2012年10月16日火曜日

成年後見人と刑法244条1項の責任(最高裁判例)

平成24年(あ)第878号 業務上横領被告事件
平成24年10月9日 第二小法廷決定

量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

事由
家庭裁判所から選任された成年後見人であり,かつ,成年被後見人の養父である者が,後見の事務として業務上預かり保管中の成年被後見人の預貯金を引き出して横領したという業務上横領の事案があり、成年被後見人の養父であることは,刑法255条が準用する同法244条1項の趣旨に鑑み,量刑判断に当たり酌むべき事情であると主張していたが認められなかった。

家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって,成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから,成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより,その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではないというべきである(最高裁平成19年(あ)第1230号同20年2月18日第一小法廷決定・刑集62巻2号37頁参照)。

私見
親族による成年後見制度の悪用、落とし穴に対しする警鐘である。任意後見制度においても、親族による任意後見を推奨する場合がいまだに多い、そのおおくの理由には費用面が言われる。財産管理、保全等について専門的知識のない者が、親族であるとの理由だけで後見人適格で有るかは疑問である。最高裁の判例は氷山の一角であり、成年後見制度において守るべきは何かをもう一度考えなければならない。

信託を利用した、専門家による、被成年後見人の保護、任意後見制度の普及が望まれるのではないか?

刑法244条(親族間の犯罪に関する特例)

1項  配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3項 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

2012年9月28日金曜日

借地借家法38条2項書面(最高裁判例)

平成22年(受)第1209号 建物明渡請求事件【平成24年9月13日 第一小法廷判決】

判旨
借地借家法38条2項所定の書面を交付しての説明がないから,本件賃貸借は定期建物賃貸借に当たらない。



適法に確定した事実関係の概要。

* 甲は,不動産賃貸等を業とする会社である。
*乙は,貸室の経営等を業とする会社で,本件建物において外国人向けの短期滞在型宿泊施設を営んでいる。

甲乙は,平成15年7月18日,「定期建物賃貸借契約書」と題する書面(以下「本件契約書」という。)を取り交わし,期間を同日から平成20年7月17日まで,賃料を月額90万円として,本件建物につき賃貸借契約を締結した。

本件契約書には,本件賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了する旨の条項(以下「本件定期借家条項」という。)がある。

甲は,本件賃貸借の締結に先立つ平成15年7月上旬頃,乙に対し,本件賃貸借の期間を5年とし,本件定期借家条項と同内容の記載をした本件契約書の原案を送付し,乙は,同原案を検討した。

甲は,平成19年7月24日,上告人に対し,本件賃貸借は期間の満了により終了する旨の通知をした。

理由
期間の定めがある建物の賃貸借につき契約の更新がないこととする旨の定めは,公正証書による等書面によって契約をする場合に限りすることができ(借地借家法38条1項),そのような賃貸借をしようとするときは,賃貸人は,あらかじめ,賃借人に対し,当該賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならず(借地借家法38条2項),賃貸人が当該説明をしなかったときは,契約の更新がないこととする旨の定めは無効となる(借地借家法38条条3項)。


紛争の発生を未然に防止しようとする借地借家法38条2項の趣旨を考慮すると,上記書面の交付を要するか否かについては,当該契約の締結に至る経緯,当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく,形式的,画一的に取り扱うのが相当である。

借地借家法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。

本件定期借家条項の無効の主張が信義則に反するとまで評価し得るような事情があるともうかがわれない。本件定期借家条項は無効というべきであるから,本件賃貸借は,定期建物賃貸借に当たらず,約定期間の経過後,期間の定めがない賃貸借として更新されたこととなる(借地借家法26条1項)。

定期借家契約における定期借家で有る旨の説明書面の交付、説明は、形式的、画一的に判断される。説明書面の交付、説明は賃貸人にかせられており、くれぐれもお忘れ無く!!

2011年8月23日火曜日

借地の研究(013)

公共用地の時効取得



昭和51年1月12日最高裁判例・昭和52年4月28年最高裁判例公共様財産が長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共財産としての形態・機能を全く喪失し、その上に平穏かつ公然に占有が継続したが、そのために実際上公の目的が阻害されることもなく、公共用財産として維持する理由がなくなった場合には、その公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げないものと解するのが相当であるとしています。

私道の場合は原則として否定される。

普通財産については時効取得はありえる。

 地図訂正

公図の訂正は行政処分とはいえず、公図の記載に対して不服申し立ては認められません。

訂正の方法としては、地図に準ずる書面として所有者・利害関係人は、単独で訂正を申し出ることができます。登記官は実地に調査し誤りがあれば職権で訂正する事となります。

訂正の申出が却下された場合も、行政訴訟や行政不服審査の対象となりません。

 地積更正

地積更正の登記の場合には、登記実務により地積更正する土地の隣接する土地所有者の承諾書の添付を要求しています。法律上は明らかな根拠はありません。

関係する土地の境界について異議のないことを明らかにするものである必要があり。承諾書が真正である事を証するために、承諾者の印鑑証明の添付が要求されています。(不動産登記事務取扱手続準則89条)

その目的は、隣地所有者の権利保護と、登記官の実地調査の際の隣地所有者立ち会いに代えるものとされています。


この隣地所有者に対する承諾請求権はないとされています。昭和46年2月23日最高裁判例

隣接所有者が真正な承諾書に基づかない地積更正登記の取り消しを求めることについては、地積更正登記は、隣接土地所有者の権利義務に直接影響を及ぼす効力がないのでうったえの利益がないとしています。昭和54年3月15日最高裁判例

2011年5月11日水曜日

借地の研究(012)

袋地の通行権


 袋地とは、当該土地が他の土地に囲まれていて、公路に通じないものです。この場合、他人の囲境地を通行する権利があります。

 ただし、公路に面している場合についてですが、不特定多数の人が自由に通行できる道路の事で、公道・私道を問いません。

 判例では通路の幅員については、0.85~6mまでのものがあります。一般的には2m以下の場合が多い様です。

 最高裁判決 昭和49年4月9日によると、建築基準法43条の建物敷地の接道義務について、通路幅員の決定資料の1つに加えても良いとしています。

しかし、最高裁判決 平成11年7月13日では「単に特定の土地が接道条件を満たさないとの一事をもって、同土地の所有者のために隣接する他の土地につき、接道要件を満たすべき内容の囲境地通行権が当然に認められると解する事はできない」といいます。すなわち、接道要件は考慮の要素に入る可能性はあるとするものの、実際に考慮しなければならないとするものではないのです。

 上記判例では、建築基準法上の接道義務により両建築不可となった土地について接道義務を考慮した判断はされていません。ましてや、自動車の通行を確保する事までは認められていません。現在は現状の幅員が基準となると考えられます。


通行地役権の対抗

 最高裁判決 平成10年2月13日

「譲渡の時に承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として利用されている事が明らかであり、譲受人がその事を認識していたか、または、認識する事が可能であったときは、特段の事情がないかぎり、177条の第3者に当らない。」としています。たとえば、通路の形態とかあり通行していると解かる様な場合には対抗力のある第3者にあたらない事となります。


通行地役権の登記

 最高裁判決 平成10年12月18日

「譲受人が地役権設定登記の欠けつを主張するについて正当な利益を有する第3者にあたらず、通行地役権者が譲受人に対して、登記なくして通行地役権を対抗できる場合には、通行地役権者は、譲受人に対して、同権利に基づいて地役権設定手続を請求することができ、譲受人はこれに応ずる義務を負うものと解すべきである」としています。すなわち、通行地役権が認められる場合にはその登記請求ができることとなります。


通行の自由

 最高裁判決 平成9年12月18日

①道路位置指定を受け、現実に道路が開設されている

②通行をする日常生活上不可欠の利益を有する

③敷地所有者が通行により、通行利益を上回る著しい損害を被ることがない

2011年3月2日水曜日

借地の研究(011)

土地に関する基礎調査


  ① 検討のポイント

   A.処分が可能な土地か

     接道、地形、地積、都市施設整備状況、法的規制、環境等

   B.処分先(候補)の見通し

利用計画の想定(用途向)

候補業種、業態、企業等相手先の可能性

   C.処分の方策

    a 一括(単独)処分か、分割処分か

    b 更地渡しか、上物付か

    c 借地(底地)単独か、一体化か

    d 隣地との共同売却か、隣地追加買収売却か

    e テナント居抜か、明渡し後か

    f 許認可取得後および企画プロジェクト付か

    g 事業化後の売却か

    h 買換えか、交換か

   D.処分価格

     売出価格、成約見通し、処分コスト、税務関係、債権処理関係

   E.処分時期

     地価動向(取引動向)、路線価等、経済動向、周辺開発動向、供給関係



  対象不動産の問題点および分析

   各処分方式のケースごとのチェック項目

   ①単純売却

    A 一括売却

    B 敷地分割後一部売却

    C 一棟建物の一部売却

   ②共同売却

    A 不整形地を整形地にして売却

    B 狭小地を適正規模にして売却

    C 借地権と底地の共同売却

    D 連棟建築物(一棟の建築確認による)



   ③追加買収・隣地買収後売却

A 不整形地の追加買収

    B 狭小地を適正面積まで追加買収

    C 一体評価を上げるための隣地買収

   ④事業化後売却

    A 宅地建物取引業に抵触しないか

    B 単独売却との比較収支の検討

    C 有効利用案との比較収支の検討

⑤買換え

    A 買換えの目的

    C 税務上の留意点

     a 特定の居住用財産の買換えの特例

     b 相続取得の居住用財産の買換えの特例

     c 特定の事業用資産の買換えの特例(租特措37条1項1号買換え)

   ⑥交換

    A 交換の目的

    C 税務上の留意点

    D 底地と借地権の交換のステップ

 処分計画の策定

  ①処分の見通し

  ②処分価格

  ③処分の時期

 処分の実行

  ①売却準備

  ②査定

  ③不動産業者の選択

  ④媒介契約の選択

    A 専属専任媒介契約

    B 専任媒介契約

    C 一般媒介契約

  ⑤売却の承諾

2011年1月4日火曜日

借地の研究(010)

調査


1.調査の手順

 相当広い範囲にわたり、時間的な制約の中で行う必要がある。

 従って基本的には、調査の目的、方法を一定の方向と範囲に絞り込み効果的に。

 仮説の設定→物件調査→市場調査→事業構想の策定→企画提案書

2.仮説の概要

 用途の系統

 ①住居系

 ②事務所系

 ③店舗系

 ④余暇・宿泊系

 ⑤その他

 具体的な用途・業種

 ①住居系・・・・・賃貸マンション・アパート、社員寮、学生会館

 ②事務所系・・・・・一般事務所、貸しホール、スタジオ、専門学校

 ③店舗系・・・・・・小型スーパー、コンビニエンスストア、レストラン、飲食店、小売専門店

 ④余暇・宿泊系・・・アスレチッククラブ、カルチャーセンター、ホテル

3.物件調査

 ①物件特性(地積、敷地形状、道路幅員、接道状況、地盤高、日照、間口と奥行、上り車線か下り車線か、隣接地の状況等)

