居住用建物の賃貸借における保証金の解約引き特約、更新料特約が消費者契約法10条に該当し無効に!
京都地裁判例
判示事項の要旨: 居住用建物の賃貸借契約における保証金の解約引き特約及び
更新料特約が,消費者契約法10条に該当し無効であると判断されました。
事件番号: 平成20年( ワ)第3224号
事件名: 敷金返還請求事件
裁判年月日:H21.7.23
裁判所名: 京都地方裁判所 第6民事部
請求概要
賃借人は,賃貸人との間のマンション賃貸借契約の締結時に保証金35万円を,契約更新時に更新料特約に基づき更新料11万6000円をそれぞれ支払ったが,本件賃貸借契約の約定中,解約引き特約及び更新料特約が消費者契約法10条により無効である旨主張して,敷金契約終了に基づき被告が返還すべき義務があることを自認した5万円を含めた保証金35万円及びこれに対する賃借物件明渡し後の平成20年7月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,不当利得返還請求権に基づき,更新料11万6000円及びこれに対する訴えの変更申立書送達の日の翌日である同年10月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
2 前提事実( 証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)
(1)賃借人は,平成18年4月1日,賃貸人との間で,以下の内容の本件賃貸借契約を締結した。
ア.賃貸借物件.京都市
イ.契約期間平成18年4月1日から平成20年3月31日まで
ウ. 賃料1か月5万8000円
エ. 保証金35万円
オ. 解約引き30万円
カ. 更新料賃料2か月分
賃貸借契約書の条項
①賃借人は,敷金(保証金)として金額35万円を本契約締結時と同時に賃貸人に差し入れるものとする。但し,敷金(保証金)には,利息を付さない。
② 前項の敷金(保証金)は,賃借人の賃貸人に対する賃料の支払及び損害賠償その
他の本契約から生ずる一切の債務を担保する。
③ 賃貸人は,敷金(保証金)を返還する際,未納の家賃損害金,滞納損害金,原
状回復の為の費用等,賃借人が甲に支払うべき金額を控除して,その残金を明渡し後60日以内に賃借人に返還する。但し,敷金(保証金)の額が不足するときには,賃借人は不足額を直ちに賃貸人に納付しなければならない。
④ 賃料及び共益費は,賃料5万8000円,共益費5000円。
⑤ 契約期間は,平成18年4月1日から平成20年3月31日まで。但し,契約期間満了の
2か月以上前に,賃貸人が賃借人に対し書面により更新拒絶の申出をしない限り,契約は当然に更新されるものとする。但し,賃借人の責に帰すべき事由による契約の解除は本契約を更新することができない。
⑥ 賃借人は合意更新または,法定更新にかかわらず,更新料(賃料2か月分)
を支払わなければならない(本件更新料特約)。
⑦ 賃料・共益費の改定、賃料及び共益費等が,物価の変動,住宅の維持管理,公
租公課等,その他の事由により不相当となるに至ったときは,契約期間中といえども,賃貸人は,家賃・共益費・敷金等を改定することができる。
⑧ 賃借人が賃料及び共益費等の全部又は一部の支払を怠ったときは,賃借人は賃
貸人に対し納付期日から延滞日数に応じ年率(365日あたり)14.6パーセントの割合を乗じて算出した額に相当する延滞金を支払わなければならない。但し,天災等その他不可抗力によるものと甲が認めたときは,これを減免することができる。
⑨ 賃借人は契約期間中といえども,賃貸人に対して書面により2か月以上前の予
告期間を定めて,本契約の解約を申し入れることができる。この場合,予告期間満了と同時に本契約は終了する。但し,賃借人は予告期間にかえて2か月分の賃料相当額を賃貸人に支払うことにより,直ちに解約することができる。
⑩ 賃貸人は契約期間中といえども,賃借人に対し,6か月以上の予告期間を定め
て本契約を解約することができる。
⑪ 賃借人もしくは同居人,又はそれらの来訪者その他の賃借人の関係者が目的物
件,本建物設備, 及び諸造等を変更,又は毀損した時は,賃借人は直ちにこれを原状に回復しなければならない。もし,賃借人が原状に回復しない場合は,賃貸人は賃借人の費用負担において回復することができる。
事実関係
1.賃借人は,賃貸人に対し,平成20年1月15日,本件賃貸借契約を更新するに際し,本件更新料特約に基づき,2年間の契約期間に対する更新料として11万6000 円( 本件更新料)を支払った。
2.賃借人は,賃貸人に対し,平成20年5月8日,本件賃貸借契約の解約の申入れを行い,同月31日,本件物件を明け渡した。
3. 賃借人は,賃貸人に対し,平成20年6月2日,2か月分の賃料相当額として11万6000円を支払った。
当裁判所の判断1
本件敷引特約及び本件更新料特約は,消費者契約法10条に該当するものとして無効といえるか( 争点⑴)
⑴賃借人は消費者契約法2条1項の「消費者」に,賃貸人は同条2項の「事業者」にそれぞれ該当し,本件賃貸借契約に消費者契約法が適用される。
*消費者契約法の適用がある。
⑵本件敷引特約及び本件更新料特約が民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項といえるかについて検討する。
ア. 本件敷引特約について賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対
