2007年12月23日日曜日

使用貸借契約

使用貸借契約は借地法・借地借家法の適用がありません。しかし、恐ろしい契約でもあるのです。
いつまでも、使用され続ける契約になる場合もあります。

固定資産税程度をもらっている場合にも、使用貸借の発生を妨げないとはいえないとの判例あり、有償だから大丈夫なんて思っていたら大変なことに。
使用賃借において、一般には無償だから、権利がないなんて言われています。そして、本人との個別契約だから本人が死亡したら使用賃借契約が解除できると言う者までいます。しかし、工場敷地等の場合は、その目的を達成するまでは返ってこないの場合も存在します。


土地の使用賃借契約

問題点としては、無償である事は必ずしも必要ないとされています。
 
判例では
固定資産税相当額を負担したとしても、使用賃借の成立をさまたげるものではないとしており、この意味では使用賃借は無償であるとの考えは改めるべきです。

次に使用貸借とした経緯です。

●期間の定めのない場合は
 目的が達成できるまで貸し続けなければなりません。例えば事業が成立するまでとかです。

●目的が明示された場合は
 抽象的な事例であれば、この実現は誰が判断するのでしょう。本人が、まだだと言えば、これを否定   
 する事は に困難なのです。いつまでも、相手方、本人が納得するまで使用貸借のままとなる可能性 
 があります。

期間の定めある場合は問題が少ないでしょうが、期日を明確にしておくべきです、また、自動更新しない事を明示しておいてください(再契約が前提であっても)。目的がある場合は具体的に明示しておく必要があります。

まちがっても、使用貸借契約だから大丈夫ととは考えないでください。

2007年11月23日金曜日

底地・借地の整理方法

1.地主が借地権を買い戻す。
  借地人が第三者に借地権を譲渡すれば、地主の承諾料が必要となります。そこで承諾料10%~を考慮した金額で買い戻す交渉が可能となります。また、完全な所有権となることにより換金性のある財産となります。競売により取得する事により完全所有権とする場合もある。この場合には、競売の実施の前に裁判所から通知が来るので、落札者にたいして名義書換料を請求するか、競落するかの判断が必要となります。専門的な判断が必要でしょう。

2.借地人が底地を購入する。
  借地権の割合だけ安く購入する事が可能であり、借地人は更新料も建て替え承諾料も発生しなくなります。そして、最大のメリットは借地権が担保価値のある財産にかわることです。地主との交渉が必要となり、客観な判断と交渉が必要となります。

3.底地と借地権を等価交換する。
 借地権割合に応じて、借地人が底地割合分の借地権を返還し、それに見合った底地を得る。地主、借地人双方に完全な所有権を取得する事ができます。注意が必要なのは、交換比率です。税法上は交換後の各土地価額が等価である必要があります(20%の差額限度)。税理士等の専門家に確認のうえ実施のことです。

高齢者借地が社会的問題となっています、経済原理の中で再生をはかる手法として検討すべき課題です。

2007年11月6日火曜日

底地評価の基本的な考え方

(1)東京地裁民事21部の「運用基準」
 東京地裁民事21部の「運用基準」によれば、底地の評価は、更地(建付地)価格-借地権価格=底地価格の考え方で評価すると規定されている。全国的にも、この「基準」を基にして、案件を処理している例が多いといわれている。しかし、この「運用基準」方式によって底地の評価を行うことは、価格面では、不動産取引における実態から大きく離れることになる。
更地価格-借地権価格=底地価格、つまり借地権価格に底地価格を加えたものは、100%であるとする考え方は、地主と借地人の当事者間の取引に限っていえば、ほぼ妥当なものである。借地権割合が80%~90%も認められる地域においては、問題は相対的な意味で小さいといえる。ところが、借地権割合が30%~40%程度の地域において、この運用基準方式で底地の評価を行うと、底地価格(割合)が更地価格の60%~70%となり、一般人(第三者)が底地を買う価格としては、妥当性を著しく欠いた評価額となってしまう。
 不動産鑑定評価基準は、『底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益を還元して得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする』と規定している。しかし、底地が第三者に単独で取引されることは極めて少なく、借地契約の多様性等からいって、底地の比準価格を求めることは実際上は困難である。底地の評価は、収益価格を基として、将来、借地権が消滅し、完全所有権(更地または建付地)になる期待可能性を加味して評価額を決定するのが、妥当性のある手法である。 土地の所有者(競落人)の手にはいるのは地代でしかないわけだから、地代を基にする収益価格でもって地上権のついた土地(底地)を評価するのが妥当である。                                                                                                
(2)金融機関の取扱い
 一方、抵当権を設定する側=金融機関が、底地の担保価値をどう把握しているか、借地権者は、更地価格-借地権価格で買取る事ができる、しかし、借地人に買い取りの意思および資力がなければ、その手法は採用できないから、担保査定の場合には、特段の事情のない限り適用すべきでない、そこで、底地の価格は原則として賃料徴収権の対価と考えるべきで、現行賃料の額および還元利回りがポイントとなる。底地については、厳しい査定を行っているのが実情である。  
表面利回り
   年間収入÷購入費
   純利回り
   (年間収入-固定資産税+管理費+修繕費+金利)÷(購入費+リフォーム費)
   実質利回り
   純利回り+経済リスク+収益変動リスク+老朽リスク+売却リスク
を考慮する必要がある。

2007年10月14日日曜日

改正信託法施行

改正信託法が施行されたが、資産承継対策に新しいツールが増えたと言える。

1.受益者連続信託(後継ぎ遺贈型信託)

信託委託者が、信託受益権の承継者を継続的に指定することができるよう似なりました。自分→配偶者→長男→孫へと連続して信託受益者とする事を決めることができるようになりました。本人が死亡した後も信託契約の内容が連続的に適用され、今まで遺言で出来なかった連続的な遺贈が可能となりました。

遺留分の問題は元本受益権により解決するとして、老後の生活資金の安定や身障者の息子の生活安定資金の確保の為に、連続的に指定する事ができます。
これにより、事業承継における自社株対策としての応用も可能で、その応用範囲は広い。

2.目的信託

財産の管理や処分に関する一定の目的だけを定めた信託が可能となりました。受託者はその日的に従って、受託財産の管理又は処分、目的の達成のために必要な行為をする事ができます。
公益に限らず設定することができますが、存続期間は最長20年とされています。

特定の研究や活動の為に財産を利用して欲しい場合に、特定の目的研究や活動に限ることを目的とした信託が設定可能となりました。医療や福祉活動などへの活用が可能となるでしょう。残されるペットの飼育のための信託も可能であり、その活用の範囲は広い。

従来からの、遺言信託は本来の信託ではありません。遺言書を保管するだけのことです。民法の規定に振り回されて相続争いを繰り広げる、そこには、被相続人の意志は無視されているのかも知れません。自己実現の為の手法として信託を活用する人々が増える日は近いと感じる。

信託を利用した、資産管理、承継対策を検討してみてはどうでしょうか。

2007年10月11日木曜日

土地沿革の調査

調査の対象として、土地台帳、閉鎖登記簿等により概ね明治30年以降の沿革が分かります。
そして、その調べた沿革の中から図面等の資料を収集し、整理します。特に重要なものとして次のようなものがあります。

