昭和36年7月6日
権利金の授受があっても一時使用と認められる。

・地役権設定契約

・信託契約

・自己借地権設定契約

2010年1月5日火曜日

日本の底地・借地・貸家(001)

日本の底地・借地(底地・借地の歴史的考察)001

江戸(東京)に借地が多い←
 ①武家の拝領地が多く・・・親類への無償貸付以外には売却、質入、貸付が禁止されていた。1632年に  幕府が町人に賃貸する事を認めた。(許可)

 ②町年寄、御用達町人、医師  女官、絵師、坊主、能役者の拝領
  売却、質入は禁止されていたが貸付については認められていた         
            
 ③寺社、地主 ・・・売却は禁止

 明治期の借地の消滅(1872年には「壬申地券」の発行
 ・武家拝領地、町人拝領地の収用→底価売却

大阪(大坂)の借地←家持地主の増加
 ①土地所有の尊重の意識が薄く
 ②坪領地主が存在しなかった
 ③寺社が少なかった
 ④空き地が没収されたため貸家が増加
 ⑤公役町役を避けるために借家人が増加

権利金の発生
 地価と地代額が上昇し、地代利回りが低下する中で、(明治30年頃、千代田区の借地で地代の5年分程度 を権利金として授受した契約書が存在する)権利金の授受が始められ、借地権取引と借地権価格が成され  た。
 ☆地代利回りを2%とすると、地価の10%程度になる
 権利金が授受された理由として、地価上昇の中で
  ①将来の地代値上分
  ②新旧借地人の地代調整のため
 特に②の要素によるものと考えられる。
 
 大阪においてはこの時期に権利金の例がないのは、市街化地に借地が少なかったからである。
 借地権売買は、地価の上昇と地代のアンバランスにより貸しているより売却した方が有利であるとの考えに よるものである。

権利金の慣行化
 借地法制定後に東京で授受例が増加したが、1930年には地価が停滞し地代利回りが回復すると権利金の授受は少なくなった。
 権利金は前述の将来の地代値上げ分については、特に有効なものとなった。それは、最低借地期間の法定により必要と考えられたのである。ここで押えておくべきことは、大土地所有の上に多数の借賃がいたからであり、地代上昇傾向が存在したからである。


1920~26年の大土地所有の減少
 産業投資を志向する土地所有者において、貸地経営からの撤退が顕著になった。(三菱等の財閥である)

第2次地代家賃統制例 1938年8月4日~1946年9月30日効力を失う。

第3次地代家賃統制例 1946年10月1日~
 地代家賃を1946年9月30日時点で凍結「停止統制額」その後の地代家賃については物価庁長官の許可となる「許可統制額」この基準は、「付近類似の借地の地代額」「旧地代家賃統制令による適正標準」 1948年10月地租課税率の引き上げ地代家賃統制令は、権利金は地代の前払いとして考えていた。敷金については規制がなかった。
 この時期に借地権の割合が一挙に上げられる事となる。土地区画整理事業や課税において顕著となる。
1946年3月の財産税課税では52%(東京都区内・横浜市)
1950年12月~1953年の富裕税課税では90%になった(全国に及ぶ)

   地方税法の改正、地租標準課税率
   土地の賃貸価格の28.8%~ 24.0%に引上げる。
   これにより、借地率は低下し、借地が消滅する。しかし、借地数は増加している。

地主が借地人、借家人に土地を売却していく。その一方で新規借地供給が増加したことによる。

1960年より、東京・大阪等の大都市を中心に、「敷金、保証金」の支払いが顕著に増加しているし、権利金の授受については1950年に統制令が解除されると増加した。
 東京は更地価格の40~60%
 大阪は更地価格の20~50%
更新料は1960年頃より東京周辺で授受され始めた。
 住宅地で更地価格の8~12%
 商店地で更地価格の12%
 堅固な建物で更地価格の15~20%
更新料は1962年頃から一部慣行といして生まれてきたといえる。

最後に、東京都大阪の借地の違い
 東京
 借地が多く、借地権取引権利金の授受の慣行が存在、借地権価格が確立
 大阪
 借地が少なく、借地権取引権利金授受の慣行が存在しない。借地権価格の意識が弱い。
 大阪で借地権価格の観念が生まれるのは立退料の慣行化と高額化による。

借家率 
 東京では1873年に低下する、窮民の下総原野への追攻によるか、その比率は高いものであった。1941年は70%の水準である。
 大阪では1925年には借家率が90%と非常に高い。大阪・東京は江戸期より借家率は高く、明治大正期においてもその水準に変化がなかった。その後、1941年借家法改正等により、1950年代末まで低下する。そして1956年の新築建物に「地代家賃統制令」が適用されなくなり上昇する。1960年代以後は40%~60%と横はい傾向となっている。