価としての賃料の支払を内容とする契約であり( 民法601条),賃借人が賃料以外の金員の支払を負担することは賃貸借契約の基本的内容に含まれない。
そして,居住用建物の賃貸借の場合の保証金は 敷金と同様 賃料その他の賃借人の債務を担保する目的をもって賃貸借契約締結時に賃借人から賃貸人に交付される金員であり,賃貸借契約終了の際に賃借人の債務不履行がないときは賃貸人はその金額を返還するが,債務不履行があるときはその金額中より当然弁済に充当されることを約束して授受する金員を指すことが多く,本件賃貸借契約書にも,その趣旨が規定されている。
しかしながら, 本件敷引特約については,全く返還を許さない趣旨のものなのか, 原状回復にその程度の費用を要することがあることを考慮して,基本的には返還しないが,そのような費用を要しなかったことが具体的に明らかになった場合には,本件敷引特約を適用しないこととするかについて,明瞭な約定がされていたものとは評価し難い。さらに,将来返還される余地のない金員として,本件敷引金のような金員を授受することが慣習化していることを認めるに足りる証拠はない。
こうしたことを考慮すると, 本件敷引特約は,その法律上の性質ないし意味合いを明確にしないまま,民法その他公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し, 消費者の義務を加重したものといえる。
*基本的には返還しないが,そのような費用を要しなかったことが具体的に明らかになった場合には,本件敷引特約を適用しないこととするかについて,明瞭な約定がされていたものとは評価し難い。
*敷引金については慣習化しているとは認められない。
イ.本件更新料特約について前記アのとおり, 賃借人が賃料以外の金員の支払を負担することは賃貸借契約の基本的内容に含まれないところ,本件更新料特約では,賃借人が賃貸人に対し,契約更新時に賃料の2か月分相当額の更新料を支払うこととされている。そして,本件更新料が,賃料の補充としての性質を有しているといえるかは後記のとおり疑問であるし,仮にその性質を有していたとしても,その支払時期が早い点(民法614条参照)で賃借人の義務を加重する特約であるといえる。
さらに, 更新料を授受することが慣習化していることを認めるに足りる証拠はない。そうすると,本件更新料特約は,民法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の義務を加重したものといえる。
*本件更新料が,賃料の補充としての性質を有しているといえるかは疑問である。*支払時期が早い点(民法614条参照)で賃借人の義務を加重する特約であるといえる。
*更新料を授受することが慣習化していることを認められない。
⑶本件敷引特約及び本件更新料特約が民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するといえるかについて検討する。
民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するか否かは,消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差があること(消費者契約法1条)にかんがみ,当事者の属性や契約条項の内容,そして,契約条項が具体的かつ明確に説明され,消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。
賃借人は,居住用として本件物件の賃借人となった者であるのに対し,賃貸人は, 貸家業を営み,多くの借家人と賃貸借契約を締結してきたのであって,建物賃貸借に関する情報(礼金,保証金,更新料等を授受するのが通常かどうか,同種の他の物件と比較して本件賃貸借契約の諸条件が有利であるか否か)を継続的に得ることができる立場にあり,このような情報に接してきた期間にも差があるものと推認できるのであって,両者の間に情報収集力の格差があることは否定できない。
*貸家業を営み,建物賃貸借に関する情報(礼金,保証金,更新料等を授受するのが通常かどうか,同種の他の物件と比較して本件賃貸借契約の諸条件が有利であるか否か)を継続的に得ることができる立場にあり,このような情報に接してきた期間にも差があるものと推認できる。
イ本件敷引特約について
( ア) 本件敷引特約は,保証金35万円からそのうち30万円を無条件に差し引くものであるが,賃借人としては本件物件を借りようとする以上,支払わざるを得ないものであり,特に本件賃貸借契約のように4月から入居しようとする場合, 賃借希望者が多数存在することから競争原理が強くはたらく結果,賃借人としては本件敷引特約について交渉する余地はほとんどなかったものと考えられる。そして,本件敷引金は,保証金の約85パーセントに相当し,月額賃料の約5か月分にも相当するものであり,保証金,賃料に比して高額かつ高率であり,消費者である原告にとって大きな負担となる。
*敷引金は,保証金の約85パーセントに相当し,月額賃料の約5か月分にも相当する。保証金,賃料に比して高額かつ高率であり,消費者である原告にとって大きな負担となる。
( イ) 被告は本件敷引金の法的性質について,
① 自然損耗料
② リフォーム費用
③ 空室損料
④ 賃貸借契約成立の謝礼
⑤ 当初賃貸借期間の前払賃料
⑥ 中途解約権の対価
といった要素があり,これらの要素が渾然一体として含まれる本件敷引金には合理性がある旨主張するので,各要素について検討する。