①旧公図等の古図
一般的に見取図的な公図は、境界線復元には向いていません。しかし古図の中には、正確な測量により作製されたものや、各土地の辺長が記載されたもの、里道・水路のみではあるが、辺長が記載されたものがあります。
②分筆申告図
一般的には昭和25年以降のものが法務局又は市区町村役場に保管されている事例が多いのですが、これも分筆地の辺長が記載されている場合が多いので、参考となります。
③地積測量図
皆様よくご存じだと思いますが、この図面は概ね昭和55年以前と以降により大きく変わります。それ以前は利害関係地との立会を省略して作製された図面が多くあるからです。
④開発図、換地確定図
広範囲に各土地の辺長や角度等が読み取れる場合が多いので、特に重要な資料であります。最近のものでは、境界点等の座標値が入手できる場合もあります。
⑤14条地図と境界点、基準点の座標値
14条作業が最近のものであれば、容易に境界点が復元できます。しかし、この14条地図の作製が昭和50年代であれば、境界点の座標値が存しない場合があり、この場合は図上読み取りにより筆界線を復元しなければなりません。

これらの収集した資料と、測量地や隣接地の周囲にある既設の境界標、現況地物を照らし合わせて、総合的に判断するわけです。
実際の立会時には、境界線について土地の所有者が、ここが境界であるとの認識があるわけですが、双方の認識が合致している場合や相違している場合、又は曖昧な場合があります。
何れにせよ、土地家屋調査士が想定した筆界線(収集した資料により幅がある)の範囲内で境界線を確認することが重要なのです。実際の立会では、双方の所有者の認識と違ったところが筆界線であることもよくあります。

2007年10月8日月曜日

借地権・権利金の発生

地価と地代額が上昇し、地代利回りが低下する中で、(明治30年頃、千代田区の借地で地代の5年分程度を権利金として授受した契約書が存在する)権利金の授受が始められ、借地権取引と借地権価格が成された。
☆地代利回りを2%とすると、地価の10%程度になる
権利金が授受された理由として、地価上昇の中で
①将来の地代値上分
②新旧借地人の地代調整のため
 特に②の要素によるものと考えられる。
大阪においてはこの時期に権利金の例がないのは、市街化地に借地が少なかったからである。
借地権売買は、地価の上昇と地代のアンバランスにより貸しているより売却した方が有利であるとの考えによるものである。

権利金の慣行化
 借地法制定後に東京で授受例が増加したが、1930年には地価が停滞し地代利回りが回復すると権利金の授受は少なくなった。
権利金は前述の将来の地代値上げ分については、特に有効なものとなった。それは、最低借地期間の法定により必要と考えられたのである。ここで押えておくべきことは、大土地所有の上に多数の借賃がいたからであり、地代上昇傾向が存在したからである。

1920~26年の大土地所有の減少
産業投資を志向する土地所有者において、貸地経営からの撤退が顕著になった。(三菱等の財閥である)
1921年借地法の制定←5大都市のみ
法定最低期間、法定更新、契約終了時・借地権譲渡・転貸の場合の建物買取請求←建物価格
1941年「正当事由」
第1次地代家賃統制例 1939年
第2次地代家賃統制例 1940年
第3次地代家賃統制例 1946年10月1日~
 地代家賃を1946年9月30日時点で凍結「停止統制額」その後の地代家賃については物価庁長官の許可となる「許可統制額」この基準は、「付近類似の借地の地代額」「旧地代家賃統制令による適正標準」 1948年10月地租課税率の引き上げ地代家賃統制令は、権利金は地代の前払いとして考えていた。敷金については規制がなかった。
この時期に借地権の割合が一挙に上げられる事となる。土地区画整理事業や課税において顕著となる。
1946年3月の財産税課税では52%(東京都区内・横浜市)
1950年12月~1953年の富裕税課税では90%になった(全国に及ぶ)

地方税法の改正、地租標準課税率
土地の賃貸価格の28.8%~ 24.0%に引上げる。
 これにより、借地率は低下し、借地が消滅する。しかし、借地数は増加している。地主が借地人、借家人に土地を売却していく。その一方で新規借地供給が増加したことによる。
1960年より、東京・大阪等の大都市を中心に、「敷金、保証金」の支払いが顕著に増加しているし、権利金の授受については1950年に統制令が解除されると増加した。
東京は更地価格の40~60%
大阪は更地価格の20~50%
更新料は1960年頃より東京周辺で授受され始めた。
住宅地で更地価格の8~12%
商店地で更地価格の12%
堅固な建物で更地価格の15~20%
更新料は1962年頃から一部慣行として生まれてきたといえる。

東京と大阪の借地権の観念の違い
東京
借地が多く、借地権取引・権利金の授受の慣行が存在、借地権価格が確立
大阪
借地が少なく、借地権取引・権利金授受の慣行が存在しない。借地権価格の意識が弱い。
大阪で借地権価格の観念が生まれるのは立退料の慣行化と高額化による。

借地権の成立
①借地人の「借り得」の存在
②東京・横浜での借地権売買の慣行←1923年の関東大震災の後に一般化。
③大阪では、戦後の立退料の高額化を契機とする。
④権利金の授受土地収用・土地区画整理事業での「相当の補償」で借地権の補償。←住宅地20~25%、商業地50%・・・画一的な基準の必要性。

など、借地権・権利金は歴史的な経緯により認識され、確率されてきたものである。この意味では地域性があるともいえる。

2007年10月4日木曜日

資産承継の基本的な考え方

 資産承継対策の基本は管理にあります。そして、資産承継管理の基本に物納条件の整備をおいています。

1.不動産の財産価値

資産承継の観点から物納出来ない不動産は負の財産と考えています。何故なら、他の財産から納税原資を作り出さなければならないからです。また、物納が可能であるならば、相続税評価額がその財産の最低価額であると考えます。
 物納条件整備については、日々の管理の中で行っていくものだと考えています。この意味で、資産承継対策の基礎は管理にあるといえます。

 不動産の売却の局面においても、相続税評価額をベースに考えます。何故なら、物納条件整備が行われた財産は、相続税評価額で収納されると考えられるからです。この意味で、最低不動産価値としてとらえられるのです。

2.費用対効果

 物納条件整備を行うに当たり、費用対効果の検討が必要となります。最低不動産価値を実現化するための費用として考えます。最低不動産価格以上の費用を投下する事マイナスとなります。その分岐点は実効税率を基本に考えます。すなわち、その不動産が負担する税率以上に費用を投下すべきかがポイントであると考えます。
 ここでは、測量費用等の不動産事業経費については事業経費性がある場合は不動産事業費用としてとらえます。

 同様に、権利関係の清算(立ち退き料)についても、事業計画のなかの採算ラインと不動産価値の実現化を基本的な判断基準として始めなければなりません。

3.不動産の分類
 
 不動産をカテゴリー別に分類するが、資産承継ポートフォリオの基本となります。所有者の意向・不動産価値の実現化の可能性・収益性等を基本に分類します。しかし、不動産価値の実現化(物納条件整備)の可能性が低くても、収益性が高く保有すべき財産が存在します。