  企画提案書への対象地の概要、建物計画、事業構想、適正洋との判定に関連。

 ②地域特性(交通、周辺利便施設、街並、自然環境、都市計画事業等)

  対象エリアが発展しつつある地域か成熟した地域か、住民の富裕度・購買力等、地域の特徴を大きく把握する上で重要。

 ③法的規制(都市計画、建築規制、条例、指導要綱等)所轄官庁の担当部署での調査。

 ④権利関係(単独所有、共有、底地、借地、借家等)利害関係人からの調査。

 ⑤税金関係(印紙税、消費税、不動産所得税、登録免許税、所得税、法人税、住民税、事業所税、相続税、固定資産税、都市計画税、特別土地保有税等)

 ⑥対象地の価格

3-2.調査の留意点

 設定した仮説の用途に関係する事項。

 敷地条件

  敷地面積は仮説の施設用地として妥当か

  用途地域の制限上、仮説の用途は可能か

  妥当な床面積が確保できるか

 立地条件

  最寄り駅までの距離・所要時間

  都心・ターミナル駅との関係

  前面道路の歩行者通行量・歩行者動線との関係

  車両通行量

  仮説の施設は隣接地イメージと合致しているか

  集客力のある施設はあるか、客層

 環境条件

  競合状況

 その他

  計画地において確認すべき内容→境界石・越境物・歩道・ガードレール・出入りに障害となりうる電柱・ゴミ集積所・バス停留所等。 ライフラインの接続方向など。

  住居系の計画地においては、周辺環境。商店・金融機関・教育施設・医療関係・公園・寺社等の緑地。事務所系の計画地においては、飲食店・金融機関等。

4.市場調査

 ①住居系の調査

  情報誌と業者ヒアリングを中心に情報収集

  住宅関連情報誌の活用

  築年数・設備内容によりバラツキがあるため、数値の修正が必要。

  季節により受給に偏りがある。

  成約賃料の見極め。

  地元業者へのヒアリング

  業者によって物件の種類・地域に偏りがある。


 ②事務所系の調査(賃貸)

  情報誌の活用(HP等)

  新聞情報の整理

  賃貸仲介業者へのヒアリング(情報交換出来る関係の構築)

  地域特性の把握

  都心部・地方都市部では需要の規模が異なる。

 ③需給動向・賃貸条件の調査・分析

  賃貸供給状況

  計画地周辺の賃貸物件の供給状況を分析し企画に反映させる。

  最寄り駅または計画地を中心とした新規供給物件・既存の供給物件の分布状況および概要を調査し、傾向を分析。

  (物件の位置・駅からの距離・規模・竣工時期・グレード・テナント入居状況・付帯設備等住居系の場合は戸数・間取り等も調査する)

  賃貸需要の予測

  需要状況については供給状況と成約率・成約期間・空室率等から読みとれる。

  需要の少ない物件の原因(間取り・グレード・賃料・環境等)を調査。

  テナント系の場合はテナントの移転の事例についての理由を調査。

  適正な賃貸条件

  対象とした市場における同種、同等、同類型あるいは当該不動産と代替え可能な賃貸不動産の「空室率、成約・解約状況、新規賃貸条件、継続賃料」等の動向について市場調査と分析を行い、賃貸借の事例を中心に、当該不動産の適正な賃貸条件を設定する。

 ④分譲市場の調査・分析

  金融機関からの借入に伴う担保としての評価、等価交換の手法を採用する場合の分譲マンションの市場性の検討。

  分譲供給状況

  最寄駅あるいは計画地周辺の中古・新築マンションの供給(成約)事例を参考にし、賃貸供給状況の場合と同様の項目に成約価格(分譲価格)契約率、完売までの経過月数なども調査し、その結果計画地のマンション分譲価格を検討する。

  分譲マンション需要予測

  分譲マンション市場全体の動向と併せて、計画地周辺への需要量、購入者属性(家族構成・所得水準など)、需要の多い物件・少ない物件、それぞれの概要および特色などを調査分析する。


5.検討方向の見きわめ

 相談、調査により事業の方向性を検討する。(前述の目的に適合する事業手段を見きわめる。)

 ①有効利用

 建物を建築(収益物)したり、土地を賃貸して収益増または負担軽減(節税)対策を行う。

 ②売却

 面積的な要件から利用方法が見いだせない場合や、権利者が多く換金して分配するのが適当な場合。

 ③購入・投資

 他の事業収益との関係で、新たに償却資産(建物)を購入。

 ④権利調査

 処分用土地を捻出するために借地権者と底地権者間の調査。

 *借地権の更新の規定を理解する。

 *借地権の売却の場合の規定を理解する。

 *更新料、各種承諾料および立退料の違いを理解する。

 *借家の更新の規定を理解する。

 *確定期限付建物賃貸借の規定を理解する。

(関係資格士と相談し法的に解決)

6.その他

  周辺の状況が将来変化し、より有利な条件となることが明らかな場合や、大きなリスクが生じると判断される場合、また関係者の意思統一が出来ない場合はウェイティングとなる。

  *ウェイティング期間中も準備とスケジュール管理が必要。

2010年11月6日土曜日

借地の研究(009)

公法上の境界と私法上の境界


公法上の境界

筆を異にして隣接する土地の境目のことで、土地の所有者とは関係なく、客観的に定まっているものであり国のみが定めることができるものです。

私法上の境界

土地の所有権の範囲であり、隣接する土地の所有権の境目を意味します。

隣接の所有者により地番の境目を協定したとしても、公法上の境界を定めたことにはならないのです。公法上の境界と私法上の境が一致しないことはあり得るのです。



境界確定の当事者は土地の所有者です。借地人同士がもめていても、借地件の範囲の問題です。この違いを明確に刈る必要があります。


公図と14条地図

昭和35年の登記制度と台帳制度の一元化により、旧土地台帳が廃止された。不動産登記法14条により、登記所に現地復元性を有する地図を備え付けることとなった。しかし、この地図の整備作業が進まず、平成5年以降公図が14条(17条)地図に準ずる図面としてしりあつかわれる様になっています。

公図は作成目的が徴税のためのものであり、正確性を欠き登記法17条地図のような現地復元性を持たないが、境界確定の証拠として利用されている。しかし、公図には形成力・公定力・公示力と言った効力は認められていません。ただ、事実条の証明力が認められているにすぎないのです。判例においてもその判断はまちまちです。

国土調査と境界

昭和61年7月14日最高裁判例
地積調査は、土地の原状を調査するものであり、その結果によって境界を確定したり、形成する効力を有するものではない。調査の結果地積図が作成されたとしても、その記載どうりに境界が確定しているわけではない。

境界確定訴訟の性質

平成7年3月7日最高裁判例
公簿上特定の地番により表示される土地が隣接する場合。その境界線が事実上不明なため争いがある場合、裁判によって新たにその境界を定めることを求める訴えを提起することができる。形式的形成訴訟としている。

境界確定訴訟と所有権確認訴訟はの併合、訴えの変更は可能です。境界の問題と所有件の範囲の問題は違う問題だとの認識が必要です。

2010年10月5日火曜日

借地の研究(008)

立退料


立退料は、正当事由を補完するための条件にすぎない。すなわち、立退料を提示すれば立退が認められるものではなく、正当事由の存在が前提となっている事を注意する必要がある。

即決和解の限界

 立退において執行力の有るものとして、即決和解があるが限界があるといわれている。賃借人が真意に立退を承諾したのかである。専門等の立合いのもとに行う必要がある。



最高裁判例昭和44年5月20日

土地賃貸借につき一定の期限を設定し、賃貸借契約を解除するという、期限付合意解約は、賃借人が真実土地賃貸借を解約する意志を有すると認めるに足る合理的客観的理由があり、合意を不当とする事情の認められない限り許される。


真実の解約の意志表示とは
圧迫等を受けず、自由な意思表示であること
解約が不当な結果とならないことがあげられる。

立退料の意味

 立退料の意味については、以下の様な要素があると考えられている。立退交渉をスムーズに進めるためには、移転実費をベースに交渉を進めるべきである。なぜなら、移転実費は客観的に把握し易く、移転者にとっても納得しやすい金額がベースとなるからである。最低必要費として、他の要素をどう加味するかの問題として交渉がし易くなる。主観的な要素が切り離されて、妥協線が見えてくるのである。又、立退交渉における予算を試算する上でも有効であり、新規事業での損益分析が明確にできるのである。この資産をもとに、賃借人の意向を探る事により、立退交渉の実行のタイミングが図れる事となる。

①対価補償
 借家人に自然発生的な経済的利益を補償
②経費補償
 新たに、他の建物を借り入れるために要する費用の補償
③移転実費
 引越費用、人件費、仲介手数料、移転旅費、移転通知費



移転費用+移転後の賃料差額(←1~2年分程度の範囲の金額が妥当とした)

東京高裁 平成12年3月23日判決

移転後の賃料差額を補填する場合があるが、この基準については明確でない。

第1に、同程度の条件の賃貸事例が存在するかである。それぞれの賃貸住宅は条件が千差万別であり、比較する事が困難である。又、転出者は、より良い条件を探す事は当然のことであり、単純に賃料の差額を補填するわけにはいかない。しかし、転出者にとっては好んで立退くわけではなく、その差額の補填がないと移転できない場合も存在する。一般的には、新・旧賃料の1~2年分程度が妥当であると考えられる。例えば、現家賃6万円、移転先家賃が7万円であれば、12万~24万円を補填する事になるのである。

2010年9月7日火曜日

借地の研究(007)

1.正当事由


立退料の提供は補完要因


自己使用
親族等の使用の必要性
生計の事情
建物増改築
建物修繕
建物新築必要性
有効利用の必要性
移転先の提供
賃貸借の事情
地主の破産
地主変更
自己の必要性
生計の事情
建物を賃貸する必要性
従来の事情
      
を比較考量して決定する。


借地人の破産(最高裁判例 昭和48年10月30日判決)

借地人が破産して地主が解約の申し入れをする場合も、正当事由が必要としている。また、民法612条の賃借人の破産による解約申しいれの規定も削除された。

 破産宣告を受けた日までの滞納分は、滞納賃料債権として「一般の破産債権」として扱われます。敷金を差押えられた場合にも、賃貸人は差押え前にすでに発生している賃料債権と敷金返還債務を相殺することができる。
 賃貸人が破産した場合については、第3者に対する対抗要件を備えている場合は賃借人は保護されます。