a. ① 自然損耗料及び② リフォーム費用について
賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。そのため,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗にかかる投下資本の減価の回収は,通常,賃貸人が減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われているところ(最高裁平成16年(受)第1573号同17年12月16日判決・判例タイムズ1200号127頁),本件全証拠をもってしても,京都市内においてこれと異なる慣習等が存在するとは認められない。そうすると,通常損耗の回復費用は賃料を適正な額とすることによって回収するのが通常というべきであって,敷引金という形で賃借人に負担を転嫁することには合理的理由があるとはいえない。
また,リフォーム費用も,通常損耗部分の補修のために支出される側面が多く,本件全証拠をもってしても,本件物件について通常損耗がなかったが,良質な居住環境を提供するためにリフォームを行うこととしているなど,そうしたことへの対価として返還を要しない礼金を授受することが適当とみられるような状況が存在したとまでは認め難い。そうすると,本件においては,リフォーム費用を敷引金という形で賃借人に負担を転嫁することには合理的理由があるとはいえない。
*通常損耗の回復費用は賃料を適正な額とすることによって回収するのが通常であり,敷引金という形で賃借人に負担を転嫁することには合理的理由があるとはいえない。
b ③ 空室損料について
賃貸人による投下資本( 賃貸物件)の回収は,原則として賃料の支払を受けることにより行われているのであるから,空室期間(すなわち,賃借人が使用収益しない期間)の賃料が得られないことによるリスクは賃貸人が負うべきである。そのため,建物の賃貸借契約では,賃貸人のリスクを避けるため,賃借人からの解約も一定期間の経過をもって終了することとされている( 民法617条)。
そうすると,賃借人が賃貸事業者である被告に対して,使用しない期間の空室損料を支払わなければならない合理的理由があるとはいえない。
*空室期間(すなわち,賃借人が使用収益しない期間)の賃料が得られないことによるリスクは賃貸人が負うべきである。
c ④ 賃貸借契約成立の謝礼について
賃貸借契約が成立することにより賃貸人も利益を受けるのであり,賃借人のみに賃貸借契約成立の謝礼を一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。
*貸借契約成立の謝礼を一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。
d ⑤ 当初賃貸借期間の前払賃料について本件賃貸借契約において,本件敷引特約が設定されていることにより賃料が低額にされているかは本件全証拠によっても明らかではない。
また,前記a のとおり,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであるから,実際に賃借人が使用する期間にかかわりなく,本件敷引金に賃料前払の要素があるとする合理的理由は見出せない。
さらに,更新後の賃貸借期間については更新料という名目で同様の趣旨の金員支払を求め,本件賃貸借契約を締結する当初には解約引きとして,この意味合いを有する金員支払を求めることは,賃貸人に都合の良い説明であるといわざるを得ず,本件敷引特約が具体的かつ明確に説明され,消費者がその条項を理解できるものであったかという観点からすると,消費者(賃借人)が上記⑤ の要素があるものと理解することはできなかったと考えざるを得ない。
*実際に賃借人が使用する期間にかかわりなく,本件敷引金に賃料前払の要素があるとする合理的理由は見出せない。
e ⑥ 中途解約権の対価について
本件賃貸借契約書により,賃貸人にも中途解約権は留保されており,その対価を賃借人に一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。
*賃貸人にも中途解約権は留保されており,その対価を賃借人に一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。
( ウ) 以上のとおり, 被告が主張する本件敷引金の性質に合理的理由は認められず,その趣旨は不明瞭であるといえる。
( エ) 前記( ア) ないし( ウ) で指摘した点を考慮すると,本件敷引金を賃借人に負担させるには,その旨が具体的かつ明確に説明され,賃借人がその内容を認識した上で合意されることが必要であり,そうでない以上,民法1条2項に規定する基本原則(信義則)に反して賃借人の利益を一方的に害するものというべきである。
( オ) 前提事実及び弁論の全趣旨によれば,賃借人は仲介業者を介し,契約内容の説明を受けていたこと, 本件賃貸借契約書に「解約引き30万円」の記載があったことが認められ,賃借人は本件敷引特約の存在自体は認識していたといえる。しかしながら,賃借人が賃貸人から賃貸人主張のような本件敷引特約の趣旨,すわなち,本件敷引金30万円がどのようにして決められたのか,自然損耗料,リフォーム費用,空室損料,賃貸借契約成立の謝礼,当初賃貸借期間の前払賃料,あるいは,中途解約権の対価の要素を有するのかということについて,具体的かつ明確な説明を受けていたとは本件全証拠によっても認められない。