2007年9月30日日曜日

マンション購入の基礎知識3

巷では、今が買い時であるとか、賃貸より購入が有利だとかの宣伝文句が渦巻いている。マンションを終の棲家だと言う人までいる。
最後に判断するのは購入者である。決して、販売会社や不動産業者の甘い言葉に乗ってはいけない。借りる、購入するとの判断の中で、あえて購入するのには、購入者自身の将来設計があっての事であるはずです。
不動産価値の多極化が進む中で、購入を選択するのであれば、20年~30年後の「資産価値」とそこで住んでいる自分をイメージする事が必要です。マンションの購入を検討している貴方、購入しマンションが20年~30年後にどんな状態になっているかを予測して下ださい。転売、賃貸ができるか、建替えが可能かなどです。そこに住んでいる自分達家族がイメージ出来ますか?大事なことです。
賃貸が有利か、購入が有利かの判断は難しい問題です。その人のライフステージによって変わるのです。家族構成や年齢により何年間、今、希望している間取りのマンション住む必要があるのか?考えてみて下さい。そして、マンションを購入する時には、例えば20年~30年後に売却すると仮定してシュミュレーションをしてみて下さい。20年~30年後の売却予定価額を元に、ローン返済額やその他の費用を計算すると、20年~30年間でどれだけの総費用がいるかが見えてきます。そうすると、賃貸が有利か購入が有利かが判断できます。昔のようにバブルでマンションは値上がりするなんて考えないで下さい。
マンションの購入を考えている、貴方、もう一度冷静に考えて下さい。今までのマンション購入のプロセスの全てが間違っているのではと思うことがありませんか。何故、完成もしていない物を奪い合うように購入するのだろう。中古マンションであれば、まだ、確認出来ることが沢山あるのだが。ましてや、不況の今、若者が中古のマンションを購入する。確かに、毎月の賃料より低いローン返済でマンションが変えるとの謳い文句は胸にしみる。そのことを検証した人はいるのだろうか?今、バブル期にマンションを購入した人より賃貸住宅に住んでいた人の方が自由な生活を送っている。彼らは、買えなくて良かったと思っている。そして、今なら安くマンションが変えると思っているのです。マンション購入の判断は、その要因が複雑で、将来はどうなるだろうなんて考えると嫌になってしまう。最近では専門家の知恵を借りてマンション購入をしようとする人が増えている。マンション購入プロセスが変化しつつあると言える。賢いマンション購入者が増えることは喜ばしいことである。

2007年9月25日火曜日

マンション購入の基礎知識2

築25年の分譲マンションは大阪のほぼ中心に位置し、便利が取柄の町です。
最近、廊下から見下ろす景色が毎日ちょっとずつ変わっていきます。目の前に新しいマンションが出来つつあります。それも2物件もなんです。もちろん、建築も販売も違う会社のようですが、おまけに生協の配送センターまでできるんです。
こんな広い土地が都会のド真ん中にようあったな~。実は、某飲料工場の跡地です。
まず、1つ目のマンションがバス通り沿いに出来たでき、あんな道路沿いにベランダなんか作って煩くてかなわんと思っていたのですが、もう年内には入居出来るらしくて、なんと、完売です!物好きな人も居るものです。そして、2つ目のマンションが道路の奥側に出来てるです、1つ目のマンション買った人は、この事知ってんのかいな。これって、騙しちゃうの?2つの会社がつるんでるんとちゃう?何でって、2つとも一緒に出来てたら、誰かって静かな方を買うに決まってもんね!2つ目のマンションを買った人は偉い!
さすが、見る目があったというもんや。ところがドっこい、世の中そんなに甘ないでえ。
最後に控えてたんは、消費者の味方・天下の生協やったとは!恐れ入りました。配送センターなんか出来た日にゃ、明け方からガタガタ(商品の音)・ブーブー(トラックの音)煩うて、おちおち寝てられまへんでえ。まあ、これでお互い様ていうことやね。
 こんなマンション買うた人、アホちゃうか!周りの事もよう調べんと。
そやけど、やっぱり、売る方も売る方やな。最近、金利が低いのをエサに、『今、買うとかな、いつ買いまんねん?』とか何とか言うて、うまいこと買わしたんとちゃいまっか?
 マンションの工事が始まった時は、
『ああ、ええなあ~。大理石の玄関で、最新式の生ゴミ処理付きの台所で。こんな古い設備のマンションを売って!新築のマンション買をか!』って思っていたけど、こうなってみると、買わへんかったのが、せめてもの救いって事やろか?それとも、これって、貧乏人のただの僻み?

2007年9月22日土曜日

マンション購入の基礎知識1

マンションモデルルームではバーゲン会場の様な喧騒がくりひろげられている。
最近はマンションの販売初日に販売戸数以上の募集があり、抽選でという事も少なくなったが、それでも自分の気に入った間取りや場所を確保するために、大変な騒ぎになる。
マンション購入は一生一代の買物であるが、その場の雰囲気の中で奪い合う様に仮押さえがされていく。見る見る内に“赤いバラ”で壁が埋め尽くされていく。
この中にマンション購入に当たって、近隣の環境や施設などについて、ゆっくりと調べている人がどれ程いるのだろうか?
新聞折り込み広告を持ち、夢を膨らませてモデルルームへ向かう人が大半であろう。間取りや夢の最新設備に目を奪われ、広告の下の小さな文字なんて読む人もいない。
本当は大切な事が沢山書いてあるのに、読ませないために、わざと小さく書いてあるのかなぁと思ったりもする。
広告には近隣の美しい公園の写真や小学校などのきれいな写真、そしてモデルルームが夢のマンションライフを演出している。
モデルルームに入ると、ちょっと小さめのオシャレな家具が置いてあって、ゆったりとした空間が広がっている。しかし、そんなモデルルームは標準的な間取りなので、実際には同じ間取りでも階数によって少し広さが違います。現実に家具を並べられなかつたり、入居したら天井が低いような気がするという事になります。
 モデルルームにあるのは現実の生活ではなく、夢のマンションライフです。
また、モデルルームで解らないものも沢山あります。雨が降ると自転車が濡れ、老人や子供には使えない駐輪施設、窓を開けると強風が吹き抜けてドアが大きな音をたてて閉まり、洗濯物は外には干せない。子供達は外に遊びに行かない。そんな超高層階の生活は、モデルルームには存在しないのです。
モデルルームで夢を買おうとしているあなた!
マンション購入は、共有の建物・設備・敷地を買い、共有の建物・設備・敷地を管理する義務と責任を負うことです。夢だけを買ってしまうと、すぐに現実の世界にひきずり戻されてしまいますよ!マンション購入時に冷静になって、将来貸せるか?売れるか?を考えてみることも必要です。

2007年9月20日木曜日

マンション管理の現状

マンションには大規模な団地形式のもの、狭い敷地に建てられたもの、雑居ビル型やリゾート型、古いもの新しいものなどいろいろなものがあります。住んでいる人も様々です。ですから、絶対的な管理方法は存在しないでしょう、個々のマンションにあった管理が存在すると言って良いでしょう。
日本だけでなく諸外国にもマンションはありますが、海外の管理形態には様々なものがあります。
海外のマンション事情は、数からいくと圧倒的に多いのは韓国です。2000年現在の韓国の全住宅数の47.8%がマンションです。ソウルでは51.8%となっています。法律制定は日本より10年ほど遅れていますが、10数年前に共同住宅管理士という制度ができています。アジアでは他に、上海が今マンションの建築ラッシュです。ここでは、管理という概念がまだ生まれていないようです。
イギリスでは19世紀から集合住宅があります。所有の形態はかなり日本と違っていますね。フラットと呼ばれています。開発業者が土地を手に入れ、建物を建て、共用部分はそのまま所有し、専有部分のみを分譲して、専有部分の購入者が土地・建物の共用部分を長期間借りるという形態のものがほとんどです。ですから、専有部分の所有者が共同して管理を行うことはなく、管理に対して請求された金額を払うのみです。もちろん、日本のマンションと同じ所有形態のコモンホールドというものもありますが、これに関しては、現在アメリカ等を参考に立法化しつつあります。
アメリカは比較的わが国と近い管理組合の機能や仕組みになっています。アメリカと日本との大きな違いは次の4つです。
1. 規約・居住ルールの他に、建物の概要・権利関係・維持補修等の決議要件の割合・譲渡に関する制約等が定められている「宣言証書」が設置されている。
2. 積立てるべき修繕積立金を法律で明示してある。
3. 民間の紛争処理専門会社にトラブルの解決を依頼する。また、その旨を規約に書き込み、前もって会社と契約締結しておく。
4. 管理者の設置が義務付けられていない。
アメリカでは、その他にコンドミニアム(マンション)購入者を保護する観点から、行政機関がパブリックレポートというものを審査する仕組みが設けられています。
パブリックレポートとは、コンドミニアムを建築して分譲するディベロッパーが建築物の概要や権利関係を説明した書類で、何段階もの行政審査のステップを経て承認を得なければなりません。この承認がなければ、ディベロッパーは販売のための広告物等の配布ができないのです。これがあることで、購入者は自己責任としてこのパブリックコメントを注意深く読むことが期待され、また、売買契約前に専門家のアドバイスも受けられます。
ドイツ・フランスでは管理者の設置義務が法律化されており、管理業者が管理者になるのが普通です。日本の場合は「管理者をおくことができる(区分所有法3条)」と任意となっています。
マンション管理方法は国によっても違います。そして、マンションによって千差万別です。マンション管理によって資産価値がかわる時代がやってきます。他人任せのマンション管理について一度考える時期がきていると感じます。

