遺言は争族対策の解決策であると言われている。しかし、実際にはその効力はどうなのであろうか。遺言書の実行までが担保されたものではない。遺言執行者を決定し、その実効性を担保する必要がある。遺言信託が話題になっているが、遺言書の執行が完全に担保されているとは言い難い。遺言信託は遺言書を信託するものであり、遺言書の執行は別契約である。本来の財産を信託し自己意志の実現を目指す信託とは違うものである。自己意志の実現を担保するためには信託契約に基づく財産の信託をおすすめする。
最初に、遺言でできることを列記する。何ができるのかを押さえておきたいものである。
1.相続に関すること
●相続分の指定
民法で定められた法定相続分とは異なる相続を希望する場合に、遺言によってそれぞれの相続人の相続分を具体的に指示する事が出来ます。また、相続分の指定を第三者に委託する事が出来ます。
●遺産分割の方法の指定
財産を誰に相続させるか、細かい指示ができます。また、相続分の指定を第三者に委託する事が出来ます。
●相続人の廃除やその取り消し
被相続人に対して、重大な侮辱を与えたり、虐待したり、その他著しい非行があった人を相統人から廃除することは生前からできますが、遺言によって可能です。また、廃除の取り消しをすることもできます。
●財産の分割を一定期間禁止
遺言によって、相続開始から5年以内ならば遺産の分割を禁止することができます。
●特別受益分の調整
被相統人が、生前ある相続人に行った贈与や遺贈は特別受益分として、原則としてその人の相続分から差し引かれますが、遺言によってこの差し引きを免除することもできます。その場合は、他の相続人の遺留分を侵さないように注意が必要です。
●相続人相互の担保責任の変更
相続人どうしは、遺産を分割した後で、もし財産に瑕疵があって損害を受けた場合、公平に処理するために、たがいに相続分に応じて補償することが義務づけられています。遺言によって、この担保責任を軽減したり加重したりすることができます。
●祭具などの承継者の指定
先祖代々のお墓や仏壇の承継者は、生前に決めることもできますが、遺言によって指定することもできます。
●遺言執行者の指定
被相統人は、遺言の内容を実行させるために信頼のおける遺言執行者を指定できます。また、その指定を第三者に委託することもできます。
2.財産処分に関すること
●相続人以外の人への遺贈
遺言によって、財産を相続人以外の人に贈与することができます。遺言にょって行う贈与を遺贈といい、遺産のうちの一定の割合を与えるという形の包括遺贈と、与える遺産を具体的に示す特定遺贈があります。
●寄付または寄付行為
遺言によって、財産の一部を寄付したり、財団法人を設立するために財産を提供することができます。 ●信託の設定ができる
遺言によって、信託銀行や信託できる機関を指定し、そこに財産を預けて、管理・運用をしてもらうことができます。
3.身分に関すること
●未成年者の後見人などの指定
未成年に関しては、後見人や後見監督人を遺言で指定することができます。ただし、ほかに親権者がいない場合に限ります。
●非嫡出子の認知ができる
生前でもできますが、遺言でも婚姻外によって生まれた子供(胎児も含む)を認知することができます。認知された非嫡出子は、財産を相続する権利が発生します。
4.遺言できないこと
●結婚や離婚などに関すること
結婚、離婚は双方の合意がなければ成立しないものなので、遺言によりって結婚、離婚を相手に強いることはできません。また、遺産を分与したくないために、遺言によって親子の緑を被相続人から一方的に切ることも、同様に認められません(相続人の廃除にあたる場合はのぞきます)。
●養子縁組みに関すること
養子縁組に関する事は、双方の同意が必要です。遺言により縁組したり、解消する事は認められません。
●遺体解剖や臓器移植にかんする事遺言としての法的拘束力はなく、遺族が反対すれば無効となります。