建物の朽廃と借地明渡し問題

朽廃とは、建物としての社会経済的効用を失う程度に腐食・損壊している状態をいいます。建物の一部分が朽廃していても、建物全体からみれば、まだ建物としての効用を残しているような場合は、朽廃とはいえません。木造建築物においては、柱、桁、小屋組、梁が折損し、屋根瓦がずれ落ち雨漏りがひどく、土台等が腐食していて、取り壊した材料がほとんど役に立たず、修理をすると新築に近い程度の費用が必要な場合には朽廃したといえる可能性があります。風水害や火災による滅失毀損は、朽廃にはあたりません。存続期間が法定された場合も、建物が朽廃すれば借地期間満了前でも、借地権は消滅することになります。しかし、新借地借家法では、朽廃による借地権の消滅の制度はなくなっています。ただし、旧法適用の借地権については従前通となります。

しかし、裁判所としては借地人が居住している以上、建物としての社会的効用を失っているとは認定しにくいようです。

土蔵作りの築80年の建物、トイレも外にあり、居住と言う意味では老朽した建物であるが、現実に居住している者があれば、朽廃とは言えないのである。災害の危険があり、立退交渉を行うとしても、建物と同時進行しているのが賃借人の老齢化である。特に、借地の場合は建物の所有が賃借人であり、一方的に危険であるからと取壊すわけにもいかない。一部には、古家を維持し地代を支払い、立退交渉を待つ人々も存在する事は事実である。


借地法2条1項
朽廃
借地法7条
滅失

2010年7月24日土曜日

借地の研究(006)

更新料

 更新料は法律上の根拠がなく、更新料の金額についても客観的な基準はありません。借地権価格の5~10%程度とされています。(月額賃料の1~3ヶ月)

 契約に更新料の支払が重要な要素となっている場合、信頼関係の維持の基盤となっている場合、更新料の支払を拒絶すると解除原因となります。


契約期間満了における更新問題


<更新料の法的性質>

更新料の法律的性質について、学説や裁判例などによって様々な見解がでており、未だ統一的な見解はありません。

一般には

1) 更新料自体を否定

2) 異議権放棄の対価

更新するに際して貸主が更新に対する意義を述べない(更新を承諾する)ことの対価

2) 賃料などの補充

賃料の増額が簡単に出来ないことから、過去の賃料の不足分の後払い精算、または将来の賃料について事前に前払いする、あるいはよりよい条件で他の賃借人に賃貸できるかもしれないところを従前と大差ない賃料で契約を継続させる分の穴埋めのために支払い

3) 権利金充填(更新によって敷金・権利金が目減りするのを填補)

4) 更新手数料

更新料が、日本全国で普遍的に支払われておらず、更新料を肯定する見解は合理的に説明できるというものでもない。ただ、裁判例では異議権の放棄または不足賃料の補充として扱っているものが主流である。

更新料は支払わなければならないものであるのか?

民法や借地法、借家法、借地借家法いずれにおいても更新料を支払うというような規定はありません。そこで、賃貸借契約において更新料を支払うという特別の合意をしていない限りは更新料を支払う義務はないというのが一般的な考えです。

更新料の支払いが慣習となっているのか否か?

借地借家法(借地法、借家法も同じ)は民法の特別法とされています。借地借家法には「慣習」についての特別規定はないので、一般法である民法に規定されている「慣習」(民法92条)が適用される可能性もあります。

「賃貸借契約の更新にあたっては、賃借人が賃貸人に対して一定の更新料を支払うという慣習がある」ということになれば、契約で更新料の支払いを定めていなくても更新料を支払う義務が発生する可能性があります。

しかし、更新料が普遍的に通用しているものではなく、その意味合いもきわめて曖昧であり、期間満了の場合には賃貸人が更新を拒絶しても、法律上は賃貸人が更新を拒絶する正当な事由が無い限り契約は更新されることとなること(借地借家法6条、28条)から、判例上も学説上も更新料の支払いは慣習ではないとしています。更新料を支払うのは、最低限の条件として当事者間に更新料支払いの合意がある場合に限られます。


今後、最高裁が何処まで言及するか?注目です。

2010年6月17日木曜日

借地の研究(005)

借地権の評価

 借地権の評価については、地主の認識の甘さが目立つ。「こんなに安く貸してやってたのだから権利なんてない」と主張する賃貸人が大半かもしれない。

 しかし、近隣相場より安く借りれる権利が借地権(賃借権)の源である事を理解しなければならない。安く借りられる権利を借地人に与えたのは賃貸人自身なのです。その意味では、借地人に「良い地主」といわれるほど後で苦労するのです。日常の管理が重要である所以もここにあります。



 ①担保価値としてはどうか?

東京地裁民事21部の「運用基準」

 東京地裁民事21部の「運用基準」によれば、底地の評価は、更地(建付地)価格-借地権価格=底地価格の考え方で評価すると規定されている。全国的にも、この「基準」を基にして、案件を処理している例が多いといわれている。しかし、この「運用基準」方式によって底地の評価を行うことは、価格面では、不動産取引における実態から大きく離れることになる。

更地価格-借地権価格=底地価格、つまり借地権価格に底地価格を加えたものは、100%であるとする考え方は、地主と借地人の当事者間の取引に限っていえば、ほぼ妥当なものであ。借地権割合が80%~90%も認められる地域においては、問題は相対的な意味で小さいといえる。ところが、借地権割合が30%~40%程度の地域において、この運用基準方式で底地の評価を行うと、底地価格(割合)が更地価格の60%~70%となり、一般人(第三者)が底地を買う価格としては、妥当性を著しく欠いた評価額となってしまう。

 不動産鑑定評価基準は、『底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益を還元して得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする』と規定している。しかし、底地が第三者に単独で取引されることは極めて少なく、借地契約の多様性等からいって、底地の比準価格を求めることは実際上は困難である。底地の評価は、収益価格を基として、将来、借地権が消滅し、完全所有権(更地または建付地)になる期待可能性を加味して評価額を決定するのが、妥当性のある手法である。 土地の所有者(競落人)の手にはいるのは地代でしかないわけですから、地代を基にする収益価格でもって決定地上権についた土地(底地)を評価するのが妥当である。

金融機関の取扱い

 一方、抵当権を設定する側=金融機関が、底地の担保価値をどう把握しているか、借地権者は、更地価格-借地権価格で買取る事ができる、しかし、借地人に買い取りの意思および資力がなければ、その手法は採用できないから、担保査定の場合には、特段の事情のない限り適用すべきでない、そこで、底地の価格は原則として賃料徴収権の対価と考えるべきで、現行賃料の額および還元利回りがポイントとなる。底地については、厳しい査定を行っているのが実情である。  

表面利回り

   年間収入÷購入費

   純利回り

   (年間収入-固定資産税・管理費・修繕費・金利)÷(購入費・リフォーム費)

   実質利回り

   純利回り+経済リスク・収益変動リスク・老朽リスク・売却リスクを考慮する必要がある。

2010年5月27日木曜日

借地の研究(005)

 無断譲渡


借地借家法14条

無断譲渡を理由に契約が解除された場合、建物を譲り受けたものは、地主に時価で買い取る様請求できる。?

最高裁判例昭和30年11月22日

賃借人の無断譲渡が賃貸人に対する背信行為と認められる場合は、無断譲渡による契約解除が肯定される。

大審院判例昭和2年4月25日

借地権付建物の競売事案について、建物が競落された場合に、建物所有者であったものと建物買受人に移転すると解すべきである。

特約事項で地主の承諾が得られることを建物の所有権移転および土地賃借権の譲渡の停止条件として明確にする必要ある。

また、契約後の対応や手付金、中間金の額等も問題となる。実質的な権利移転と考える場合は無断譲渡と認定される。

借地権付建物の底地の瑕疵

最高裁判例平成3年4月2日

敷地の瑕疵は、借地権の性能上の瑕疵というものではなく、借地権者と敷地所有者たる貸主の問題であり、その瑕疵の責任は、貸主に対して問われるべきである。しかし、敷地面積の不足、敷地に関する法規制、または賃貸借契約における使用方法の制限等の客観的事由によって賃借権が制約を受けて売買の目的を達することができないときは、建物とともに売買された賃借権に瑕疵があると解する余地があるとしており、瑕疵担保責任を追及できる。


個人の土地建物を法人に貸す場合

賃借人の法人成りの場合

 最高裁判例 昭和39年11月19日

 個人営業からの法人成りについては、無断転賃であるとしています。しかし、会社(経営)の実権は従前の賃借人が掌握し、賃借建物の使用状況等も、個人営業の時と実質的に変化のない場合は、背信性はなく契約解除権は発生しないとしています。

 最高裁判例 昭和46年11月4日

 この実質的な変化及び背信性の有無については賃借建物の使用状況の変化を基礎に具体的に判断するとしています。

 しかるに、会社(経営)の実権が第3者に移ったときは、事情が変更され、その時点で信頼関係が破壊されたとして、契約解除権が認められます。
 この場合において、実質的な支配権が第3者に移った事が外形上判断しにくく、この実権の移動を追証したと言われかねない事に注意が必要です。

法人成の禁止条項

 賃借人は本件××における営業権をいかなる形態を問わず、法人名義とする事はできない。

 賃借人は本店舗を、法人の本店もしくは支店、営業所、出張所などの所在場所としてすることはできない。

 前項のいずれかに該当する場合は事由のいかんを問わす、無断転賃とみなされ、賃貸人は賃借人に対して本契約を解除し、本件××の明渡しを求めることができる。



株式譲渡(全株式)と賃貸権の譲渡

 ①全株式の譲渡が民法第612条の規定を潜脱するものではない。
 ②譲渡後の賃借人の営業目的や本件建物の使用状況に変更がない。
 ③譲渡後の賃借人の支払い能力に不安を感じさせる恐れがない。

 上記の場合には、株式が譲渡されたとしても、賃貸権の譲渡とはならないとしています。しかし、株式譲渡により経営者が変更される等、信頼関係の基礎となる部分に変化がある事は重要な問題だと考えられます。

 地主の承諾

借地権の譲渡問題

借地人が借地権を譲渡するには、地主の承諾が必要です。借地権の譲渡を認めても特段地主の不利益にならないような場合には、仮に地主が借地権の譲渡に承諾を与えなくても、譲渡を認めてあげる必要が出てきます。その制度として、借地権者が借地非訟手続という手続によって、裁判所に対し地主の承諾に代わる借地権譲渡許可の裁判を求める申立をすることができるとされています(借地借家法第19条)。裁判所は、借地権者から申立があると、借地権の残存期間、地代の支払い能力、借地に関する従前の経過、借地権の譲渡又は転貸を必要とする事情、その他一切の事情を考慮して許可の申立を認めるかどうか判断します。許可されれば、地主の承諾がなくても家と借地権を自由に譲渡することができます。そして、認める場合にも、当事者間の公平を図るため必要があるときは、地代の変更などの借地条件の変更を命じたり、借地人に地主への一定の財産上の給付(承諾料)を命じます。地主の承諾を得るために支払われる金員が借地権譲渡承諾料と言われ、借地権価格の10%程度が普通言われています。(売却価格の10%でない。)  