2007年9月17日月曜日

遺言できること

 遺言は争族対策の解決策であると言われている。しかし、実際にはその効力はどうなのであろうか。遺言書の実行までが担保されたものではない。遺言執行者を決定し、その実効性を担保する必要がある。遺言信託が話題になっているが、遺言書の執行が完全に担保されているとは言い難い。遺言信託は遺言書を信託するものであり、遺言書の執行は別契約である。本来の財産を信託し自己意志の実現を目指す信託とは違うものである。自己意志の実現を担保するためには信託契約に基づく財産の信託をおすすめする。
 最初に、遺言でできることを列記する。何ができるのかを押さえておきたいものである。

1.相続に関すること
●相続分の指定
民法で定められた法定相続分とは異なる相続を希望する場合に、遺言によってそれぞれの相続人の相続分を具体的に指示する事が出来ます。また、相続分の指定を第三者に委託する事が出来ます。
●遺産分割の方法の指定
財産を誰に相続させるか、細かい指示ができます。また、相続分の指定を第三者に委託する事が出来ます。
●相続人の廃除やその取り消し
被相続人に対して、重大な侮辱を与えたり、虐待したり、その他著しい非行があった人を相統人から廃除することは生前からできますが、遺言によって可能です。また、廃除の取り消しをすることもできます。
●財産の分割を一定期間禁止
遺言によって、相続開始から5年以内ならば遺産の分割を禁止することができます。
●特別受益分の調整
被相統人が、生前ある相続人に行った贈与や遺贈は特別受益分として、原則としてその人の相続分から差し引かれますが、遺言によってこの差し引きを免除することもできます。その場合は、他の相続人の遺留分を侵さないように注意が必要です。
●相続人相互の担保責任の変更
相続人どうしは、遺産を分割した後で、もし財産に瑕疵があって損害を受けた場合、公平に処理するために、たがいに相続分に応じて補償することが義務づけられています。遺言によって、この担保責任を軽減したり加重したりすることができます。
●祭具などの承継者の指定
先祖代々のお墓や仏壇の承継者は、生前に決めることもできますが、遺言によって指定することもできます。
●遺言執行者の指定
被相統人は、遺言の内容を実行させるために信頼のおける遺言執行者を指定できます。また、その指定を第三者に委託することもできます。

2.財産処分に関すること
●相続人以外の人への遺贈
遺言によって、財産を相続人以外の人に贈与することができます。遺言にょって行う贈与を遺贈といい、遺産のうちの一定の割合を与えるという形の包括遺贈と、与える遺産を具体的に示す特定遺贈があります。
●寄付または寄付行為
遺言によって、財産の一部を寄付したり、財団法人を設立するために財産を提供することができます。 ●信託の設定ができる
遺言によって、信託銀行や信託できる機関を指定し、そこに財産を預けて、管理・運用をしてもらうことができます。

3.身分に関すること
●未成年者の後見人などの指定
未成年に関しては、後見人や後見監督人を遺言で指定することができます。ただし、ほかに親権者がいない場合に限ります。
●非嫡出子の認知ができる
生前でもできますが、遺言でも婚姻外によって生まれた子供(胎児も含む)を認知することができます。認知された非嫡出子は、財産を相続する権利が発生します。

4.遺言できないこと
●結婚や離婚などに関すること
結婚、離婚は双方の合意がなければ成立しないものなので、遺言によりって結婚、離婚を相手に強いることはできません。また、遺産を分与したくないために、遺言によって親子の緑を被相続人から一方的に切ることも、同様に認められません(相続人の廃除にあたる場合はのぞきます)。
●養子縁組みに関すること
養子縁組に関する事は、双方の同意が必要です。遺言により縁組したり、解消する事は認められません。
●遺体解剖や臓器移植にかんする事遺言としての法的拘束力はなく、遺族が反対すれば無効となります。

2007年9月14日金曜日

超高層マンションと住環境

1. 一般的な問題点
日常生活に視点を移すと、内廊下型のものでは空調の不備から夏場は玄関からエレベーターに乗るまでに汗がどっと吹き出てとても和服での外出はできないとか、玄関ドアを開けた瞬間、バルコニー側のサッシが開いていたために強風により室内ドアが吹き飛ばされたなどの設計上の問題のほか、先端の免震・制震構造の建物でも、微妙な揺れに対する「ピル酔い」を訴える例もある。日影や風や電波障害の影響範囲も広がる。
また、高層居住による高さ感覚の喪失、出不精による親子の過剰密着、幼児の自発行動の遅行などの現象が指摘されており、これらが将来、居住者の人格形成にどのような影響を与えるかは予測できない。
2. 所有形態による問題点
 超高層マンションの所有形態による問題は、一部を除いて、複合用途形態をとっていることにある。
 多くの場合、3階までの低層部は店舗、事業所が占め、さらに自治体のコミュニティ施設が併設されていることも珍しくない。また、地下駐車場が設けられていることが多い。超高層マンションが至便な場所に立地し、再開発事業や市街地整備促進事業に拠っていることの結果である。また、低層階住戸を低減させる販売上の意図が働いている。低層部は旧地権者が大口所有や開発時の事業主体が所有する場合もある。また、数棟からなる団地形態をとる場合、一棟だけを事業主体が一括所有し、賃貸棟とする場合もある。つまり、団地形態をとる場合には複合用途区分に、さらに複雑な権利区分が加わる。例えば、地下駐車場、アスレチックルーム、談話室などは、構造的に区画され、独立した用途をもっており、容易に専有部分になり得る。