( カ) よって,本件敷引特約は,消費者契約法10条に該当し,無効である。
ウ本件更新料特約について
( ア) 本件更新料特約は,賃料2か月分として11万6000円を支払うものであるが, 賃借人として本件物件を( たとえ1か月でも)継続して借りようとする以上,その全額を支払わなければならないものであり,原告としては本件更新料特約について交渉する余地がほとんどない。また,賃借人としては遠隔地に居住する必要がある場合等の外は,引き続いて当該物件を借りるのが一般的であるところ,証拠によれば当該物件を選ぶ際に更新料の存在及びその額を知り得ないこともあり,更新料まで考慮して契約を締結することは困難である。そして,本件更新料特約による更新料は,契約期間2年に対し月額賃料の2か月分を支払うものであること,正当事由( 借地借家法28条)の有無に関係なく支払わなければならないこと,法定更新なら全く金員を支払う必要がないことからすると,原告にとって大きな負担となる。
( イ) 被告は本件更新料の法的性質について,
① 更新拒絶権放棄の対価
② 賃借権強化の対価
③ 賃料の補充
④ 中途解約権の対価といった要素があり,合理性がある旨主張するため,各要素について検討する。
a ① 更新拒絶権放棄の対価について
建物の賃貸借において,賃貸人に明渡しの正当事由(借地借家法28条)がない限り,賃借人は何らの対価的な出捐をする必要がなく,継続して賃借物件を使用することができるところ,居住用建物の賃貸借において,賃貸人が当該物件の使用を必要とする事情は通常想定できず(本件においても,弁論の全趣旨から,一般に行われている居住用建物の賃貸借と同様,専ら他人に賃貸する目的で建築された居住用建物の賃貸借であることが認められる),正当事由が認められる可能性はほとんどないことから,更新拒絶権放棄の対価という要素に合理的理由があるとはいえない。
*居住用建物の賃貸借において、更新拒絶権放棄の対価という要素に合理的理由があるとはいえない。
b ② 賃借権強化の対価について居住用建物の賃貸借の場合,前記a のとおり,正当事由が認められる可能性はほとんどないため,期間の定めのない賃貸借と定めのある賃貸借とで賃借権の保護の度合いは実質的に異ならず,賃借権強化の対価という要素に合理的理由があるとはいえない。
c ③ 賃料の補充について本件更新料特約では, 更新後の実際の使用期間( 前提事実のとおり,本件では更新後2か月経過時点で明け渡している の長短にかかわらず,賃料の2か月分を支払わなければならないのであり,使用収益に対する対価である賃料の一部として評価することはできない(上記のように更新後,短期間で賃貸物件を明け渡した場合でも,残期間に対応する更新料が返還されることはうかがえない。)。
さらに,賃料増減額請求訴訟において, その対象に更新料も含まれることを前提としていることはほとんどないこと及び同請求訴訟の審理において賃料の適正額を判断する際,通常,更新料の額まで考慮されることは稀であることからも,更新料が賃料の補充の性質を有しているとはいえず,本件更新料に賃料の補充という要素があるという点に合理的理由があるとはいえない。
*更新後の実際の使用期間の長短にかかわらず,賃料の2か月分を支払わなければならないのであり,使用収益に対する対価である賃料の一部として評価することはできない。
d ④ 中途解約権の対価について
本件賃貸借契約書により,賃貸人にも中途解約権が留保されており,その対価を賃借人に一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。
*賃貸人にも中途解約権が留保されており,その対価を賃借人に一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。
( ウ) 以上のとおり,被告が主張する本件更新料の性質に合理的理由は認められず,その趣旨は不明瞭であるといえる。
( エ) 前記( ア) ないし( ウ) で指摘した点を考慮すると,本件更新料を賃借人に負担させる場合は,その旨が具体的かつ明確に説明され,賃借人がその内容を認識した上で合意されることが必要であり,そうでない以上,民法1条2項に規定する基本原則( 信義則)に反して賃借人の利益を一方的に害するものというべきである。
( オ) 前提事実及び弁論の全趣旨によれば,賃借人は仲介業者を介して契約内容の説明を受けていたこと,本件賃貸借契約書に「更新料賃料の2か月分」の記載があったことが認められ,賃借人は本件更新料特約の存在自体は認識していたといえる。しかしながら,賃借人が賃貸人から賃貸人主張のような本件更新料特約の趣旨,すわなち,本件更新料が更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充あるいは,中途解約権の対価の要素を有するということについて,具体的かつ明確な説明を受けていたとは本件全証拠によっても認められない。
*賃借人は本件更新料特約の存在自体は認識していたといえる。しかしながら,賃借人が賃貸人から本件更新料特約の趣旨(本件更新料が更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充,中途解約権の対価)について,具体的かつ明確な説明を受けていたとは本件全証拠によっても認められない。
カ) よって, 本件更新料特約は,消費者契約法10条に該当し,無効である。
2009年7月31日金曜日
2009年1月26日月曜日