最高裁判例昭和34年9月17日

借地権譲渡にあたっては、特別の事情がない限り、譲渡人は、譲受人に対し、譲渡につき遅滞なく賃貸人の承諾を得る義務を負うものと解されている。


 譲渡承諾料(国有財産)

 名義書換承諾料
相続税評価額×借地権割合×10/100

増改築承諾料
相続税評価額×5/100

       ×3/100(非堅固)

 賃料についても算定基準があります。物納条件においても、この算定基準に適合する必要があります。一般の契約と違うとすれば、権利金等の授受がない事です。

 競売と地主の承諾

2ヶ月以内に地主の承諾か裁判所の承諾が必要。承諾が得られない場合は建物買取請求は可能。

 競売により、借地権付建物を取得した場合には、2ヶ月以内に地主の承諾か裁判所の承諾が必要となる。又、賃貸借条について調整がつかず、地主の承諾が得られない場合も、裁判所による判断を仰ぐこととなる。

 地主側から、承諾を得られない場合には、建物買取請求を行うこととなります。この場合、建物価格については時価となりますが、問題となる事が多いです。

借地権譲渡承諾のお願い

 私は貴殿所有の後記記載の土地上の借地権付建物を競落し、代金も既に支払いました。(××地方裁判所     平成××年(×)第×××号、強制競売事件)

 つきましては、同土地の当方による賃借権の譲受けをご承諾頂きたく、ここにお願い申し上げます。

建物買取請求書

 私が、貴殿より賃借していた土地上に所有していた建物を競落した事は、ご案内のとおりです。

 これにつきまして、私は貴殿に対して、賃借権譲渡を承諾していただくようお願いしましたが、このたび貴殿より承諾しない旨の通知をいただきました。

 つきましては、同建物を時価により買取られるよう請求いたします。なお、同時価は金×××万円と鑑定されておりますので、ご参考までに申し添えます。

 無断転貸借

最高裁判例昭和62年3月24日

土地の無断転貸借がされたにもかかわらず、賃貸人に対する背信的行為と認められるに足りない特段の事情が存在するため賃貸人が賃貸借契約を解除することができない場合には、当該賃貸借が合意解除されたとしても、その解除が本来は、賃料不払い等による法定解除の行使が許されるとされたものである等の事情がない限り、賃貸人は、合意解除の効果をその転借人に対抗することができない。

最高裁判例昭和32年12月21日

賃貸借契約の債務不履行に基づく契約解除による消滅原因については、賃貸借契約の終了と同時に適法に行われた転貸借は、債務不能となり終了する。

最高裁判例昭和41年5月9日

実質的に、賃借人の債務不履行が存在し、法定解除し得る場合に、解決策として合意解除の形式をとり、円滑な明渡しを期待した場合にも転借人に対する契約終了の効果を対抗しえる。

最高裁判例昭和42年1月17日、最高裁判例昭和45年12月11日

背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合の無断転貸は、継続的な契約関係である賃貸借の特質上、契約当事者間のの法律関係の安定および衡平を考慮して、承諾があった場合と同様に適法な賃貸借となる。

2010年5月4日火曜日

借地の研究(004)

契約解除通知書


 貴殿と私との間で締結した下記記載の土地に関する賃貸借契約(以下「本契約」という。)について、以下の通り通知致します。

 貴殿は本契約に基づく賃料の支払いを平成××年××月分以降、××月間怠っています。そのため私は貴殿に対して、平成××年××月××日付の催告書において、同年××月××日を限りとして、同滞納賃料相当額をお支払いただくように催告しました。しかしながら、同期日経過後、本日に至るも、滞納賃料のお支払はおろか、誠意ある回答もいただいておりません。よって私は貴殿に対して本通知によって、本契約解除の意思表示をいたします。

 したがって、同土地を平成××年××月××日までの明渡し、並びに同滞納賃料相当額及び遅延損害金の支払いを請求致します。

 なお、損害金等の正確な金額については、別途計算のうえ後日請求させていただきますので予めご承知おきください。

 
契約解除通知書

 貴殿と私との間で締結した下記記載の土地に関する賃貸借契約(以下「本契約」という。)について、以下の通り通知致します。

 貴殿は本契約に基づく賃料の支払いを平成××年××月分以降、××


供託金の還付と取戻し


供託がされた場合に、被供託者は、法務局で、その供託金を受領する事ができます。


〈供託金の還付〉

最高裁判例 昭和33年12月18日

 賃貸人(被供託者)が、何ら留保を付けないで供託金を受け取ったときは、それ以上の金額を残額として請求できない。

 賃貸人(被供託者)は供託金額が増額賃料の一部弁済である旨の留保の意思表示をして、受領する必要があります。従前の地代額が供託されていた場合に、保留せずに供託金を受け取った場合には、従前の地代を認めたとされるのです。これを回避する方法として裁判上では以下の方法が認められています。

 
最高裁判例 昭和36年7月20日

 賃貸人(被供託者)が、賃借人(供託者)に対して、供託金額を増額賃料の一部弁済として受領する目的で供託書を送付するよう求める通知書を送った場合


最高裁判例 昭和38年9月19日

 賃貸人(被供託者)が、供託金額を増額賃料の一部弁済として受領するとの通知書を添付して供託所に対して供託金の還付手続きを行った場合


最高裁判例 昭和42年8月24日

 賃貸人(被供託者)が賃借人(供託者)に対して、供託金を受領するまで、一貫して供託金を超える金額を請求する訴訟を維持継続している場合には、留保付きの還付請求をしたと認められます。


〈供託金の取り戻し〉

 賃借人(供託者)は、賃貸人(被供託者)が供託金の還付を受けるまでは、原則としていつでも〈民法 469条 〉

供託金を取り戻すことができます。しかし、この取戻権は10年で時効消滅すると解されています。(最高裁判例 昭和45年7月15日)

 又、供託金を取り戻した場合は、賃借人が供託をしなかったのと同じ状態になり、賃料が遅延している状態となるのです。


相当と認める金額とは何か。

 客観的に適正な賃料額ではなく、賃借人が主観的相当な賃料額であると判断した金額で足るとされているが、増額請求がされているのに、従来賃料より安い金額を供託した場合や、減額請求をした賃借人が従前の賃料より安い金額を供託した場合、又、公租公課を下回る金額を供託した場合には、債務不履行となる。

 長期間の供託により、供託額が公租公課を下回るなど著しく低額になった場合には、賃借人として信頼関係を破壊する事となる場合があります。

 賃貸人としては長期の供託がされており、公租公課を下回る場合などには、公租公課額を下回る旨の通知をし、その後に信頼関係が破壊されたとして、契約解除する方法が考えられます。

※従前の賃料の1/3、適正賃料の1/10は相当と認められる額ではない。債務不履行となる。解除原因となる。

権利金と敷金、保証金との意味を混合している人がいます。

敷金の返還請求については、新しい判例がでています。一般に言う敷引の判例ですが、消費者保護法により条項が無効とまでいわれています。


賃貸人から借地人への供託金の受取りの通知


通知書

 私が、貴殿に対し、平成××年××月××日より賃料1ヶ月××万円で賃貸している後記記載土地について、平成××年××月××日付内容証明郵便をもって、賃料を平成××年××月××日より、1ヶ月××万円に値上げする旨を通知いたしました。しかし、貴殿は、不服ということで、旧賃料相当額を同年×月分として、×××法務局へ平成××年××月××日付で供託されました。

 つきまして、同供託金を還付して同月分、新賃料の一部に充当しますので、この旨を通知いたします。

 なお、同還付は旧賃料相当額を継続する趣旨ではなく、また貴殿が引き続き供託される場合は同様の措置をとることを念のため申し添えます。


継続的な地代の値上げが可能か、適正な地代への値上げであれば可能(適正な増額であれば可能)と考えられます。適正な地代への値付けであっても、一度に30%増額は認められないと考えられます。長期的な視野にたって、行う必要があります。物納条件の地代水準が、その基準となると考えられます。

2010年3月25日木曜日

借地の研究(003)

国有地借地

東京地裁昭和55年1月30日判決

国有財産・・普通財産の貸付けに関しては、国有財産法が適用される。国有財産法に規定が無い場合には、借地借家法・借地法の規定が適用される。
 国有財産については、国有財産法の規定が優先的に適用されます。そして、各儀書換承諾料の額等についても、一定の基準が定められています。

国有財産普通財産の貸付期間は30年となっています。

名義書換承諾料
相続税評価額×借地権割合×10/100

増改築承諾料
相続税評価額×5/100
      ×3/100(非堅固)
 賃料についても算定基準があります。物納条件においても、この算定基準に適合する必要があります。一般の契約と違うとすれば、権利金等の授受がない事です。

地代
地代の決定要因

地代と利回り
住宅地の地価は0,8%
2,2~2,6%
1,5~2%程度
1/2~1/3

借地は優良資産

普通借地権の地代水準
地代の公租公課倍率 
住宅用地  4.2倍~3.1倍
非住宅用地 3.5倍~2.4倍

東京簡裁等の調停成立状況
住宅用地  3.1倍
非住宅用地 2.4倍

調停委員会の適正賃料額

昭和49年10月11日 東京地裁民事第22部
「調停部だより(8号)」
 地代は公租公課の2~3倍の額をもって適正地代とするのが比較的妥当。
 

平成5年1月 浦和地裁管内簡裁民事事務汎査会
「賃料改定調停事件処理要綱」

①[建築価額(取得費)×(1-経過年数/耐用年数)+減価償却費+固定資産税等諸経費]×1/12

②[固定資産評価額×2.5×期待利回り率+減価償却費
 +固定資産税等諸経費]×1/12

地代の値上げ

地代の値上げ問題

最高裁平成3年11月29日判決
地代・借賃が決められた時から相当の期間が経過しているかどうかは、地代が「不相当である」かどうかを判断する一つの事情である。現行の賃料の改訂いから一定期間経過しているか否かは、賃料が不相当となったか否かを判断する事情にすぎない。借主は賃料が不当となっているのであれば、相当期間が経過していない事を理由として増額請求を否定することはできない。

社会的経済的に事情の変動がある事。
一定期間増額しないとの特約・・有効
一定期間が経過しないととの特約があっても減額請求は許される。
契約書に増額の規定だけの場合も、減額請求は可能。
地代の評価方法
(1)借地借家法第11条①(地代と増額請求権)
イ、土地に対する公租公課の増減
ロ、地価の上下
ハ、その他経済事情の変動により比隣の地代に比して不相当となりたるとき将来に向かって地代の増減の請求が出来る、こととされています。
評価方法
イ、積算賃料
地価に一定率を乗じた額に、公租公課を換算して月額にした賃料、この場合賃料の基礎価格として、更地の30%程度が地主の元本としての価格として求められます。
ロ、スライド方式の賃料
前回値上げした時点から値上げ要求のあった時点までのGDP・GNOの変動率を採用して求めます。
ハ.利回り方式
平均的な利回りを基準に求めます。
留意点
最高裁判所はいろいろな手法で求めたものを、総合的に考慮して判定する必要があるとしています。