3. 管理形態による問題点
 超高層マンションの複雑な所有形態に対して、近年、分譲されたものは、「マンション標準管理規約」の複合用途型、団地型に準拠して管理規約を設定している。しかし、1990年前後までに供給されたものでは用途区分が管理規約で厳密に規定されていなかったり、「マンション榛準管理規約(団地型)」にいう団地共用、棟共用の概念を明確にしていなかったりするものも珍しくない。管理組合内部にさまざまな課題を内在させていることをも示している。
 ちなみに、団地型・複合用途塑超高層マンションのひとつの典型では、まず団地管理組合を置き、棟ごとの規模が大きいので棟ごとに管理者を選任し、棟別管理組合を設置した上で、用途別管理組合、または部会を構成する。ところが、団地型であっても棟共用の区分がなく、棟別管理組合を設置していない場合は、往々にして棟ごとの意見を調整することが容易ではなく、全体合意を図ることの困難である。
 また、単棟型・複合用途型超高層マンションで用途別管理組合、または部会がない場合、住宅部分の所有者が事業所・店舗などの「一部共用部分」の管理に関わり、事業所・店舗の所有者が「住宅共用部分」の管理に関わることになり、ここでも、それぞれの利害の調整が容易ではない。
 団地管理組合を置き、棟別管理組合を設置した上で、用途別管理組合、または部会を構成する場合でも、マンション全体の管理を円滑に進めていくにはさまざまな課題がある。用途別運営を徹底することは「一部共用部分」ごとの個別性を高める結果となり、全体としての統制を維持できない。

4 住環境としての高層マンション
 環境適応力という点から見ると、問題となる年齢層・時期は、適応力が未熟な乳幼児・子ども、適応力が低下しつつある高齢者、そして胎児への影響を含めて生理的・心理的に微妙な時期にある妊産婦の三つである。
 高齢者にとっては、高層集合住宅はエレベーターを利用して移動が容易であること、都市の利便性から歓迎され、都心の超高層マンションヘの回帰が進んでいる。この高齢者の視点はさらに強調されるであろう。
 高層居住の母子の健康影響に関する研究は、欧米ではすでに1960年代後半から行われ、高層居住に対しては賛否両論があるが、居住者の生活への影響の面から、一部のヨーロッパ諸国では高層住宅そのものが新たに建てられなくなったところもある。 
 一般の育児環境と違う、20階以上を想定した“超高層”という点であるが、高さにして50~60m程度以上ということになるが気象環境としてみるならば、気温は殆ど地上と変わらず、気圧も地上に比べてせいぜい8~10ヘクトパスカル程度低いだけである。風が強く、窓を開けにくい、洗濯物の出し入れが大変など、生活に微妙に影響する。消防車のはしごも届きにくい高さであるが、これらの条件が生理的に直接、人体に影響を及ぼすことは考えにくい。
高層居住の特性と題点。
(1)居住者が外出しにくい
(2)乳幼児の成長発達がゆがめられやすい
(3)緊急時の避難が難しい
(4)事故、犯罪への不安感が強い
(5)住環境ストレスを受けやすい
(6)母子間の心理的密着過剰を起こしやすい。
(7)生活行動(行動生態)に変化を起こす0
 高層住宅ではほとんどの場合、外出にはエレベーター(EV)を使わざるを得ない。大人は自分で外出できるが、背丈の小さな幼少児はEVボタンを押せないため、親と一緒でなければ外に出られない。親がこまめに出ればよいが、出不精であると子どもも外出ができず、遊びにもいけない。高層階居住による心理的開放感や優越感、眺望のよさを好み、他人との付き合いを好まない親の場合はさらに外出しなくなり、したがってそのしわ寄せは子どもにいく。そして、EV内犯罪や子どもが関わる犯罪・事件が頻繁に報じられるようになると、親も子どももあまり外出をしなくなってきた。子どもの成長発達の面から考えると良い影響があるとは考えられない。高層団地の幼稚園児の母親約600人に対して行った調査によれば、61%の母親はEVにのる際に何らかの不安を感じ、さらにそのうち約60%はEV内の犯罪や痴漢を気にしていることがわかった。
 高層居住児の生活習慣の自立の遅れを指摘し、その原因として外出不足に基づく、母子間の心理的密着過があげられる。社会状況により外出しなくなり、乳幼児の成長発達の遅れが現れている。
 高層住宅が生理的に直接、子どもに影響するとは考えにいが、行動や心理学的影響が問題となる。高層住宅のとりわけ高層階に住む子どもは外出せず、外出しにくい環境にある。小学校や中学校で、たった教室が1階にあるか、2階か3階にあるかというだけで子どもたちの外出頻度は大きく異なる。休み時間などに3階の子どもたちは校庭にあまり出てこない。
外出しにくい環境は母子を高層空間に閉じ込める、母親と子どもの聞には過度の物理的、心理的密着状態がうまれ、子どもの心理的・精神的な自立が遅れ、成長発達の遅れも出てくる。
 高層居住の影響を考えなければならない層として妊産婦がある。高層居住は外出不足を招きやすいことから妊婦、胎児への影響を示唆する報告もある。高層群では流早産や死産が多いという報告も一部にあるが、まだ科学的な裏づけが十分ではない。東京都内の高層集合住宅地区で行った研究では、例えば、生下時体重を高層(n=72).低層(n=166)、戸建(n=74)についてみると、高層(3,087g)>低層(3,058g)>戸建(2,996g)となり、高層群のほうが生下時体重は大きい傾向にある。出産予定日は、集合住宅群は戸建群よりも“予定日通り”の割合は小さく集合住宅でも、高層群は低層群より“予定日どおり”は少なく、“早い”か“遅い”に分けられる傾向があった。ストレス対策として、お酒やタバコに頼る母親についても併せて考えていかなければならない。なお生理痛・生理不順の頻度について、同じ高層団地に住む幼稚園児の母親(n=531)と保育園児の母親(n=326)を比較すると、幼稚園児の母親では高層群にその頻度が高い傾向があり、逆に幼稚園児の母親では低層群にその頻度が高い傾向が見られている。これらの差異については、生活行動、ライフスタイルなどの因子の影響を含めて更に分析を要する。
 子どもは高いところが好きである。高層住宅に住む場合は高所感覚に麻痺した子どもは好奇心とあいまってベランダの柵にまたがったり(いわゆる高所平気症)、高所から物を投げ落とす辛がある。転落事故や、落下物事故が起こるまでその危険性を実感できない。1995年11月に大阪で起こった、高層階からの消火器投げ落としによる女児の死亡事件などはこれを象徴する事件である。
高層住宅という環境における集団生活への不適応は「住環境ストレス」という形で表れ、その処理の仕方によっては育児にも影響する。周辺への騒音・振動に気を遣うあまり、家の中では子どもを静かに遊ばせ、高層集合団地では園に行っても周辺住民に気をつかって自由に大声も出せない。このような環境下で、子どもたちが本来もっているエネルギーのはけ口はいったいどこに求められるのだろうか。TVに釘付けになり、ゲームでバーチャルの世界に浸る不活発な子ども、協調性のない乱暴な子どもが出てくる背景はこんな環境にあるのかもしれない

第3節 高層マンションの今後
高層マンションが将来ビのように変貌するかを予測するには十分時間経過していないため、多くの人々の不安が表面化し社会化する前に大量の超高層ストックが広範囲こ形成されつつある。
 具体的には、①超高層化がもたらす居住者への健康影響、②大量化した超高層住のストックの都市環境およぴマンション中古市場に与える影響③超高層住宅であるが故にかかえる維持管理上の問題。
 地球環境の視点から都市を見直すると、建物を高層化して緑地の増大を図ることは放出エネルギーの集約につながる。しかし、実際の超高層マンションによる市街地再開発では、既存市街地のなかに容積率を緩和させて人口密度を高め、エネルギーの放出を助長させている。急激な人口流入によるインフラの整備も自治体にとって大きな課題となっている。これに加えて、本管理上の課題、個の生活上の問題が潜在しているのである。
 さらには、超高層マンションが建つことによる周辺に及ぼす影響も無視することができない。