相続人による預金取引記録開示請求
最高裁は相続人の一人による預金取引記録開示請求に対して以下のように判断した。
相続人の一人が、預金取引記録の開示を金融機関に請求したもので、金融機関がこれを拒み最高裁まで争われたことに疑問を感じるが、明快な答えが出されたと言って良いのではないか。
最高裁は
金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負い、預金者の共同相続人の一人は,他の共同相続人全員の同意がなくても,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができると結論づけた。
最高裁の判例要旨を紹介する。
預金契約は,預金者が金融機関に金銭の保管を委託し,金融機関は預金者に同種,同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであるから,消費寄託の性質を有するものである。しかし,預金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には,預金の返還だけでなく,振込入金の受入れ,各種料金の自動支払,利息の入金,定期預金の自動継続処理等,委任事務ないし準委任事務(以下「委任事務等」という。) の性質を有するものも多く含まれている。
委任契約や準委任契約においては,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが(民法645 条,656 条),これは,委任者にとって,委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断するためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。
このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様であり,預金口座の取引経過は,預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したものであるから,預金者にとって, その開示を受けることが,預金の増減とその原因等について正確に把握するとともに,金融機関の事務処理の適切さについて判断するために必要不可欠であるということができる。
したがって,金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。そして,預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(同法264 条,25 2条ただし書)というべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。
上告人は,共同相続人の一人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示することが預金者のプライバシーを侵害し, 金融機関の守秘義務に違反すると主張するが,開示の相手方が共同相続人にとどまる限り,そのような問題が生ずる余地はないというべきである。なお,開示請求の態様, 開示を求める対象ないし範囲等によっては,預金口座の取引経過の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があると考えられるが,被上告人の本訴請求について権利の濫用に当たるような事情はうかがわれない。
被相続人の預金の動きが不明瞭である場合や、一部の人間に流れていた場合などには、他の相続人からの請求で開示請求できることは朗報である。
被相続人と同居していた相続人間の金銭の動きを明確にすることが可能となり、無用な紛争がなくなればと感じるであるが。任意後見人の80%が同居の家族である現状を考えると、新しい火種が渦巻いているのかもしれない。
相続人の一人が、預金取引記録の開示を金融機関に請求したもので、金融機関がこれを拒み最高裁まで争われたことに疑問を感じるが、明快な答えが出されたと言って良いのではないか。
最高裁は
金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負い、預金者の共同相続人の一人は,他の共同相続人全員の同意がなくても,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができると結論づけた。
最高裁の判例要旨を紹介する。
預金契約は,預金者が金融機関に金銭の保管を委託し,金融機関は預金者に同種,同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであるから,消費寄託の性質を有するものである。しかし,預金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には,預金の返還だけでなく,振込入金の受入れ,各種料金の自動支払,利息の入金,定期預金の自動継続処理等,委任事務ないし準委任事務(以下「委任事務等」という。) の性質を有するものも多く含まれている。
委任契約や準委任契約においては,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが(民法645 条,656 条),これは,委任者にとって,委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断するためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。
このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様であり,預金口座の取引経過は,預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したものであるから,預金者にとって, その開示を受けることが,預金の増減とその原因等について正確に把握するとともに,金融機関の事務処理の適切さについて判断するために必要不可欠であるということができる。
したがって,金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。そして,預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(同法264 条,25 2条ただし書)というべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。
上告人は,共同相続人の一人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示することが預金者のプライバシーを侵害し, 金融機関の守秘義務に違反すると主張するが,開示の相手方が共同相続人にとどまる限り,そのような問題が生ずる余地はないというべきである。なお,開示請求の態様, 開示を求める対象ないし範囲等によっては,預金口座の取引経過の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があると考えられるが,被上告人の本訴請求について権利の濫用に当たるような事情はうかがわれない。
被相続人の預金の動きが不明瞭である場合や、一部の人間に流れていた場合などには、他の相続人からの請求で開示請求できることは朗報である。
被相続人と同居していた相続人間の金銭の動きを明確にすることが可能となり、無用な紛争がなくなればと感じるであるが。任意後見人の80%が同居の家族である現状を考えると、新しい火種が渦巻いているのかもしれない。
2009年1月7日水曜日
賃貸派?持ち家派?
賃貸が有利なのか?持ち家が有利なのか?
幾度となく、議論されてきた問題である。
住まいの選択には、金銭面だけではない複雑な要因があるため、一概に言えないのが結論かもしれない。
あえて、分析を試みよう。
「100年に一度の経済危機」だと言うが、裏を返せば絶好のチャンスでもある。しかし、多くの人たちは100年に一度の大波のなかにいる事も事実である。
絶好のチャンスと言える人は一握りの人であろう。
まず、不動産市場の先行きについて検証してみよう。
昨年末より、不動産市場は危機的状況にあると言える。
例えば、100区画、250区画の宅地化された分譲地が一括で売却に出ている。開発原価なんて無視したような金額である。それでも、一括売却できる見通しはうすい。また、昨年竣工した、投資用マンションが売りに出ている。フアンドへの売却が行き詰まった為である。当初売却金額の半額なんて言うのも存在する。現在、購入者側の希望利回りは10%~15%となっている。
元来、フアンドを組む為の経費、資産価値の維持経費等を考えると、不動産証券化商品の利回りが確保されるはずもないのだが!こぞって、安定利回り商品だ!不動産の流通革命だと業界のトップ達は宣っていたのだが。
新年の挨拶も、経済危機だが短期的なものであるとか、経済構造の変革が必要だとか宣っている。その、方策はあるのであろうか?無策、無能と言うほかない。
経済界がアメリカ流の投資家保護を推し進めてきた結果なのであるが。製造業の派遣も経済界の要請であった。資本家と正規労働者のセーフティネットとして派遣社員が拡大したことは事実である。
ワークシェアリングをせずに派遣社員の首切りを容認している現状をどう考えているのであろうか?
不動産の話に戻ろう、不動産市場の先行きであるが、厳しい時代が続く事は間違いない。金融機関は昨年前半から不動産関連融資をストップした。
不動産関連融資の不良債権化を恐れた金融機関は9月末、12月末の決済を今年の3月末にのばした。但し、条件付きである。3月末までに、担保不動産を売却して返済をすることが条件である。2月~3月初めにかけて企業存続をかけた不動産のディスカウントが行われるであろう。ここで、売却できなければ、その次は企業整理前提での投げ売りである。
4月~5月にかけては、不動産の投げ売り状態になるのか?予断を許さない!
今年の春以降に不動産市場は底を打つと判断される。この時期をチャンスと見るかは読者の判断に任せる。
賃貸が有利か?持ち家が有利か?の本題に進む前に、持ち家としてのマンションが有利か?戸建て住宅が有利か?の検証が必要となる。資産価値としては戸建てが有利である。
経年後の建物価値がゼロであると仮定すると、資産価値は土地の資産価値となる。マンションの場合は土地の持ち分は少なく資産価値は低くなる。また、建物の取り壊し費用は戸建て住宅よりマンションが大きくなる。マンションの場合保留床(建て替え時に建築資金を補填するために売却可能な部分)を確保できない場合は、建築コストが負担となってしまう。
余談だが、超高層マンションの取り壊し費用は膨大な金額になり再建築は不可能ではないか?なぜ故にリスクの高い超高層マンションに人気が集まるのか不思議でならない。人気のある内にとっとと売り逃げが一番だと思うのだが!