サブリース契約の賃料減額請求。
判例は
賃料の自動増額特約減額は認められないとするものと、特約で値上げ率の変更が可能な場合に増額0%は大丈夫とするものがある。

東京高裁平成14年3月5日判決
転賃目的のビルの一括賃貸借には借地借家法32条の適用がなく、当事者は賃料の増減額の請求権を持たない。

転賃目的の賃貸借は、家賃保証の期間後は賃借人、賃貸人の双方から解約の自由を持つものである。一定の事業目的のために一定期間、固定賃料を定めたものであるとし、解約の自由は認めるものの、減額請求は認めていなかった。

しかし、最高裁平成15年6月12日判決では、借地借家法の規定に基づく家賃減額請求権の行使を認めるとの判決がされている。


サブリース判決

賃料の減額請求

賃料の減額請求に賃貸人が応じない場合には、賃借人は、調停(及び訴訟)によって賃料の改定を求めます。
この場合賃貸人は、従来どおりの賃料を請求する事ができます。
この場合には、賃借人が賃料減額請求権(借地借家法32条1項)を行使した時から裁判所により客観的相当額が決定された時までの期間について年1割の利息の支払をしなければなりません。(借地借家法32条3項)
 
賃借人が賃料の減額請求を行い、従前の賃料額を支払わない場合には、債務不履行を理由に賃貸借契約の解除をすることが可能となります。
賃借人は従来どおりの家賃を供託する手続をとるのが一般的となっています。賃貸人としては、賃料の減額請求に対して、急いで対応する必要はないと言えます。ゆっくりと交渉していく事となるのです。しかし、賃料の減額に関しては、その影響は一人の借地人だけで止まらない場合が多く、注意が必要です。基本的には、現在の近隣の賃料相場に照らして、適正な賃料であるかを検証し、その対応を図るべきでしょう。

2010年3月18日木曜日

借地の研究(002)

契約書の整備の問題点

賃貸人の権限の調査
 一般的には賃借人の問題がクローズアップされるが、賃貸人が権限を有するのかは重要な問題となる。表現代理等の構成により救済される場合が多いが、代表権のない者との契約等問題は多い。売買の場合と同様の注意義務が必要である。


賃貸範囲の明確化
 一団の土地を複数の人に貸す場合、土地の一部を貸す場合等、賃貸の範囲が不明確な場合が多い。測量・分筆までを行う事はまれであろう。この場合に、賃貸部分がどこなのかは明確にしておかなければ、将来に大きな問題として表れてくる。複数の賃借人に貸す場合においても、賃借人同士の認識が一致しているとは限らない。特に、底地を売却する様な場合には、その賃貸範囲が売買の範囲となるため大きな問題となる。最低でも、賃借の範囲を明確にする図面作成は必要となる。又、物納条件の中にもそれぞれを分筆して、借地範囲の確認をしなければならない。相続発生後においては、当事者不在による借地人同士の紛争に巻き込まれる事も少なくない。

塀・壁・垣根で囲まれた敷地
道路までの通路
敷地の範囲が明確でない場合は、建物の周囲の建物利用に最低必要な敷地

利用目的の明確化

借地用途に対して地代の値上げを請求

借地借家法11条の地代増額には、借地の用途変更は含まれない。地代の増額ができるか。
用途変更による地代増額、承諾料を支払うとの合意がない場合は、直ちに地代の増額や承諾料の請求する根拠はない。

借地の周辺の環境変化により利用目的の変更が必要な場合が存在。利用目的の変更がすぐに信頼関係の破壊とならない場合が存在。例は、商業立地としての移行が進み、住居としての利用が陳腐化した場合などは、店舗に変更する事がすぐに信頼関係破壊したとまでは言えない場合があります。

地代の明確化
 新法借地借家法においては、堅固・非堅固の区別がないため、その変更は用法の違反とは決定されにくい。

期間
増改築制限
用法変更


東京高裁昭和29年10月25日判決
建築基準法の規定によって耐火構造にした。用法違反に当たらない。

堅固な塀の建築は用法違反とはならない、また、買い取り請求の可能性あり。


非堅固    堅固・・・用法違反
平成4月8月1日以降の契約は堅固・非堅固の区別なし。
                
不利益特約

解除権を留保する
最高裁昭和28年9月25日判決
格別の意味を持たない。民法612条

賃借人が借地権を無断譲渡したり、借地を無断転貸した場合には、賃貸人はただちに契約を解除する事ができる。

債務不履行による契約解除の特約
最高裁 昭和43年11月21日判決
賃貸人は催告をせず、解除の通告をして、借地関係を消滅させることができる旨の定めと解される。催告の手間が省くための規定です。
すぐに解除できるものではない。
 すなわち、解除の通告は必要であり、催告について省くことができるとするものである。解除の通告もせずに、一方的に契約が解除されたとする主張をする事は認められないのです。この様な規定があったとしても、一定の手順を踏み、進めていく事が寛容です。

賃借人が賃料を滞納した場合、直ちに借地権は消滅し、賃貸人に土地を明け渡さなければならないと規定されていても、すぐに明け渡しが可能となるのではありません。解除の通知をする等の手続は行わなければならないのです。

平成4年7月31日以前の契約であれば無効。

相続人に相続が発生して遺産分割がされた場合に、借地借家関係は賃借権を継承した者に対して有効となります。相続した者が、契約上の権利義務を承継する事となります。
 滞納賃料については当然に各相続人に分割承継されます。遺産分割で相続人間で法定相続分と違う合意をしたとしても賃貸人は合意に関係なく、各相続人に対して、法定相続分に応じた額の請求ができる。又、合意を承認することもできます。しかし、相続人が誰であるのかは賃貸人にとって解からない場合が多く、相続人からの連絡がない場合には、対応の方法がありません。普段の管理の中で明確にしておく必要があります。

相続人の確定

代表者の確定

借地を原状に復して返すとの規定がありますが、借地人に地上建物を収去して返すことを義務づけたものであれば無効となります。それは、借地人の建物買い取り請求権を放棄させることになるからです。すなわち、現状回復義務との関係では、返還後の建物の処理について問題になる場合が多いのです。


保証人
保証人の責任
保証債務は主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他すべてのその債務に従たるものを包含する。

賃料の滞納、損害賠償責任、遅延損害金

借主の明渡義務を実現する責任はない。借主の明渡義務は、一身専属敵義務であり、保証人が代わって実現することはできない。保証人は明渡義務の不履行による損害賠償義務を負うこととなる。
 保証人が、借主本人にかわって、明渡を行う事はできないのです。たとえば、賃借人が賃料の滞納等で債務不履行になり、契約解除をした場合に、その所在が不明であっても保証人による明渡を実現させることはできません。裁判上の手続によらなければならないのが原則です。


保証人の身元確認の重要性

保証人の重要性については、賃貸借契約から生じる債務を保証してもらえる人的担保です。本当に実在するか、資力が有るか等も重要であるが、保証人とされる人が本当に保証の意思があるかが重要となります。又、保証人の資力か収入についても、継続的な確認がされていないのが現実です。更新の時期には、居住者保証人等に関する事項についての確認が必要です。

確認資料
住民票
身分証明書等
戸籍謄本
身上書
印鑑証明
給与明細・厳選徴収票・確定申告書

商業登記簿
代表者の印鑑証明
確定申告

 保証人の印鑑証明まで必要なのかですが、認印だけであった場合には保証人から賃借人が勝手にやったと言われかねないのです。保証人が、印鑑登録された実印を契約書に捺印した場合は、原則として保証人本人が契約書に捺印したものと認められるので、保証人になる事を承諾していないとの主張はできなくなります。



建物賃貸借
建物賃貸借契約の保証人の責任
最高裁判例平成9年11月13日
期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のためのに保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の意思表示を伺わせるような特段の事情がない限り、保証人が更新後の賃貸借契約から生じる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意されたものと解するのが相当である。

最高裁判例昭和39年12月18日
保証人は保証責任の無限定な拡大を防ぐために、一定の状況の下に保証契約を解約できるとしている。賃借人の著しい賃料不払いや資産状況の悪化があるにもかかわらず、賃貸人が賃貸借の解除等の処置を講じなかった場合には、保証人に解約権が認められる。
 保証人に対しても、賃料支払の請求をしておく必要があります。そうでないと、一方的に保証契約の解除をされてしまい、保証人のいない契約となってしまいます。

東京地裁平成6年6月21日判決
 賃貸借は当然に更新されることが予定されており、更新される事を承知して、連帯保証人となったと認められる。更新後は連帯保証人としての責を免れるとの明示がない場合は、更新後に生じた賃貸借に基づく債務も責任がある。

2010年2月24日水曜日

借地の研究(001)

土地賃貸借契約

普通借地契約

建物の所有を目的とするものが借地借家法・借地法の適用がある。

建物の所有を目的としない土地賃貸借契約を締結していても、建物の建築された時に立ちに異議を述べないと、黙示の承認があったとみなされて、借地借家法、借地法の適用となる。

建物であるか、
土地に定着する建造物
長時間使用できるものであること
住居・営業・物の貯蔵などの目的に使用されるものであること
屋根・壁があり独立していること
 この考え方からすると基礎があり、柱・カベ・屋根があれば登記されてしまい、借地権を主張されてしまう事があるのです。こんなホッタテ小屋なんて思わないで下さい。こんな状況を早期に知る事ができるのは、継続的で適格な確認がされているからです。この意味でも管理が資産継承の第1命題なのです。

その他の問題点
・工場敷地契約
土壌汚染について

・定期借地契約

・耕作契約
 本来の作物耕作収穫後の処理

・使用貸借契約

民法593条の使用貸借は借地法・借地借家法の適用がありません。

固定資産税程度をもらっている場合に、使用貸借の発生を妨げないとはいえないとの判例あり。しかし、定期的に謝礼程度以上のものをいただいた場合は使用貸借が否定される。
 使用賃借において、一般には無償だから、権利がないなんて言われています。そして、本人との個別契約だから本人が死亡したら使用賃借契約が解除できると言う者までいます。しかし、工場敷地等の場合は、その目的を達成するまでは返ってこないのです。


土地の使用賃借契約

問題点 
・有償無償
無償である事は必ずしも必要ない。
 
判例
固定資産税相当額を負担したとしても、使用賃借の成立をさまたげるものではない。
この意味では使用賃借は無償であるとの考えは改めるべきです。

●期間の定めのないもの
目的が達成できるまで貸し続けなければなりません。例えば事業が成立する
●目的が明示されたもの
抽象的な事例であれば、この実現は誰が判断するのでしょう。本人か?まだ目的が達成していないと言われれば、これを否定する事はに困難なのです。


期間の定めある場合
・目的がある場合
駐車場契約

目的
露天自家用自動車駐車場

契約期間は期日を指定
自動更新しない事を明示しておく(再契約が前提であっても)