2007年9月11日火曜日

地域貢献型の不動産活用

地域貢献型の不動産活用がこれからのキーワードとなるのでしよう。
日本は高齢化社会に突入し高齢者人口の増加は急激なものがあります。しかし、現時点の賃貸住宅需要の絶対数では、若年層が多いことも事実です。核家族化が急速に進む中賃貸需要の嵩上げがされています。高齢者専用、優先住宅の提案がされるケースが多く見受けられます。自立高齢者専用「高齢者入居可」というだけで、何の人的サービス・介護・ケアもない住宅、「要介護になったら退去」条件付きの施設等では高齢入居者にとって全く魅力がありません。要介護高齢者専用、要介護専用施設は最早「住宅」ではありません。これからの賃貸住宅はソフト・ハード両面に相応の投資をしないと競争力の無いものになってしまいます。少子高齢化の逆風に対する方策のひとつに高齢者住宅事業があります。しかし既存の事業形態はリスクも大きく、具体的な取り組みとなるとさまざまなジレンマがあり、決断の要素が難しい側面があります。高齢者専用住宅、家賃補助制度があったとしても、10年~20年後に賃貸住宅はどうなるのでしょう。補助制度がなくなり、居住者の高齢化が進み、設備の老朽化が顕著となる事を予測するならリスクの高い事業だと言わざるを得ません。高齢者が増加するから高齢者の入居を推進する賃貸住宅を建てる、それだけで良いのでしょうか?
その中で、福祉長屋(コミュニティハイツ事業)は、通常の賃貸マンション事業の形態を維持したまま、高齢者需要をプラスアルファできる“第3の選択肢”となるといえます。賃貸住宅の一室をNPOが借り受け、NPOがテナントとして高齢入居者を支援するのがコミュニティハイツのしくみです。NPOは単に当該賃貸住宅の入居者のためだけに事務所を構えるのではなく、地域の活動拠点として運用します。これが、リーズナブルな入居者費用と地域資源を活かしたバックアップ体制をうみます。コミュニティハイツ事業は、介護・生活支援事業と不動産事業を分離していますので、オーナーは福祉事業に関わる法的・経済的リスクを負いません。そして、地域貢献のためのシステムを提供することになるのです。まだまだ、器だけを作る有効活用提案がなされている、今、新発想が必要かも知れません。

2007年9月8日土曜日

借地権のリバースモゲジ化

高齢者借地人は、古い住宅での年金暮らしを強いられています。厚生年金に加入していて、生活に困らないだけの年金収入がある借地人もいますが、自営業のため基礎年金収入しかない場合や年金の加入もしていない借地人は、賃料の支払いさえままならないということが多々見受けられます。一方では、子供がいても自分の住宅ローンやその子供の教育資金の捻出で手いっぱいで、親の面倒をみられるような状態ではないといったケースがほとんどです。今後、問題となる借地権を利用したリバースモゲジの可能性を検討する必要が生じています。自治体が住民の住宅を担保として生活資金の貸付事業を行う、いわゆる逆住宅ローンというのは知っているかもしれません。しかしこれが、借地とどういう関係があるのかと訝しがるかもしれません。自治体は一定条件のもとに住宅等を担保として資金を貸し付け、将来において清算するシステムをリバースモゲジと言います。この自治体の代わりに、地主が自分の貸付地(借地人からは借地権付建物)の将来における確実な返還を目的として、借地権付建物を担保として、借地人に資金を貸し付けることが可能です。
 地主が借地人の生活を支援することで、借地人と地主の利益の均衡を図ることができます。この方法は借地人に子供等の相続人がいても将来、借地人が死亡した際に、当該借地権付建物を相続しないことを前提としています。核家族化する中で、両親の自宅敷地の借地権を相続する必要性が薄れてきています。
①建物に抵当権等の担保権を設定して、一定額を地主が貸し付ける方法です。地代が仮に月額24,000円とすれば、10年使用しても2,880,000円です。15,120,000円の貸付であれば、地代を払っても月額102,000円を生活費に充てることができるようになります。
15,120,000円 - 2,880,000円 ÷ 120ヶ月 = 102,000円10年内に清算が必要となる場合は、地主は担保権を実行して清算する事となります。地主にとっては、将来の借地権買い戻し資金を提供することになります。
②建物を買い取り借家契約に変更する方法借地権付建物を地主が時価で買い取り、建物名義を地主に変更し、借地権を消滅させる方法です。建物の賃貸借の場合通常2年乃至3年の契約が一般的ですが、この場合は、10年程度の長期契約または定期借家にする必要があります。また、家賃設定も通常家賃ではなく地代に建物等の固定資産税をプラスした程度の低い家賃設定にすることになります。借地権を明け渡し期間限定して取り戻すことになります。普通借地権の定期借地権化と考えられます。③定期借地権の建物買取り型の場合に、建物買い取り金額と家賃を相殺していく方法によりスムーズに住宅のリバースモゲジ化が可能となります。将来の生活安定を視野に入れた住宅取得について考えて見てはどうでしょうか。

2007年9月6日木曜日

尺貫法による地積

尺貫法による地積について、土地台帳の地積から説明します。
なお、1間=6尺(約1.818m)平方が1坪(又は1歩)であります。
1m=0.55間、1m=3.3尺 1㎡=0.3025坪が尺貫法とメートル法の換算の基準となります。

1.宅地、鉱泉地の地積
地目が宅地又は鉱泉地の場合とその他の地
目の場合とで、地積の表記方法に相違があります。
地目が宅地、鉱泉地の場合は、坪(ツボ)、
合(ゴウ)、勺(シャク)を単位とし、1坪=10合、1合=10勺である。坪の上の単位はなく、勺未満の端数は切り捨てる。
たとえば、123.45坪なら、123坪4合5勺となります。
これを平方メートルに換算するには、1㎡=0.3025坪にて換算します。
123.45坪÷0.3025=408.099173・・・㎡

2.宅地、鉱泉地以外の地積
地目が宅地又は鉱泉地以外の場合は、歩
(ブ)、畝(セ)、反(タン)、町(チョウ)で、30歩=1畝(10進法でないことに注意)、10畝=1反、10反=1町である。町の上の単位はなく、歩未満の端数は切り捨てる。
ただし、一筆の地積が1歩未満の場合は、
1歩=10合、1合=10勺として、勺未満の端数は切り捨てる。
なお、「反」を「段」と表示したものもあ
った。
たとえば、1町1反1畝10歩であれば、
1町=3000歩、1反=300歩、1畝=30歩で、3000+300+30+10=3340歩=3340坪ということになる。
これを平方メートルに変換するには、
3340歩(坪)÷0.3025=11041.322314・・・㎡

3.実際の換算方法
それでは、実際に尺貫法とメートル法の換
算方法を記載します。
① 平方メートル → 坪
456.12㎡の場合
456.12㎡×0.3025=137.9763坪
② 坪 → 平方メートル
101.45坪の場合
101.45坪÷0.3025=335.371900826・・・㎡

<注意事項>
坪、平方メートルを換算するのに3.
305785(0.3025の逆数)で計算する方法もありますが、この3.305785・・・は桁数が多くなると有効数字の関係で正確に換算できませんので、端数のない0.3025での計算をおすすめします。
なお、平方メートル÷400×12
1で計算した場合は平方メートルに0.3025を掛けたのと同一の答えになります。
③ 間 → メートル
51.89間の場合
51.89間×0.55=28.5395m
④ メートル → 間
34.45mの場合
34.45 m÷0.55=62.6363636・・・間

