2011年5月11日水曜日

借地の研究(012)

袋地の通行権


 袋地とは、当該土地が他の土地に囲まれていて、公路に通じないものです。この場合、他人の囲境地を通行する権利があります。

 ただし、公路に面している場合についてですが、不特定多数の人が自由に通行できる道路の事で、公道・私道を問いません。

 判例では通路の幅員については、0.85~6mまでのものがあります。一般的には2m以下の場合が多い様です。

 最高裁判決 昭和49年4月9日によると、建築基準法43条の建物敷地の接道義務について、通路幅員の決定資料の1つに加えても良いとしています。

しかし、最高裁判決 平成11年7月13日では「単に特定の土地が接道条件を満たさないとの一事をもって、同土地の所有者のために隣接する他の土地につき、接道要件を満たすべき内容の囲境地通行権が当然に認められると解する事はできない」といいます。すなわち、接道要件は考慮の要素に入る可能性はあるとするものの、実際に考慮しなければならないとするものではないのです。

 上記判例では、建築基準法上の接道義務により両建築不可となった土地について接道義務を考慮した判断はされていません。ましてや、自動車の通行を確保する事までは認められていません。現在は現状の幅員が基準となると考えられます。


通行地役権の対抗

 最高裁判決 平成10年2月13日

「譲渡の時に承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として利用されている事が明らかであり、譲受人がその事を認識していたか、または、認識する事が可能であったときは、特段の事情がないかぎり、177条の第3者に当らない。」としています。たとえば、通路の形態とかあり通行していると解かる様な場合には対抗力のある第3者にあたらない事となります。


通行地役権の登記

 最高裁判決 平成10年12月18日

「譲受人が地役権設定登記の欠けつを主張するについて正当な利益を有する第3者にあたらず、通行地役権者が譲受人に対して、登記なくして通行地役権を対抗できる場合には、通行地役権者は、譲受人に対して、同権利に基づいて地役権設定手続を請求することができ、譲受人はこれに応ずる義務を負うものと解すべきである」としています。すなわち、通行地役権が認められる場合にはその登記請求ができることとなります。


通行の自由

 最高裁判決 平成9年12月18日

①道路位置指定を受け、現実に道路が開設されている

②通行をする日常生活上不可欠の利益を有する

③敷地所有者が通行により、通行利益を上回る著しい損害を被ることがない