2010年10月5日火曜日

借地の研究(008)

立退料


立退料は、正当事由を補完するための条件にすぎない。すなわち、立退料を提示すれば立退が認められるものではなく、正当事由の存在が前提となっている事を注意する必要がある。

即決和解の限界

 立退において執行力の有るものとして、即決和解があるが限界があるといわれている。賃借人が真意に立退を承諾したのかである。専門等の立合いのもとに行う必要がある。



最高裁判例昭和44年5月20日

土地賃貸借につき一定の期限を設定し、賃貸借契約を解除するという、期限付合意解約は、賃借人が真実土地賃貸借を解約する意志を有すると認めるに足る合理的客観的理由があり、合意を不当とする事情の認められない限り許される。


真実の解約の意志表示とは
圧迫等を受けず、自由な意思表示であること
解約が不当な結果とならないことがあげられる。

立退料の意味

 立退料の意味については、以下の様な要素があると考えられている。立退交渉をスムーズに進めるためには、移転実費をベースに交渉を進めるべきである。なぜなら、移転実費は客観的に把握し易く、移転者にとっても納得しやすい金額がベースとなるからである。最低必要費として、他の要素をどう加味するかの問題として交渉がし易くなる。主観的な要素が切り離されて、妥協線が見えてくるのである。又、立退交渉における予算を試算する上でも有効であり、新規事業での損益分析が明確にできるのである。この資産をもとに、賃借人の意向を探る事により、立退交渉の実行のタイミングが図れる事となる。

①対価補償
 借家人に自然発生的な経済的利益を補償
②経費補償
 新たに、他の建物を借り入れるために要する費用の補償
③移転実費
 引越費用、人件費、仲介手数料、移転旅費、移転通知費



移転費用+移転後の賃料差額(←1~2年分程度の範囲の金額が妥当とした)

東京高裁 平成12年3月23日判決

移転後の賃料差額を補填する場合があるが、この基準については明確でない。

第1に、同程度の条件の賃貸事例が存在するかである。それぞれの賃貸住宅は条件が千差万別であり、比較する事が困難である。又、転出者は、より良い条件を探す事は当然のことであり、単純に賃料の差額を補填するわけにはいかない。しかし、転出者にとっては好んで立退くわけではなく、その差額の補填がないと移転できない場合も存在する。一般的には、新・旧賃料の1~2年分程度が妥当であると考えられる。例えば、現家賃6万円、移転先家賃が7万円であれば、12万~24万円を補填する事になるのである。