<注意事項>
間、メートルを換算するのに1.818(0.55の逆数)で計算する方法もありますが、この1.81818・・・は桁数が多くなると有効数字の関係で正確に換算できませんので、端数のない0.55での計算をおすすめします。

2007年9月1日土曜日

物納改正ポイント

●物納改正のポイント
○物納不適格財産の明確化
 非上場株や市街化調整区域内の農地、山林も条件により可能になりました。
○物納手続きの迅速化
・物納申請から原則3カ月以内に許可または却下が決定されます。反対に税務当局は3カ月以内に結論を出さなければなりません。必要書類、条件性の可能性等に不備があった場合には却下される可能性が高まったと言えます。
・物納手続きに必要な書類を原則申請時に提出しなければなりません。間に合わない場合は3カ月ごとの延長届けにより、最長1年まで延長が可能です。例えば、隣接地主の相続等で境界確認等の目処がたたない場合等は却下されてしまいます。
○延納中納付困難となった場合は物納申請が可能になりました。
・物納が認められるのは、物納は申請時の評価額となります。延納困難な場合とは経済環境の悪化等が考えられるか、相続税額はそのままで、下落した評価での物納となるのです。
○物納申請期間中、利子税の負担が発生します。

適用期日
 これらの改正は、平成18年4月1日以後に相続または遺贈により取得した財産に係る相続税から適用されます。
・平成18年4月1日以前の相続には適用が無く、現在進行中の相続破産を助ける手段は排除されたと言えます。

物納不適格財産、劣後財産が明確となりました。明確にした理由は短期間に物納の許可、却下を決定するために、事務的処理を可能にしたものです。境界が特定できていない財産は物納不適格財産です。しかるに、一年以内に境界の特定ができなければ却下できると言うことです。また、物納劣後財産の明示についても、物納適格財産があれば却下できる事を明言したものだと言えます。スケープボードは税務当局に握られたといえます。

*物納不適格財産の例
○国が完全な所有権を取得できない財産、抵当権付の不動産、所有権の帰属が係争中の財産。
○境界が特定できない財産、借地契約の効力のおよぶ範囲が特定できない財産及び境界線が明確でない土地(ただし、山林は原則として測量不要)、借地権の及ぶ範囲が不明確な貸地。
○通常、他の財産と一体で管理処分される財産で単独で処分することが不適当なもの、共有財産、稼働工場の一部など。
○物納財産に債務が付随することにより負担が国に移転することとなる財産、敷金等の債務を国が負担しなければならなくなる貸地、貸家等(敷金の精算を行えば可能となります)。
○訴訟事件となる蓋然性が高い財産、越境している建物、契約内容が貸主に著しく不利な貸地など。
○法令等により譲渡にあたり特定の手続が求められる財産でその手続が行われないもの、証券取引法上の所要の手続きが取られていない株式、定款に譲渡制限がある株式など。

*物納劣後財産の例
○法令の規定に違反して建築した建物およびその敷地
○接道条件を充足していない土地(無道路地)
○地上権、永小作権その他の用益権の設定されている土地
○市街化調整区域内の土地等
○都市計画法に基づく開発許可が得られない道路条件の土地
○法令・条例の規定により、物納申請地の大部分に建築制限が課される土地
○土地区画整理事業の施行地内にある土地で、仮換地が指定されていないもの
○生産緑地の指定を受けている農地および農業振興地域内の農地
○維持または管理に特殊技能を要する劇場、工場、浴場その他大建築物およびその敷地
○市街化区域外の山林および入会慣習のある土地
○忌み地
○相続人が居住または事業の用に供している家屋および土地
○休眠会社の株式

①物納申請
 物納の許可を申請する場合には、相続税の納期限または納付すべき日までに物納申請書、金銭納付を困難とする理由書、物納財産目録等を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。また、物納申請財産の種類により別途必要畜類を提出する必要があります。例えば、土地の場合、公図、所在図、土地登記簿謄本、地積測量図、境界線に関する確認書等を提出する事となります。これらの提出書類は物納財産を国が収納するために必要な書類として物納財産の種類に応じ登記事項証明書(登記簿謄本)、測量図、境界確認書等一定の書類が定められ、物納申請者はこれらの書類を物納申請時に提出しなければならないのです。提出がなければ却下できると言うことなのです。その意味で、補正期日が指定され、補正がなされなかった場合には物納申請を取り下げたとみなすとしています。

②必要書類の補正等
 提出した物納手続きの必要書類の記載に不備があった場合、または物納手続きに必要な書類の提出がなかった場合には、税務署長はこれらの必要書類の補正または提出を申請者に請求する。この場合に請求後20日以内に物納手続きに必要な書類につき補正または提出がされないと、物納申請は取り下げたものとみなされる。また、期限内に当該措置がされなかった場合には、物納申請を取り下げたとみなされます。

③申請者による書類提出期限の延長届け、物納申請財潅が多数あるなど物納手続きに必要な書類の準備や廃材の撤去等の措置に時間を要する場合には、上記①の場合は物納申請期限から、また上記②の場合は必要書類の補正等の請求があった日から、それぞれ最長で1年間延長することができる。
 ただし、一度に延長申請できる期間は3カ月までとし、期間満了時には1年に達するまで再届出をしなければなりません。1年以内にできなければ取り下げたとみなされるのです。

④条件付許可
 税務署長は、物納を許可する際に必要に応じ後日、汚染地であったことが判明した場合に必要な措置を講ずること、有価証券を売却するために必要な書類を提出すること等条件を付けることができるとしています。
 この条件に違反した場合には、5年以内にかぎり物納の許可を取り消すことができます。

 指定区域に該当してなくても更地を物納する際は、別途「土壌汚染の除去等の措置に要した費用の確認書」の提出が求められる場合があり、土壌汚染が判明し、その土壌汚染の除去等の費用を後日汚染原因者または納税者が負担する可能性があります。埋蔵物について同様の処理がされていることから、物納が終わっても気が気でないといえます。

初審査期間の法定化等
①税務署長は、物納の許可または却下を物納申請期限から3カ月以内に行う事となりました。
 ただし、物納財産が多数となるなど調査等に相当の期間を要すると見込まれる場合には、6カ月以内(横雪など特別な事情は9カ月以内)とすることができます。
②物納手続きに必要な書類の提出期限が申請者の届出により延長された場合の①の審査期間は、その届出の延長期間満了日より起算される。
③物納手続きに必要な書類の補正、提出の請求または廃材の撤去等の措置の請求に要する期間は審査期間に含まれないとされています。
④審査期間内に許可または却下しない場合には、物納を許可したものとみなされるため、審査期間内に一定の結論をだすこととなり、補正期間経過後は却下、取り下げたものとみなす事となるのです。

□却下された者の延納申請
 物納申請した者について、延納による納付が可能であることから、物納申請の全部または一部が却下された場合には20日以内に延納申請を行うことができます。

延納中の物納選択の創設
 相続税を延納中の者が資力状況の変更等により延納が困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り延納税額から納期限の到来した分納税額を控除した残額を限度として、物納を選択することができる制度が創設されました。この場合の物納財産の収納価額は、物納申請時の価額であり、相続申告時の価額ではありません。

③収納措置
 税務署長は1年以内に期限を定めて廃材の撤去その他の物納財産を収納するために必要な措置をなすことを納税者に請求することができます。

物納申請された財産が物納不適格財産に該当する場合、または物納劣後財産に該当する場合で他に物納適格財産があるときは、税務署長は物納申請を却下する。ただし、却下の日から20日以内に一度にかぎり物納の再申請をすることができます。新しい制度では、税務当局により物納財産の指定を受ける事となりかねないのです。

物納申請財産の必要書類は一年以内に提出が必要書類、物納手続きの明確化により物納処理が迅速化されることになるが、その分納税者も物納書頬の準備は早急に手当をしなければ却下となる可能性が高まっています。

物納手続きが明確にされたが、税務当局が期日までに指示を出さない場合は物納を許可したとみなされることから、期限までに必要書類の提出が無い場合には却下される可能性が高まったといえる。不動産の物納条件整備は生前より行わなければ間に合わない、資産家の財産管理において納税リスクが増大したと考えるべきである。生前からの財産管理の手法としての物納条件整備の提案が必要不可欠となるであろう。物納制度改正は新しいビジネスチャンスを生み出したと言える。

2007年8月30日木曜日

底地は不良資産?