一戸建て住宅の場合は老朽化したとしても、取り壊し費用は少なく、土地値では売却可能である。
さて、本題に入るが、検証のための条件を整理しておく。
①不動産概要
購入価額 2000万円(マンション)
その他費用は考慮しない
維持費 購入価額の1.5%/年
ローン完了後の価額水準を購入価額の30%
②銀行借入
2000万円
35年
3%(金利)元利均等月払い
③賃貸条件
賃料(銀行返済総額+維持費)の120%
35年間同一条件で賃借
その他費用は考慮しない
④その他指標
運用利回り①3%(銀行利回り相当)
②0.2%(銀行利息相当)
⑤試算数値
a.不動産購入・維持費用総額(35年累計)
¥45,977,416-
b.賃借料総額(35年累計)
¥55,172,899-
c.資産価額(35年後の価額)
¥7,800,000-
d.賃料相当額を定期的に投資と運用した場合の35年後の金額運用利回り①3%(銀行利回り相当)②0.2%(銀行利息相当)
①¥98,169,840-(¥42,996,941-)
②¥57,204,897-(¥2,031,998-)
括弧内の金額は賃料相当分を差し引いた金額
検証①
不動産を購入した場合には、試算数値a.より¥45,977,416-の累計支出になるが、資産価額¥7,800,000-が確保される。実質的には¥38,177,416-の総支出となる。
検証②
不動産を賃貸した場合には、試算数値b.より¥55,172,899-の累計支出になり、¥55,172,899-の総支出となる。
検証③
検証①、②より不動産を購入した場合の方が、総支出額が¥16,995,483-少なくなっている。キャッシュフローベースで考えても¥9,195,483-の有利となっている。
検証④
資金を運用した場合には、d.①より有利な結果がでるが、実際には困難な達成数値である。d.②の現実的な数値によると有利な結果は導き出しにくい。
上記検証結果より、導き出される結論としては、賃貸住宅にすみ続けるよりも、住宅を購入した方が有利であるとの結論が導き出される。また、資金を運用した場合を考えると設定条件の下では運用利回りが0.73%以上でないと有利でないとの結論が導かれた。賃貸住宅の賃料相場上限は限界点が存在しており、住宅金融金利の上昇により住宅購入の優位性は減少するものと考えられる。また、住宅金融金利と金融商品利回りとの乖離が小さくなった場合(d.①)には、資金運用有利の結果が導き出される。
賃貸か?持ち家か?の判断には、キャッシュフロー面以外の要因が存在する。賃貸住宅のライフスタイルに即した柔軟性等の利点がある。一概には言えないのだが、持ち家を利用した資産積み立てと考えればやはり老後の備えは持ち家という結論であろう。
幾度となく、議論されてきた問題である。
住まいの選択には、金銭面だけではない複雑な要因があるため、一概に言えないのが結論かもしれない。
あえて、分析を試みよう。
「100年に一度の経済危機」だと言うが、裏を返せば絶好のチャンスでもある。しかし、多くの人たちは100年に一度の大波のなかにいる事も事実である。
絶好のチャンスと言える人は一握りの人であろう。
まず、不動産市場の先行きについて検証してみよう。
昨年末より、不動産市場は危機的状況にあると言える。
例えば、100区画、250区画の宅地化された分譲地が一括で売却に出ている。開発原価なんて無視したような金額である。それでも、一括売却できる見通しはうすい。また、昨年竣工した、投資用マンションが売りに出ている。フアンドへの売却が行き詰まった為である。当初売却金額の半額なんて言うのも存在する。現在、購入者側の希望利回りは10%~15%となっている。
元来、フアンドを組む為の経費、資産価値の維持経費等を考えると、不動産証券化商品の利回りが確保されるはずもないのだが!こぞって、安定利回り商品だ!不動産の流通革命だと業界のトップ達は宣っていたのだが。
新年の挨拶も、経済危機だが短期的なものであるとか、経済構造の変革が必要だとか宣っている。その、方策はあるのであろうか?無策、無能と言うほかない。
経済界がアメリカ流の投資家保護を推し進めてきた結果なのであるが。製造業の派遣も経済界の要請であった。資本家と正規労働者のセーフティネットとして派遣社員が拡大したことは事実である。
ワークシェアリングをせずに派遣社員の首切りを容認している現状をどう考えているのであろうか?