借地借家法の適用がない
しかし、地代の一方的な値上げについて問題あり。
定期的に見直す趣旨明記し賃料の更新を可能にしておく事

駐車場の範囲の明確化

・資材置き場契約
建物建築は黙示の承認の危険


・一時使用契約

最高裁判例昭和43年3月28日
その目的とされた土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸借期間等の諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に短期的に限り賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的な理由が存在する場合に限り、一時使用の賃貸借に該当する。


東京高裁平成8年11月13日判決
土地一時使用契約となっていても、事務所や倉庫が建築され、更新が数度行われた場合は、一時使用目的の賃貸借の賃貸借契約ではないとされた。


地上建物を取壊し可能なバラックに限定し仮設建物のみを所有し得る一時使用のため道路敷地となるまで
賃貸人で土地を自ら使用する計画を賃借人が了承していた

一時使用の合理性が認められた判例がある。

最高際判例昭和36年7月6日
権利金の授受があっても一時使用と認められる。

・地役権設定契約

・信託契約

・自己借地権設定契約

2010年1月5日火曜日

日本の底地・借地・貸家(001)

日本の底地・借地(底地・借地の歴史的考察)001

江戸(東京)に借地が多い←
 ①武家の拝領地が多く・・・親類への無償貸付以外には売却、質入、貸付が禁止されていた。1632年に  幕府が町人に賃貸する事を認めた。(許可)

 ②町年寄、御用達町人、医師  女官、絵師、坊主、能役者の拝領
  売却、質入は禁止されていたが貸付については認められていた         
            
 ③寺社、地主 ・・・売却は禁止

 明治期の借地の消滅(1872年には「壬申地券」の発行
 ・武家拝領地、町人拝領地の収用→底価売却

大阪(大坂)の借地←家持地主の増加
 ①土地所有の尊重の意識が薄く
 ②坪領地主が存在しなかった
 ③寺社が少なかった
 ④空き地が没収されたため貸家が増加
 ⑤公役町役を避けるために借家人が増加

権利金の発生
 地価と地代額が上昇し、地代利回りが低下する中で、(明治30年頃、千代田区の借地で地代の5年分程度 を権利金として授受した契約書が存在する)権利金の授受が始められ、借地権取引と借地権価格が成され  た。
 ☆地代利回りを2%とすると、地価の10%程度になる
 権利金が授受された理由として、地価上昇の中で
  ①将来の地代値上分
  ②新旧借地人の地代調整のため
 特に②の要素によるものと考えられる。
 
 大阪においてはこの時期に権利金の例がないのは、市街化地に借地が少なかったからである。
 借地権売買は、地価の上昇と地代のアンバランスにより貸しているより売却した方が有利であるとの考えに よるものである。

権利金の慣行化
 借地法制定後に東京で授受例が増加したが、1930年には地価が停滞し地代利回りが回復すると権利金の授受は少なくなった。
 権利金は前述の将来の地代値上げ分については、特に有効なものとなった。それは、最低借地期間の法定により必要と考えられたのである。ここで押えておくべきことは、大土地所有の上に多数の借賃がいたからであり、地代上昇傾向が存在したからである。


1920~26年の大土地所有の減少
 産業投資を志向する土地所有者において、貸地経営からの撤退が顕著になった。(三菱等の財閥である)

第2次地代家賃統制例 1938年8月4日~1946年9月30日効力を失う。

第3次地代家賃統制例 1946年10月1日~
 地代家賃を1946年9月30日時点で凍結「停止統制額」その後の地代家賃については物価庁長官の許可となる「許可統制額」この基準は、「付近類似の借地の地代額」「旧地代家賃統制令による適正標準」 1948年10月地租課税率の引き上げ地代家賃統制令は、権利金は地代の前払いとして考えていた。敷金については規制がなかった。
 この時期に借地権の割合が一挙に上げられる事となる。土地区画整理事業や課税において顕著となる。
1946年3月の財産税課税では52%(東京都区内・横浜市)
1950年12月~1953年の富裕税課税では90%になった(全国に及ぶ)

   地方税法の改正、地租標準課税率
   土地の賃貸価格の28.8%~ 24.0%に引上げる。
   これにより、借地率は低下し、借地が消滅する。しかし、借地数は増加している。

地主が借地人、借家人に土地を売却していく。その一方で新規借地供給が増加したことによる。

1960年より、東京・大阪等の大都市を中心に、「敷金、保証金」の支払いが顕著に増加しているし、権利金の授受については1950年に統制令が解除されると増加した。
 東京は更地価格の40~60%
 大阪は更地価格の20~50%
更新料は1960年頃より東京周辺で授受され始めた。
 住宅地で更地価格の8~12%
 商店地で更地価格の12%
 堅固な建物で更地価格の15~20%
更新料は1962年頃から一部慣行といして生まれてきたといえる。

最後に、東京都大阪の借地の違い
 東京
 借地が多く、借地権取引権利金の授受の慣行が存在、借地権価格が確立
 大阪
 借地が少なく、借地権取引権利金授受の慣行が存在しない。借地権価格の意識が弱い。
 大阪で借地権価格の観念が生まれるのは立退料の慣行化と高額化による。

借家率 
 東京では1873年に低下する、窮民の下総原野への追攻によるか、その比率は高いものであった。1941年は70%の水準である。
 大阪では1925年には借家率が90%と非常に高い。大阪・東京は江戸期より借家率は高く、明治大正期においてもその水準に変化がなかった。その後、1941年借家法改正等により、1950年代末まで低下する。そして1956年の新築建物に「地代家賃統制令」が適用されなくなり上昇する。1960年代以後は40%~60%と横はい傾向となっている。

2009年7月31日金曜日

更新料と消費者保護法

居住用建物の賃貸借における保証金の解約引き特約、更新料特約が消費者契約法10条に該当し無効に!
京都地裁判例

判示事項の要旨: 居住用建物の賃貸借契約における保証金の解約引き特約及び
更新料特約が,消費者契約法10条に該当し無効であると判断されました。

事件番号: 平成20年( ワ)第3224号
事件名: 敷金返還請求事件
裁判年月日:H21.7.23
裁判所名: 京都地方裁判所 第6民事部

請求概要
賃借人は,賃貸人との間のマンション賃貸借契約の締結時に保証金35万円を,契約更新時に更新料特約に基づき更新料11万6000円をそれぞれ支払ったが,本件賃貸借契約の約定中,解約引き特約及び更新料特約が消費者契約法10条により無効である旨主張して,敷金契約終了に基づき被告が返還すべき義務があることを自認した5万円を含めた保証金35万円及びこれに対する賃借物件明渡し後の平成20年7月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,不当利得返還請求権に基づき,更新料11万6000円及びこれに対する訴えの変更申立書送達の日の翌日である同年10月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。

2 前提事実( 証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)

(1)賃借人は,平成18年4月1日,賃貸人との間で,以下の内容の本件賃貸借契約を締結した。
ア.賃貸借物件.京都市
イ.契約期間平成18年4月1日から平成20年3月31日まで
ウ. 賃料1か月5万8000円
エ. 保証金35万円
オ. 解約引き30万円
カ. 更新料賃料2か月分

賃貸借契約書の条項
①賃借人は,敷金(保証金)として金額35万円を本契約締結時と同時に賃貸人に差し入れるものとする。但し,敷金(保証金)には,利息を付さない。
② 前項の敷金(保証金)は,賃借人の賃貸人に対する賃料の支払及び損害賠償その  
他の本契約から生ずる一切の債務を担保する。
③ 賃貸人は,敷金(保証金)を返還する際,未納の家賃損害金,滞納損害金,原
状回復の為の費用等,賃借人が甲に支払うべき金額を控除して,その残金を明渡し後60日以内に賃借人に返還する。但し,敷金(保証金)の額が不足するときには,賃借人は不足額を直ちに賃貸人に納付しなければならない。
④ 賃料及び共益費は,賃料5万8000円,共益費5000円。
⑤ 契約期間は,平成18年4月1日から平成20年3月31日まで。但し,契約期間満了の
2か月以上前に,賃貸人が賃借人に対し書面により更新拒絶の申出をしない限り,契約は当然に更新されるものとする。但し,賃借人の責に帰すべき事由による契約の解除は本契約を更新することができない。
⑥ 賃借人は合意更新または,法定更新にかかわらず,更新料(賃料2か月分) 
を支払わなければならない(本件更新料特約)。
⑦ 賃料・共益費の改定、賃料及び共益費等が,物価の変動,住宅の維持管理,公
租公課等,その他の事由により不相当となるに至ったときは,契約期間中といえども,賃貸人は,家賃・共益費・敷金等を改定することができる。
⑧ 賃借人が賃料及び共益費等の全部又は一部の支払を怠ったときは,賃借人は賃 
貸人に対し納付期日から延滞日数に応じ年率(365日あたり)14.6パーセントの割合を乗じて算出した額に相当する延滞金を支払わなければならない。但し,天災等その他不可抗力によるものと甲が認めたときは,これを減免することができる。
⑨ 賃借人は契約期間中といえども,賃貸人に対して書面により2か月以上前の予
告期間を定めて,本契約の解約を申し入れることができる。この場合,予告期間満了と同時に本契約は終了する。但し,賃借人は予告期間にかえて2か月分の賃料相当額を賃貸人に支払うことにより,直ちに解約することができる。
⑩ 賃貸人は契約期間中といえども,賃借人に対し,6か月以上の予告期間を定め
て本契約を解約することができる。
⑪ 賃借人もしくは同居人,又はそれらの来訪者その他の賃借人の関係者が目的物
件,本建物設備, 及び諸造等を変更,又は毀損した時は,賃借人は直ちにこれを原状に回復しなければならない。もし,賃借人が原状に回復しない場合は,賃貸人は賃借人の費用負担において回復することができる。

事実関係
1.賃借人は,賃貸人に対し,平成20年1月15日,本件賃貸借契約を更新するに際し,本件更新料特約に基づき,2年間の契約期間に対する更新料として11万6000 円( 本件更新料)を支払った。
2.賃借人は,賃貸人に対し,平成20年5月8日,本件賃貸借契約の解約の申入れを行い,同月31日,本件物件を明け渡した。
3. 賃借人は,賃貸人に対し,平成20年6月2日,2か月分の賃料相当額として11万6000円を支払った。

当裁判所の判断1

本件敷引特約及び本件更新料特約は,消費者契約法10条に該当するものとして無効といえるか( 争点⑴)

⑴賃借人は消費者契約法2条1項の「消費者」に,賃貸人は同条2項の「事業者」にそれぞれ該当し,本件賃貸借契約に消費者契約法が適用される。

*消費者契約法の適用がある。

⑵本件敷引特約及び本件更新料特約が民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項といえるかについて検討する。

