2012年9月28日金曜日

借地借家法38条2項書面(最高裁判例)

平成22年(受)第1209号 建物明渡請求事件【平成24年9月13日 第一小法廷判決】

判旨
借地借家法38条2項所定の書面を交付しての説明がないから,本件賃貸借は定期建物賃貸借に当たらない。



適法に確定した事実関係の概要。

* 甲は,不動産賃貸等を業とする会社である。
*乙は,貸室の経営等を業とする会社で,本件建物において外国人向けの短期滞在型宿泊施設を営んでいる。

甲乙は,平成15年7月18日,「定期建物賃貸借契約書」と題する書面(以下「本件契約書」という。)を取り交わし,期間を同日から平成20年7月17日まで,賃料を月額90万円として,本件建物につき賃貸借契約を締結した。

本件契約書には,本件賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了する旨の条項(以下「本件定期借家条項」という。)がある。

甲は,本件賃貸借の締結に先立つ平成15年7月上旬頃,乙に対し,本件賃貸借の期間を5年とし,本件定期借家条項と同内容の記載をした本件契約書の原案を送付し,乙は,同原案を検討した。

甲は,平成19年7月24日,上告人に対し,本件賃貸借は期間の満了により終了する旨の通知をした。

理由
期間の定めがある建物の賃貸借につき契約の更新がないこととする旨の定めは,公正証書による等書面によって契約をする場合に限りすることができ(借地借家法38条1項),そのような賃貸借をしようとするときは,賃貸人は,あらかじめ,賃借人に対し,当該賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならず(借地借家法38条2項),賃貸人が当該説明をしなかったときは,契約の更新がないこととする旨の定めは無効となる(借地借家法38条条3項)。


紛争の発生を未然に防止しようとする借地借家法38条2項の趣旨を考慮すると,上記書面の交付を要するか否かについては,当該契約の締結に至る経緯,当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく,形式的,画一的に取り扱うのが相当である。

借地借家法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。

本件定期借家条項の無効の主張が信義則に反するとまで評価し得るような事情があるともうかがわれない。本件定期借家条項は無効というべきであるから,本件賃貸借は,定期建物賃貸借に当たらず,約定期間の経過後,期間の定めがない賃貸借として更新されたこととなる(借地借家法26条1項)。

定期借家契約における定期借家で有る旨の説明書面の交付、説明は、形式的、画一的に判断される。説明書面の交付、説明は賃貸人にかせられており、くれぐれもお忘れ無く!!