底地は不良資産?貸地は戻ってこない!土地を貸してしまったら、取られたのと同じだと良く言われます。また、瑕疵地・不良資産とのレッテルを貼られているのも事実です。しかし、一定水準の地代が確保でき、処分(物納)が可能であれば、建物(マンション・アパート)の様に減耗する事もなく、永続的に借りつづけてくれる財産です。すなわち、安定的に収益を生みつづける財産なのです。
 アパート・マンション投資よりも底地投資の方がリスクも少なく有利だと考えられます。賃家は老朽化し、維持修繕費用もばかになりません。底地(土地)は老朽化することもなく、永続するのです。たとえ、借地人が死亡しても土地は残ります。借地人が借地の返還を望んだとしても、更地として帰ってくる事となります。建替え承諾料、名義書換料、更新料などを含めて考えると、こんな良い投資はないのです。
 例えば、底地を相続税評価額をベースにした、期待利回りを確保できる期待投資額以下で購入したとしましよう。物件条件を満たしていれば、地価が安定した現在では、購入価格を下回る事は少ないのです。
 それでは、底地購入金額はいくらが適正なのか、その基本には、物納条件整備費用・購入価額・地代水準・公租公課があります。
 底地の物納条件整備としては、境界を明確にするために、地積測量を行い、地積更正をする必要があります。この費用が大きな部分を占めます。隣接地主とは境界の確認を行い、借地人別に分筆する必要があります。また、契約書の整備、地代の水準の確保等が必要になります。これらの費用を見積るためには、物納条件整備の可能性、物納条件整備の内容を把握していなければなりません。
 普通借地権の地代の公租公課に対する倍率は住宅用地で4.2倍~3.1倍、非住宅用地で3.5倍~2.4倍といわれています。又、東京制裁の調停成立状況からも、住宅用地3.1倍、非住宅用地2.4倍とされています。地代は公租公課の2~3倍で妥当であると考えられています。
又、物納条件整備の中で、適正な地代水準が必要となります。東京では相続税評価額(更地)の0.8%程度・大阪では相続税評価額(更地)の1%が基本となります。そして、この水準の70%以下であれば物納は困難であると判断してください。

期待利回投資額の計算
相続税評価額(更地) 1億   5区画
相続税評価額(底地) 4千万
☆ 全て住宅用地として利用
☆ 投資期間10年
☆ 10年後に相続税表額(底地)の90%・・・3600万円で売却

  期待利回り     5%
  固定資産税額   
  1億÷80%×70%=8750万
               8750万×1.7%÷6=247,916/年

  地代          1億×0.8%=80万

                      (80-25)+(3600-X)
               0.05≧             10   
                             X
期待利回投資額の金額は2766万となる。

物納条件整備費用を考慮して、総額で投資すべき金額は2766円が上限であると考えられるのです。

底地購入の手法としては、① 共有持分② 法人で購入③ 特定目的会社④ 匿名組合⑤ 特定目的貸付⑥ 特別目的会社等の様々方法がありますが、投資物件として購入するのには、物納条件整備の手法を知り尽くし、物納条件整備を実際に行えるノウハウを有する企業の企画したものでないと、リスクが大きくなります。投資利回りだけ求めると、それこそ、不良資産を背負い込む事となります。また、質問の様に直接底地を購入する場合には、物納条件整備のリスクや費用を検討しなければなりません。この場合も、専門のコンサルティング会社に調査を依頼すべきでしょう。

最後に、底地投資のターゲットは旧法(平成4年8月1日)以前の契約の底地です。旧法には、様々な規制があります。その典型は堅固・非堅固の違いにより、契約期間が違います。利用目的が特定してあれば、利用目的変更、用途変更による条件変更として、土地代値上や承諾料をとる事が可能となります。今までとは逆発想ですが、拘束の多い物ほど利益を生むのです。物納条件整備について、費用対効果の検討が必要となります。最低不動産価値を実現化するための費用として考えて、期待利回り投資額以上の費用を投下する事マイナスとなります。その分岐点は期待利回投資計算式によります。

個人信託を利用した相続対策

信託のいろいろな機能

(1) 転換機能とは信託財産が信託受益権という権利となり、信託の目的に応じた形に転換できます。 たとえば、不動産を信託することにより、収益受益権と元本受益権に転換されます。収益受益権とは信託した財産からの収益を受け取る権利です。元本受益権は信託財産を戻してもらえる権利です。それぞれを別々に流通させ、相続させることができます。信託により不動産の流動化が可能となるのです。
(2) 意思凍結機能とは信託設定時における委託者の意思を、委託者の意思能力喪失や死亡という事情の変化にかかわらず、長期間にわたって維持できます。賃貸経営の安定や事業の継続正を守ることができます。自己の意志に基づく遺産分割や事業承継が可能となるのです。
(3) 受益者連結機能とは委託者によって設定された信託目的を長期間固定しつつ、その信託目的に沿って、信託受益権を複数の受益者に連続して帰属させることができます。遺留分の問題は別として、配偶者に収益受益権をすべて帰属させ、配偶者の生活安定を図ることができ、また、連続して事業承継者に帰属させることができます。また、事業の継続性からすれば、相続等の要因から分離でき信託期間中は事業が継続され続けます。
(4) 利益分配機能とは信託の元本及び収益を受益者に対して帰属させるこ とを目的としています。この受益権者の帰属の指定により自己の意志に基づく資産承継が可能となるのです。
(5) 倒産隔離機能とは信託財産が委託者および受託者の倒産の影響を受けません。信託財産は守られた財産として存在します。

個人信託で解決できること

(1) 老後の生活を子供達の世話になりたくない。病気や認知症になった場合には、自分の財産から治療費 や、介護費を支払いたい。そして、自分がもし認知症になってしまったら、悪徳業者などから大切な財産を守りたい。

(2) 貸地や貸家を持っているが、数十年も契約が続いている貸地・貸家が大半であり、契約の時期や内容   もバラバラだし、賃借人に相続が発生しているものもあり、管理が大変だ。相続が発生した場合、子供達は仕事があるし、遠方で管理ができなくなるので、一括して管理、運営を頼み、収益だけを帰属させたい。
(3) 私が所有している貸地、貸家を整理処分し、収益性の高いものに買い換えたいと考えているが、貸地、貸家の整理処分を行うのにあたって、自分ではできないし、紛争に巻き込まれたくない。安心で
きる第三者に任してしまいたい。
(4) 1人息子が心身に障害があり、私が死んだ後、財産の管理が出来ない。私の死後、私に代わって息子のために財産を管理して、息子の生活、療養についての不安を解決したい。

これらについては、信託の利用により解決することが可能となります。土地の有効活用等の事業化と
同時に相続の方法までを検討しておくべきです。新しい視点での相続対策の検討をおすすめいたします。