ア. 本件敷引特約について賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対
価としての賃料の支払を内容とする契約であり( 民法601条),賃借人が賃料以外の金員の支払を負担することは賃貸借契約の基本的内容に含まれない。
そして,居住用建物の賃貸借の場合の保証金は 敷金と同様 賃料その他の賃借人の債務を担保する目的をもって賃貸借契約締結時に賃借人から賃貸人に交付される金員であり,賃貸借契約終了の際に賃借人の債務不履行がないときは賃貸人はその金額を返還するが,債務不履行があるときはその金額中より当然弁済に充当されることを約束して授受する金員を指すことが多く,本件賃貸借契約書にも,その趣旨が規定されている。

しかしながら, 本件敷引特約については,全く返還を許さない趣旨のものなのか, 原状回復にその程度の費用を要することがあることを考慮して,基本的には返還しないが,そのような費用を要しなかったことが具体的に明らかになった場合には,本件敷引特約を適用しないこととするかについて,明瞭な約定がされていたものとは評価し難い。さらに,将来返還される余地のない金員として,本件敷引金のような金員を授受することが慣習化していることを認めるに足りる証拠はない。
こうしたことを考慮すると, 本件敷引特約は,その法律上の性質ないし意味合いを明確にしないまま,民法その他公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し, 消費者の義務を加重したものといえる。

*基本的には返還しないが,そのような費用を要しなかったことが具体的に明らかになった場合には,本件敷引特約を適用しないこととするかについて,明瞭な約定がされていたものとは評価し難い。
*敷引金については慣習化しているとは認められない。


イ.本件更新料特約について前記アのとおり, 賃借人が賃料以外の金員の支払を負担することは賃貸借契約の基本的内容に含まれないところ,本件更新料特約では,賃借人が賃貸人に対し,契約更新時に賃料の2か月分相当額の更新料を支払うこととされている。そして,本件更新料が,賃料の補充としての性質を有しているといえるかは後記のとおり疑問であるし,仮にその性質を有していたとしても,その支払時期が早い点(民法614条参照)で賃借人の義務を加重する特約であるといえる。
さらに, 更新料を授受することが慣習化していることを認めるに足りる証拠はない。そうすると,本件更新料特約は,民法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の義務を加重したものといえる。

*本件更新料が,賃料の補充としての性質を有しているといえるかは疑問である。*支払時期が早い点(民法614条参照)で賃借人の義務を加重する特約であるといえる。
*更新料を授受することが慣習化していることを認められない。


⑶本件敷引特約及び本件更新料特約が民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するといえるかについて検討する。

民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するか否かは,消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差があること(消費者契約法1条)にかんがみ,当事者の属性や契約条項の内容,そして,契約条項が具体的かつ明確に説明され,消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。
賃借人は,居住用として本件物件の賃借人となった者であるのに対し,賃貸人は, 貸家業を営み,多くの借家人と賃貸借契約を締結してきたのであって,建物賃貸借に関する情報(礼金,保証金,更新料等を授受するのが通常かどうか,同種の他の物件と比較して本件賃貸借契約の諸条件が有利であるか否か)を継続的に得ることができる立場にあり,このような情報に接してきた期間にも差があるものと推認できるのであって,両者の間に情報収集力の格差があることは否定できない。

*貸家業を営み,建物賃貸借に関する情報(礼金,保証金,更新料等を授受するのが通常かどうか,同種の他の物件と比較して本件賃貸借契約の諸条件が有利であるか否か)を継続的に得ることができる立場にあり,このような情報に接してきた期間にも差があるものと推認できる。


イ本件敷引特約について
( ア) 本件敷引特約は,保証金35万円からそのうち30万円を無条件に差し引くものであるが,賃借人としては本件物件を借りようとする以上,支払わざるを得ないものであり,特に本件賃貸借契約のように4月から入居しようとする場合, 賃借希望者が多数存在することから競争原理が強くはたらく結果,賃借人としては本件敷引特約について交渉する余地はほとんどなかったものと考えられる。そして,本件敷引金は,保証金の約85パーセントに相当し,月額賃料の約5か月分にも相当するものであり,保証金,賃料に比して高額かつ高率であり,消費者である原告にとって大きな負担となる。

*敷引金は,保証金の約85パーセントに相当し,月額賃料の約5か月分にも相当する。保証金,賃料に比して高額かつ高率であり,消費者である原告にとって大きな負担となる。

( イ) 被告は本件敷引金の法的性質について,
① 自然損耗料
② リフォーム費用
③ 空室損料
④ 賃貸借契約成立の謝礼
⑤ 当初賃貸借期間の前払賃料
⑥ 中途解約権の対価
といった要素があり,これらの要素が渾然一体として含まれる本件敷引金には合理性がある旨主張するので,各要素について検討する。

a. ① 自然損耗料及び② リフォーム費用について
賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。そのため,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗にかかる投下資本の減価の回収は,通常,賃貸人が減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われているところ(最高裁平成16年(受)第1573号同17年12月16日判決・判例タイムズ1200号127頁),本件全証拠をもってしても,京都市内においてこれと異なる慣習等が存在するとは認められない。そうすると,通常損耗の回復費用は賃料を適正な額とすることによって回収するのが通常というべきであって,敷引金という形で賃借人に負担を転嫁することには合理的理由があるとはいえない。
また,リフォーム費用も,通常損耗部分の補修のために支出される側面が多く,本件全証拠をもってしても,本件物件について通常損耗がなかったが,良質な居住環境を提供するためにリフォームを行うこととしているなど,そうしたことへの対価として返還を要しない礼金を授受することが適当とみられるような状況が存在したとまでは認め難い。そうすると,本件においては,リフォーム費用を敷引金という形で賃借人に負担を転嫁することには合理的理由があるとはいえない。

*通常損耗の回復費用は賃料を適正な額とすることによって回収するのが通常であり,敷引金という形で賃借人に負担を転嫁することには合理的理由があるとはいえない。

b ③ 空室損料について
賃貸人による投下資本( 賃貸物件)の回収は,原則として賃料の支払を受けることにより行われているのであるから,空室期間(すなわち,賃借人が使用収益しない期間)の賃料が得られないことによるリスクは賃貸人が負うべきである。そのため,建物の賃貸借契約では,賃貸人のリスクを避けるため,賃借人からの解約も一定期間の経過をもって終了することとされている( 民法617条)。
そうすると,賃借人が賃貸事業者である被告に対して,使用しない期間の空室損料を支払わなければならない合理的理由があるとはいえない。


*空室期間(すなわち,賃借人が使用収益しない期間)の賃料が得られないことによるリスクは賃貸人が負うべきである。

c ④ 賃貸借契約成立の謝礼について
賃貸借契約が成立することにより賃貸人も利益を受けるのであり,賃借人のみに賃貸借契約成立の謝礼を一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。

*貸借契約成立の謝礼を一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。

d ⑤ 当初賃貸借期間の前払賃料について本件賃貸借契約において,本件敷引特約が設定されていることにより賃料が低額にされているかは本件全証拠によっても明らかではない。
また,前記a のとおり,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであるから,実際に賃借人が使用する期間にかかわりなく,本件敷引金に賃料前払の要素があるとする合理的理由は見出せない。
さらに,更新後の賃貸借期間については更新料という名目で同様の趣旨の金員支払を求め,本件賃貸借契約を締結する当初には解約引きとして,この意味合いを有する金員支払を求めることは,賃貸人に都合の良い説明であるといわざるを得ず,本件敷引特約が具体的かつ明確に説明され,消費者がその条項を理解できるものであったかという観点からすると,消費者(賃借人)が上記⑤ の要素があるものと理解することはできなかったと考えざるを得ない。

*実際に賃借人が使用する期間にかかわりなく,本件敷引金に賃料前払の要素があるとする合理的理由は見出せない。

e ⑥ 中途解約権の対価について
本件賃貸借契約書により,賃貸人にも中途解約権は留保されており,その対価を賃借人に一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。

*賃貸人にも中途解約権は留保されており,その対価を賃借人に一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。

( ウ) 以上のとおり, 被告が主張する本件敷引金の性質に合理的理由は認められず,その趣旨は不明瞭であるといえる。

( エ) 前記( ア) ないし( ウ) で指摘した点を考慮すると,本件敷引金を賃借人に負担させるには,その旨が具体的かつ明確に説明され,賃借人がその内容を認識した上で合意されることが必要であり,そうでない以上,民法1条2項に規定する基本原則(信義則)に反して賃借人の利益を一方的に害するものというべきである。

( オ) 前提事実及び弁論の全趣旨によれば,賃借人は仲介業者を介し,契約内容の説明を受けていたこと, 本件賃貸借契約書に「解約引き30万円」の記載があったことが認められ,賃借人は本件敷引特約の存在自体は認識していたといえる。しかしながら,賃借人が賃貸人から賃貸人主張のような本件敷引特約の趣旨,すわなち,本件敷引金30万円がどのようにして決められたのか,自然損耗料,リフォーム費用,空室損料,賃貸借契約成立の謝礼,当初賃貸借期間の前払賃料,あるいは,中途解約権の対価の要素を有するのかということについて,具体的かつ明確な説明を受けていたとは本件全証拠によっても認められない。

( カ) よって,本件敷引特約は,消費者契約法10条に該当し,無効である。

ウ本件更新料特約について
( ア) 本件更新料特約は,賃料2か月分として11万6000円を支払うものであるが, 賃借人として本件物件を( たとえ1か月でも)継続して借りようとする以上,その全額を支払わなければならないものであり,原告としては本件更新料特約について交渉する余地がほとんどない。また,賃借人としては遠隔地に居住する必要がある場合等の外は,引き続いて当該物件を借りるのが一般的であるところ,証拠によれば当該物件を選ぶ際に更新料の存在及びその額を知り得ないこともあり,更新料まで考慮して契約を締結することは困難である。そして,本件更新料特約による更新料は,契約期間2年に対し月額賃料の2か月分を支払うものであること,正当事由( 借地借家法28条)の有無に関係なく支払わなければならないこと,法定更新なら全く金員を支払う必要がないことからすると,原告にとって大きな負担となる。
( イ) 被告は本件更新料の法的性質について,
① 更新拒絶権放棄の対価
② 賃借権強化の対価
③ 賃料の補充
④ 中途解約権の対価といった要素があり,合理性がある旨主張するため,各要素について検討する。

a ① 更新拒絶権放棄の対価について
建物の賃貸借において,賃貸人に明渡しの正当事由(借地借家法28条)がない限り,賃借人は何らの対価的な出捐をする必要がなく,継続して賃借物件を使用することができるところ,居住用建物の賃貸借において,賃貸人が当該物件の使用を必要とする事情は通常想定できず(本件においても,弁論の全趣旨から,一般に行われている居住用建物の賃貸借と同様,専ら他人に賃貸する目的で建築された居住用建物の賃貸借であることが認められる),正当事由が認められる可能性はほとんどないことから,更新拒絶権放棄の対価という要素に合理的理由があるとはいえない。