不動産の話に戻ろう、不動産市場の先行きであるが、厳しい時代が続く事は間違いない。金融機関は昨年前半から不動産関連融資をストップした。
不動産関連融資の不良債権化を恐れた金融機関は9月末、12月末の決済を今年の3月末にのばした。但し、条件付きである。3月末までに、担保不動産を売却して返済をすることが条件である。2月~3月初めにかけて企業存続をかけた不動産のディスカウントが行われるであろう。ここで、売却できなければ、その次は企業整理前提での投げ売りである。
4月~5月にかけては、不動産の投げ売り状態になるのか?予断を許さない!
今年の春以降に不動産市場は底を打つと判断される。この時期をチャンスと見るかは読者の判断に任せる。
賃貸が有利か?持ち家が有利か?の本題に進む前に、持ち家としてのマンションが有利か?戸建て住宅が有利か?の検証が必要となる。資産価値としては戸建てが有利である。
経年後の建物価値がゼロであると仮定すると、資産価値は土地の資産価値となる。マンションの場合は土地の持ち分は少なく資産価値は低くなる。また、建物の取り壊し費用は戸建て住宅よりマンションが大きくなる。マンションの場合保留床(建て替え時に建築資金を補填するために売却可能な部分)を確保できない場合は、建築コストが負担となってしまう。
余談だが、超高層マンションの取り壊し費用は膨大な金額になり再建築は不可能ではないか?なぜ故にリスクの高い超高層マンションに人気が集まるのか不思議でならない。人気のある内にとっとと売り逃げが一番だと思うのだが!
一戸建て住宅の場合は老朽化したとしても、取り壊し費用は少なく、土地値では売却可能である。
さて、本題に入るが、検証のための条件を整理しておく。
①不動産概要
購入価額 2000万円(マンション)
その他費用は考慮しない
維持費 購入価額の1.5%/年
ローン完了後の価額水準を購入価額の30%
②銀行借入
2000万円
35年
3%(金利)元利均等月払い
③賃貸条件
賃料(銀行返済総額+維持費)の120%
35年間同一条件で賃借
その他費用は考慮しない
④その他指標
運用利回り①3%(銀行利回り相当)
②0.2%(銀行利息相当)
⑤試算数値
a.不動産購入・維持費用総額(35年累計)
¥45,977,416-
b.賃借料総額(35年累計)
¥55,172,899-
c.資産価額(35年後の価額)
¥7,800,000-
d.賃料相当額を定期的に投資と運用した場合の35年後の金額運用利回り①3%(銀行利回り相当)②0.2%(銀行利息相当)
①¥98,169,840-(¥42,996,941-)
②¥57,204,897-(¥2,031,998-)
括弧内の金額は賃料相当分を差し引いた金額
検証①
不動産を購入した場合には、試算数値a.より¥45,977,416-の累計支出になるが、資産価額¥7,800,000-が確保される。実質的には¥38,177,416-の総支出となる。
検証②
不動産を賃貸した場合には、試算数値b.より¥55,172,899-の累計支出になり、¥55,172,899-の総支出となる。
検証③
検証①、②より不動産を購入した場合の方が、総支出額が¥16,995,483-少なくなっている。キャッシュフローベースで考えても¥9,195,483-の有利となっている。
検証④
資金を運用した場合には、d.①より有利な結果がでるが、実際には困難な達成数値である。d.②の現実的な数値によると有利な結果は導き出しにくい。
上記検証結果より、導き出される結論としては、賃貸住宅にすみ続けるよりも、住宅を購入した方が有利であるとの結論が導き出される。また、資金を運用した場合を考えると設定条件の下では運用利回りが0.73%以上でないと有利でないとの結論が導かれた。賃貸住宅の賃料相場上限は限界点が存在しており、住宅金融金利の上昇により住宅購入の優位性は減少するものと考えられる。また、住宅金融金利と金融商品利回りとの乖離が小さくなった場合(d.①)には、資金運用有利の結果が導き出される。
賃貸か?持ち家か?の判断には、キャッシュフロー面以外の要因が存在する。賃貸住宅のライフスタイルに即した柔軟性等の利点がある。一概には言えないのだが、持ち家を利用した資産積み立てと考えればやはり老後の備えは持ち家という結論であろう。
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