*居住用建物の賃貸借において、更新拒絶権放棄の対価という要素に合理的理由があるとはいえない。

b ② 賃借権強化の対価について居住用建物の賃貸借の場合,前記a のとおり,正当事由が認められる可能性はほとんどないため,期間の定めのない賃貸借と定めのある賃貸借とで賃借権の保護の度合いは実質的に異ならず,賃借権強化の対価という要素に合理的理由があるとはいえない。
c ③ 賃料の補充について本件更新料特約では, 更新後の実際の使用期間( 前提事実のとおり,本件では更新後2か月経過時点で明け渡している の長短にかかわらず,賃料の2か月分を支払わなければならないのであり,使用収益に対する対価である賃料の一部として評価することはできない(上記のように更新後,短期間で賃貸物件を明け渡した場合でも,残期間に対応する更新料が返還されることはうかがえない。)。
さらに,賃料増減額請求訴訟において, その対象に更新料も含まれることを前提としていることはほとんどないこと及び同請求訴訟の審理において賃料の適正額を判断する際,通常,更新料の額まで考慮されることは稀であることからも,更新料が賃料の補充の性質を有しているとはいえず,本件更新料に賃料の補充という要素があるという点に合理的理由があるとはいえない。

*更新後の実際の使用期間の長短にかかわらず,賃料の2か月分を支払わなければならないのであり,使用収益に対する対価である賃料の一部として評価することはできない

d ④ 中途解約権の対価について
本件賃貸借契約書により,賃貸人にも中途解約権が留保されており,その対価を賃借人に一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。

*賃貸人にも中途解約権が留保されており,その対価を賃借人に一方的に負担させる合理的理由があるとはいえない。

( ウ) 以上のとおり,被告が主張する本件更新料の性質に合理的理由は認められず,その趣旨は不明瞭であるといえる。

( エ) 前記( ア) ないし( ウ) で指摘した点を考慮すると,本件更新料を賃借人に負担させる場合は,その旨が具体的かつ明確に説明され,賃借人がその内容を認識した上で合意されることが必要であり,そうでない以上,民法1条2項に規定する基本原則( 信義則)に反して賃借人の利益を一方的に害するものというべきである。

( オ) 前提事実及び弁論の全趣旨によれば,賃借人は仲介業者を介して契約内容の説明を受けていたこと,本件賃貸借契約書に「更新料賃料の2か月分」の記載があったことが認められ,賃借人は本件更新料特約の存在自体は認識していたといえる。しかしながら,賃借人が賃貸人から賃貸人主張のような本件更新料特約の趣旨,すわなち,本件更新料が更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充あるいは,中途解約権の対価の要素を有するということについて,具体的かつ明確な説明を受けていたとは本件全証拠によっても認められない。

*賃借人は本件更新料特約の存在自体は認識していたといえる。しかしながら,賃借人が賃貸人から本件更新料特約の趣旨(本件更新料が更新拒絶権放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充,中途解約権の対価)について,具体的かつ明確な説明を受けていたとは本件全証拠によっても認められない。


カ) よって, 本件更新料特約は,消費者契約法10条に該当し,無効である。

2009年1月26日月曜日

相続人による預金取引記録開示請求

最高裁は相続人の一人による預金取引記録開示請求に対して以下のように判断した。

相続人の一人が、預金取引記録の開示を金融機関に請求したもので、金融機関がこれを拒み最高裁まで争われたことに疑問を感じるが、明快な答えが出されたと言って良いのではないか。

最高裁は
金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負い、預金者の共同相続人の一人は,他の共同相続人全員の同意がなくても,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができると結論づけた。

最高裁の判例要旨を紹介する。

預金契約は,預金者が金融機関に金銭の保管を委託し,金融機関は預金者に同種,同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであるから,消費寄託の性質を有するものである。しかし,預金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には,預金の返還だけでなく,振込入金の受入れ,各種料金の自動支払,利息の入金,定期預金の自動継続処理等,委任事務ないし準委任事務(以下「委任事務等」という。) の性質を有するものも多く含まれている。

委任契約や準委任契約においては,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが(民法645 条,656 条),これは,委任者にとって,委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断するためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。

このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様であり,預金口座の取引経過は,預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したものであるから,預金者にとって, その開示を受けることが,預金の増減とその原因等について正確に把握するとともに,金融機関の事務処理の適切さについて判断するために必要不可欠であるということができる。

したがって,金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。そして,預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(同法264 条,25 2条ただし書)というべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。

上告人は,共同相続人の一人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示することが預金者のプライバシーを侵害し, 金融機関の守秘義務に違反すると主張するが,開示の相手方が共同相続人にとどまる限り,そのような問題が生ずる余地はないというべきである。なお,開示請求の態様, 開示を求める対象ないし範囲等によっては,預金口座の取引経過の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があると考えられるが,被上告人の本訴請求について権利の濫用に当たるような事情はうかがわれない。

被相続人の預金の動きが不明瞭である場合や、一部の人間に流れていた場合などには、他の相続人からの請求で開示請求できることは朗報である。
被相続人と同居していた相続人間の金銭の動きを明確にすることが可能となり、無用な紛争がなくなればと感じるであるが。任意後見人の80%が同居の家族である現状を考えると、新しい火種が渦巻いているのかもしれない。

2009年1月7日水曜日

賃貸派?持ち家派?

賃貸が有利なのか?持ち家が有利なのか?

幾度となく、議論されてきた問題である。

住まいの選択には、金銭面だけではない複雑な要因があるため、一概に言えないのが結論かもしれない。

あえて、分析を試みよう。

「100年に一度の経済危機」だと言うが、裏を返せば絶好のチャンスでもある。しかし、多くの人たちは100年に一度の大波のなかにいる事も事実である。

絶好のチャンスと言える人は一握りの人であろう。

まず、不動産市場の先行きについて検証してみよう。

昨年末より、不動産市場は危機的状況にあると言える。

例えば、100区画、250区画の宅地化された分譲地が一括で売却に出ている。開発原価なんて無視したような金額である。それでも、一括売却できる見通しはうすい。また、昨年竣工した、投資用マンションが売りに出ている。フアンドへの売却が行き詰まった為である。当初売却金額の半額なんて言うのも存在する。現在、購入者側の希望利回りは10%~15%となっている。

元来、フアンドを組む為の経費、資産価値の維持経費等を考えると、不動産証券化商品の利回りが確保されるはずもないのだが!こぞって、安定利回り商品だ!不動産の流通革命だと業界のトップ達は宣っていたのだが。

新年の挨拶も、経済危機だが短期的なものであるとか、経済構造の変革が必要だとか宣っている。その、方策はあるのであろうか?無策、無能と言うほかない。
経済界がアメリカ流の投資家保護を推し進めてきた結果なのであるが。製造業の派遣も経済界の要請であった。資本家と正規労働者のセーフティネットとして派遣社員が拡大したことは事実である。

ワークシェアリングをせずに派遣社員の首切りを容認している現状をどう考えているのであろうか?

不動産の話に戻ろう、不動産市場の先行きであるが、厳しい時代が続く事は間違いない。金融機関は昨年前半から不動産関連融資をストップした。
不動産関連融資の不良債権化を恐れた金融機関は9月末、12月末の決済を今年の3月末にのばした。但し、条件付きである。3月末までに、担保不動産を売却して返済をすることが条件である。2月~3月初めにかけて企業存続をかけた不動産のディスカウントが行われるであろう。ここで、売却できなければ、その次は企業整理前提での投げ売りである。
4月~5月にかけては、不動産の投げ売り状態になるのか?予断を許さない!

今年の春以降に不動産市場は底を打つと判断される。この時期をチャンスと見るかは読者の判断に任せる。

賃貸が有利か?持ち家が有利か?の本題に進む前に、持ち家としてのマンションが有利か?戸建て住宅が有利か?の検証が必要となる。資産価値としては戸建てが有利である。

経年後の建物価値がゼロであると仮定すると、資産価値は土地の資産価値となる。マンションの場合は土地の持ち分は少なく資産価値は低くなる。また、建物の取り壊し費用は戸建て住宅よりマンションが大きくなる。マンションの場合保留床(建て替え時に建築資金を補填するために売却可能な部分)を確保できない場合は、建築コストが負担となってしまう。

余談だが、超高層マンションの取り壊し費用は膨大な金額になり再建築は不可能ではないか?なぜ故にリスクの高い超高層マンションに人気が集まるのか不思議でならない。人気のある内にとっとと売り逃げが一番だと思うのだが!

一戸建て住宅の場合は老朽化したとしても、取り壊し費用は少なく、土地値では売却可能である。

さて、本題に入るが、検証のための条件を整理しておく。
①不動産概要
購入価額  2000万円(マンション)
その他費用は考慮しない
維持費   購入価額の1.5%/年
ローン完了後の価額水準を購入価額の30%
②銀行借入
  2000万円
  35年
  3%(金利)元利均等月払い
③賃貸条件
  賃料(銀行返済総額+維持費)の120%
  35年間同一条件で賃借
  その他費用は考慮しない
④その他指標
  運用利回り①3%(銀行利回り相当)
         ②0.2%(銀行利息相当)
⑤試算数値
  a.不動産購入・維持費用総額(35年累計)
   ¥45,977,416-
  b.賃借料総額(35年累計)
   ¥55,172,899-
  c.資産価額(35年後の価額)
   ¥7,800,000-
  d.賃料相当額を定期的に投資と運用した場合の35年後の金額運用利回り①3%(銀行利回り相当)②0.2%(銀行利息相当)
  ①¥98,169,840-(¥42,996,941-)
  ②¥57,204,897-(¥2,031,998-)
  括弧内の金額は賃料相当分を差し引いた金額

検証①
不動産を購入した場合には、試算数値a.より¥45,977,416-の累計支出になるが、資産価額¥7,800,000-が確保される。実質的には¥38,177,416-の総支出となる。

検証②
不動産を賃貸した場合には、試算数値b.より¥55,172,899-の累計支出になり、¥55,172,899-の総支出となる。

検証③
検証①、②より不動産を購入した場合の方が、総支出額が¥16,995,483-少なくなっている。キャッシュフローベースで考えても¥9,195,483-の有利となっている。

検証④
資金を運用した場合には、d.①より有利な結果がでるが、実際には困難な達成数値である。d.②の現実的な数値によると有利な結果は導き出しにくい。

上記検証結果より、導き出される結論としては、賃貸住宅にすみ続けるよりも、住宅を購入した方が有利であるとの結論が導き出される。また、資金を運用した場合を考えると設定条件の下では運用利回りが0.73%以上でないと有利でないとの結論が導かれた。賃貸住宅の賃料相場上限は限界点が存在しており、住宅金融金利の上昇により住宅購入の優位性は減少するものと考えられる。また、住宅金融金利と金融商品利回りとの乖離が小さくなった場合(d.①)には、資金運用有利の結果が導き出される。
賃貸か?持ち家か?の判断には、キャッシュフロー面以外の要因が存在する。賃貸住宅のライフスタイルに即した柔軟性等の利点がある。一概には言えないのだが、持ち家を利用した資産積み立てと考えればやはり老後の備えは持ち家という結論であろう。